経営統合とは?合併との違いやメリット・デメリットを解説

経営統合とは?合併との違いやメリット・デメリットを解説

「経営統合とは何か?」

「合併との違いやメリット・デメリットは?」

経営統合は、複数の会社が協力し合い、経営を一つにまとめて新しいグループとして動く方法です。

会社同士が独立性を保ちつつ、意思決定や方針を共同で決定する仕組みであり、合併とは異なり各社の法人格が残る点が特徴です。

経営統合のメリット
  • 独立性・自主性を維持できる
  • リスク分散ができる
  • シナジー効果を創出できる
  • 従業員の混乱を抑えられる

今回は、「経営統合と合併の違い」や「経営統合のメリット・デメリット」、さらに「成功事例」などについて詳しく解説します。

これから経営統合や組織再編を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

監修者

代表理事
小野 俊法

経歴

慶應義塾大学 経済学部 卒業

一兆円以上を運用する不動産ファンド運用会社にて1人で約400億円程度の運用を担い独立、海外にてファンドマネジメント・セキュリティプリンティング会社を設立(後に2社売却)。

その後M&Aアドバイザリー業務経験を経てバイアウトファンドであるACAに入社。

その後スピンアウトした会社含めファンドでの中小企業投資及び個人の中小企業投資延べ16年程度を経てマラトンキャピタルパートナーズ㈱を設立、中小企業の事業承継に係る投資を行っている。

投資の現場経験やM&Aアドバイザー経営者との関わりの中で、プロ経営者を輩出する仕組みの必要性を感じ、当協会設立に至る。

目次

経営統合とは?

経営統合は複数の会社が協力し合い、経営を一つにまとめて新しいグループとして運営する方法です。

会社同士が合併するのではなく、それぞれの会社が存続したまま、意思決定や方針を共同で決める仕組みです。

たとえば、マツモトキヨシとココカラファインは経営統合をして、両社のブランドやノウハウを活かしながら、新しい持株会社のもとで一緒に経営しています。

このように、会社同士が独立性を保ちながら協力することで、より大きな成果を目指せます。

つまり、経営統合は会社同士が一つになって力を合わせることで、より強くなるための方法です。

経営統合と合併の違い

経営統合と合併の違い

経営統合では、会社ごとに法人格を残したまま、持株会社の下で一緒に動きます。

一方、合併は複数の会社が一つの会社にまとまるため、消滅する会社も出てきます。

つまり、経営統合は会社が残りやすく、合併は会社が減ります。

項目経営統合合併
会社の数増える減る
法人格それぞれ残る1社以外は消える
システムの統一必要ない必要
統合方法持株会社を新設してグループ化1社が他の会社を吸収してひとつになる

たとえば、A社とB社が経営統合をすると、A社・B社はそのまま残り、上に「A・Bホールディングス」ができます。

しかし合併だと、A社とB社がひとつになり、A社だけが残ってB社は消えます。

経営統合は会社を残しながら協力でき、合併は会社がひとつになってまとまります。

自分の会社や将来を考えて、どちらが合うかじっくり選ぶことが大切です。

経営統合のメリット

経営統合のメリット

経営統合を検討する際に押さえておきたい「4つのメリット」をわかりやすくご紹介します。

経営統合のメリット
  • 独立性・自主性を維持できる
  • リスク分散ができる
  • シナジー効果を創出できる
  • 従業員の混乱を抑えられる

独立性・自主性を維持できる

経営統合をしても独立性や自主性を維持できることが大きなメリットです。

経営統合は合併と違い、各会社がそれぞれのブランドや企業文化を守りながら、グループとして協力できる仕組みだからです。

つまり、今までのやり方や強みを活かしつつ、グループ全体での経営戦略も共有できます。

例えば、ドラッグストア業界のマツモトキヨシとココカラファインが経営統合したとき、両社は自分たちのブランドや独自のサービスを続けながら、商品調達やDX戦略で協力しました。

このように、現場の判断や工夫が失われず、従業員やお客様にも大きな変化を感じさせません。

リスク分散ができる

経営統合を行うことで、企業は効果的にリスクを分散することができます。

複数の会社が独立性を保ちながら統合されるため、一つの会社で問題が起きても他の会社への影響を最小限に抑えられるからです。

経営統合では、各会社が独立した運営主体として存在し続けるため、リスク分散効果が生まれます。

合併とは異なり、一社が大きな損失を被っても、その影響が他の会社に波及することを防げるのです。

また、異なる業種や市場に属する企業同士が統合することで、市況変動の影響を互いに補填し合うことも可能になります。

シナジー効果を創出できる

経営統合によってシナジー効果を創出できることは、会社にとって大きなメリットになります。

経営統合を行うことで、異なる会社が持つ強みやノウハウを組み合わせて、今まで以上の成果を出せるからです。

たとえば、二つの会社が協力して仕入れや物流をまとめると、コストを下げることができたり、商品やサービスの質を高めたりすることができます。

また、会社同士が持つ顧客や市場を共有することで、新しいビジネスチャンスも広がります。

従業員の混乱を抑えられる

経営統合を選ぶことで従業員の混乱を最小限に抑えられます。

合併では社名や組織が大きく変わることが多く、従業員が「仕事内容が変わるのでは」「給料が下がるのでは」と不安を感じやすくなります。

しかし、経営統合なら急激な変化が起こりにくく、今まで通りの働き方を続けやすいです。

たとえば、経営統合をした会社では、グループ内で協力しながらも各社が独立して事業を進めます。

そのため、システムや人事制度を無理に統一せず、従業員のストレスや混乱を避けることができます。

経営統合のデメリット

経営統合のデメリット

経営統合による主なデメリットは、以下の通りです。

経営統合のデメリット
  • 子会社間で連携が取りづらい
  • 無駄なコストが発生しやすい
  • 統合作業や管理の負担が増える

それでは、各デメリットについて詳しく解説していきます。

子会社間で連携が取りづらい

経営統合をすると子会社間で連携が取りづらくなることが大きなデメリットです。

なぜなら、もともと別々の会社だった子会社は、会計のやり方やシステムが違うことが多く、情報共有や業務の進め方にズレが生じやすいからです。

たとえば、経営統合後に会計システムがバラバラのままだと、数字の集計や報告に手間がかかり、同じグループ内なのに業務が重複してしまいます。

さらに、部門ごとにやり方が異なることで、効率よく仕事を進められず、結果としてコストが増えてしまうこともあります。

無駄なコストが発生しやすい

経営統合をすると、無駄なコストが発生しやすくなります。

コストの種類詳細
経理部門の重複各子会社ごとに経理担当者を配置し続ける
人事部門の重複各子会社ごとに人事担当者を配置し続ける
システム利用料の重複各社で同じ会計システムを個別に契約する
同じ業務のアウトソーシング費用共通業務を各社で個別に外部委託する
会計基準やシステム統一のコスト会計システムや基準を統一するための導入費用がかかる
組織図複雑化による管理コスト組織が複雑になり、管理や意思決定に余計な時間と人件費がかかる

グループの中で同じような仕事を何度も繰り返すことが増えるため、効率が悪くなりやすいからです。

会社ごとに経理や人事などの部署が残ると、それぞれで同じ作業を行うことになり、コストがかさみます。

このように、経営統合には無駄なコストが増えるリスクがあるため、事前にしっかり対策を考えることが大切です。

統合作業や管理の負担が増える

経営統合を進めると、統合作業や管理の負担が大きくなり、現場の混乱や効率低下につながるおそれがあります。

複数の会社が一緒になることで、業務やシステム、ルールがバラバラなまま統一しなければならず、調整や連絡が増えてしまうからです。

また、管理部門の仕事も増え、今まで以上に手間や時間がかかるようになります。

統合作業内容
基本合意書の締結統合の方針や目的を明確にする
デューデリジェンス財務や法務、事業内容を細かく調べる
統合条件の交渉と確定経営体制や株式の比率などを決める
正式契約の締結統合に関する契約を結ぶ
法的手続きの実行登記や独占禁止法の審査などを進める
ステークホルダーへの対応従業員や株主などに説明し、納得してもらう
統合準備委員会の設置と実務作業財務や人事、ITシステムの統合を進める
クロージング統合の実施日を迎え、新しい体制でスタートする

このように、統合作業は多くの段階があり、それぞれに多くの手間がかかります。

特に、システムや業務の違いを合わせる作業は時間も負担も大きくなります。

経営統合の種類

経営統合には「株式移転方式」「株式交換方式」「抜け殻方式」の三つがあります。

株式移転方式
株式交換方式
抜け殻方式
種類特徴具体例
株式移転方式新しい親会社を設立し、既存会社が傘下に入るドワンゴとKADOKAWA
株式交換方式既存会社が親会社となり、他社を子会社化ZホールディングスとLINE
抜け殻方式親会社の事業や資産を子会社に移し、親会社は持株会社化セブン&アイ・ホールディングス

例えば、株式移転方式は複数の会社で新しい親会社(持株会社)を設立し、その傘下に入るやり方です。

ドワンゴとKADOKAWAの経営統合がこの例です。

株式交換方式は、既存会社が親会社となり、他社を子会社化します。

ZホールディングスとLINEの統合が有名です。

抜け殻方式は、親会社の事業や資産を子会社に移し、親会社は持株会社化する方法です。

セブン&アイ・ホールディングスの事例が参考になります。

このように、経営統合の種類を理解しておくことで、自分の会社や状況に合った方法を選びやすくなります。

経営統合の流れ

経営統合の流れは、以下通りです。

STEP
基本合意書の締結

統合の方針や目的を明確にし、今後の協議の土台を作ります。

STEP
デューデリジェンスの実施

財務や法務、事業内容を細かく調べて、リスクを確認します。

STEP
統合条件の交渉と確定

株式の交換比率や経営体制など、細かい条件を話し合い最終合意を目指します。

STEP
正式契約の締結

実際に契約書を作って、統合のやり方や役割分担を決めます。

STEP
法的手続きの実行

株式の交換や移転、独占禁止法の審査など必要な手続きを進めます。

STEP
ステークホルダーへの対応

株主や従業員、取引先など関係者に説明し、理解を得ます。

STEP
統合準備委員会の設置と実務作業

財務や人事、ITなど実際の統合作業を進めるチームを作ります。

STEP
クロージング

統合の実施日を迎え、新しい経営体制が本格的に始まります。

経営統合は、会社同士の話し合いから始まり、契約や手続き、実際の統合作業まで段階が多いです。

どこで何をすればよいか分からないと、途中で混乱しやすくなります。

ステップごとにやることを整理すると、全体像が見えやすくなり、安心して進められます。

経営統合の成功事例

実際の成功事例は、以下の通りです。

スクロールできます
事例名主な業種統合前の企業統合後の成果・特徴
出光興産+昭和シェル石油石油・エネルギー出光興産、昭和シェル石油統合により国内最大級のエネルギー企業へ。ブランド統合や販売網の効率化、コスト削減、経営基盤の強化を実現。創業家の意見調整など難航したが、最終的にシナジー効果を発揮。
オイシックス+大地を守る会食品宅配オイシックス、大地を守る会有機野菜宅配で業界1位に。両社の強みを活かし、売上拡大・コスト削減・サービス向上。後に「らでぃっしゅぼーや」も加わりリーダー企業へ成長
ミネベアミツミ+ユーシン自動車部品ミネベアミツミ、ユーシン経営統合で技術力と販路を融合。売上拡大や自動車部品事業の強化を狙い、グローバル競争力を高めた。
  • 出光興産と昭和シェル石油は、経営統合を実現し、国内最大級の石油元売会社となりました。反発もあった創業家の調整を経て、ブランドや販売網の統合による効率化、コスト削減、競争力強化を達成しています。
  • オイシックスと大地を守る会は、顧客層や販売チャネルの違いを補完し合い、食材宅配業界で圧倒的な存在感を持つ企業となりました。
  • ミネベアミツミとユーシンは、ミネベアミツミの技術力とユーシンの自動車業界ネットワークを融合し、売上拡大や新規事業展開を実現。TOBによるスピーディな経営統合が特徴的です。

各事例とも、両社の強みを活かしながら、規模のメリットや効率化、サービス向上を実現しています。

経営統合は、適切な準備と協力体制があれば大きな成果につながることが分かります。

経営統合に関するよくある質問

経営統合に関して多く寄せられる疑問や不安について、分かりやすくまとめました。

経営統合に関するよくある質問
  • 経営統合が行われた場合、株式はどのように扱われますか?
  • 経営統合後、従業員の給料はどうなりますか?
  • 経営統合と資本提携の違いは何ですか?
  • 経営統合と業務提携の違いは何ですか?

これから経営統合を控えている方や、経営統合の仕組みや影響について詳しく知りたい方は、ぜひこちらのQ&Aを参考にしてください。

経営統合が行われた場合、株式はどのように扱われますか?

経営統合が行われると会社の株式は「株式交換」や「株式移転」といった方法で新しい持株会社や親会社の株式に変わることが多いです。

項目株式移転方式株式交換方式
親会社の設立新しく持株会社を設立する既存の会社が親会社となる
対象会社複数の会社が一緒になりグループ化親会社が子会社になる会社を完全子会社化
株主の扱い元の会社の株主は新しい持株会社の株主になる子会社の株主は親会社の株主になる
対価(もらうもの)新設持株会社の株式親会社の株式(場合によっては社債や現金も可能)
主な目的グループ経営の効率化や持株会社体制の構築既存会社による完全子会社化
手続き株式移転計画書の作成・公開、株主総会の承認など株式交換契約書の締結、株主総会の承認など
効力発生日新設会社の設立日契約書で定めた日

つまり、経営統合が行われると、もともと持っていた会社の株式は新しい会社や親会社の株式に変わる仕組みです。

株主としての権利はそのまま引き継がれるので、安心して統合後も株主でいられます。

経営統合後、従業員の給料はどうなりますか?

経営統合のあと従業員の給料は変わることがありますが、増減はケースによって変わります。

従業員の給料は、会社が統合したあと、どちらかの会社の基準に合わせたり、両方の間をとったりして調整します。

そのとき、従業員の同意が必要になるので、急に給料が変わることは少ないです。

このように、経営統合のあと給料がどうなるかはケースごとに違いますが、従業員の同意なしに勝手に変えることはできません。

給料が変わる場合は、会社からきちんと説明があり、同意を得る流れになります。

経営統合と資本提携の違いは何ですか?

経営統合と資本提携は、会社どうしの関係の深さや目的が全く異なります。

経営統合は会社全体の経営を一つにまとめる方法ですが、資本提携はお互いに協力しやすくするために株を持ち合うだけの仕組みです。

項目経営統合資本提携
目的経営を一体化し意思決定を統一する協力関係を強くし事業をサポートする
会社の独立性独立性は弱まりグループ会社になる独立性を保ったまま株式を持ち合う
会社の形態持株会社の下にグループ会社として存在それぞれ独立した会社のまま
具体例マツモトキヨシとココカラファインの経営統合NTT都市開発とリノべるの資本提携
株式の扱い新設会社に株式を集約お互いに株式を一部持ち合う

経営統合の場合、会社は新しく持株会社をつくり、その下にグループとしてまとまります。

統合により意思決定が一つになり、経営の方向性も統一されます。

資本提携は、会社が独立したまま株式を一部持ち合うことで、協力関係を強くしますが、経営自体は別々のままです。

経営統合と業務提携の違いは何ですか?

経営統合は、複数の会社が一つの新しい会社を作ったり、合併したりして、経営資源をすべてまとめる方法です。

これに対して業務提携は、会社がそれぞれ独立したまま、特定の仕事だけで協力する形です。

較項目経営統合業務提携
会社の独立性なくなる維持される
資源のまとめ方すべて統合一部だけ協力
主な目的会社の規模拡大特定業務の効率アップ

たとえば、経営統合の場合はA社とB社が合体して新しい会社C社を作り、すべての経営や資源をまとめて運営します。

業務提携の場合は、A社とB社がそれぞれのまま、商品開発だけ一緒に行ったり、販売ルートを共有したりします。

つまり、経営統合は会社そのものが一つになり、業務提携は会社が別々のまま一部だけ協力するという違いがあります。

まとめ

経営統合を選ぶことで、リスク分散やシナジー効果の創出、従業員の混乱抑制などのメリットがあります。

一方で、子会社間の連携や無駄なコスト、統合作業の負担といったデメリットも存在します。

経営統合を検討する際は、各方式の特徴やメリット・デメリット、統合の流れをしっかり理解し、自社の状況や目的に最適な方法を選ぶことが大切です。

事前に十分な準備と情報収集を行い、関係者との連携やコミュニケーションも意識しましょう。

後継者問題・事業承継は日本プロ経営者協会にご相談ください

経営統合を検討する企業の多くは、後継者問題や事業承継の課題を抱えています。

日本では経営者の高齢化や後継者不足が深刻化し、多くの中小企業が事業の継続性について悩んでいるのが現状です。

一般社団法人日本プロ経営者協会(JPCA)は、後継者問題や事業承継に悩む企業オーナー様をサポートするために設立されました。

JPCAは、プロ経営者の輩出とマッチングを通じて、企業の成長と持続的な発展を支援しています。

JPCAでは、経営人材の紹介やサーチファンド機能、経営コーチング、専門家ネットワークによる総合的な支援体制を整えており、後継者選定から資本の承継、経営改善までワンストップでご相談いただけます。

事業承継や後継者問題でお悩みの方は、ぜひ一度日本プロ経営者協会までご相談ください。

目次