日本プロ経営者協会(JPCA)は、日本に数多くのプロ経営者を輩出するエコシステムを構築し、わが国を牽引するリーダーの輩出と事業承継問題の解決を目指し設立されました。
まだ日本にはプロ経営者が浸透しておらず、プロ経営者の働き方、プロ経営者になるためにどういったステップを進めばよいのか、求職ポジションにどれだけ出会えるのかという具体的な情報提供をしています。
また、具体的なプロ経営者案件として、事業承継の社長から直接オーダーいただいたものやファンドの投資先の社長としてプロ経営者のポジションをご紹介させていただいております。
当イベントでは、7社を経験し、プロ経営者としての経験もある正木様にお越しいただき、そのご経験を失敗も成功も全てお話いただきました。
自己紹介

ただいまご紹介にあずかりました正木 佳基と申します。プロ経営者のリアル~成功も失敗も酸いも甘いも全てお話ししますということで、本日は私の経験を話していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。本日なんですけれども、まず最初に自己紹介の方をさせていただきまして、そのあとに私ベンチャー企業とファンド傘下の企業、両方の経営の経験ありますので、そこの違いなんかも簡単に触れさせていただきたいなと思っています。
私、いろんな会社経営を、7社勤務経験がありますので、その辺のキャリアの振り返りなんかもしつつ、最後に、上から目線で恐縮なんですけども、「プロ経営者になるにはこんな感じだといいのかな」みたいなのを簡単に述べさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

まず初めに自己紹介を簡単にさせていただきたいと思います。簡単にといっても、先程申し上げたように、今まで7社経験していますので、ちょっと長いですけれども、京都大学の経済学部を卒業して、新卒で野村アセットマネジメントに入社をいたしました。金融機関運用会社ですね。野村ホールディングスのグループ会社で、ここでは日本株のアナリストを計3年、自動車部品セクターを見ておりました。
その後、J.P.Morgan証券の方に移りまして、引き続き日本株アナリストで自動車部品セクターの方を担当しておりました。資産運用サイドと証券、バイサイドと呼ばれる、セルサイドって呼ばれているんですけども。計5年日本株のアナリストをやっておりました。
その後、また2回目の転職でA.Tカーニー株式会社、コンサルティング会社の方に転職しまして、こちらでは過去5年の経験を生かしまして、自動車部品会社のコンサルティングに従事しておりました。
ここでちょうど30歳を迎えたこともありまして、私はスポーツ大好きだったということもあってがらっとキャリアをチェンジして、データースタジアム株式会社というところに、3度目の転職をいたします。ここは野球、サッカー、ラグビーですかね、主に球技のデータを取って、それをチームだったり、ファンの皆さんに提供している会社なんですけれども、ここで新規事業開始、経営企画を3年弱ぐらいやらせていただいておりました。
ここから先が今日これからお話するところの本題になってくるんですけども、株式会社CMerTV、で初めてベンチャーの経営取締役CFOという形で6年弱ぐらい。ここは友人知人といわゆる起業、創業をした会社でして、動画広告の配信プラットフォームをやっておりました。
ここに「何でもやります」と書いていますけど、本当に手弁当から始めたところなので、管理本部長なんて肩書がついていますが、何でもやっておりました。この会社は退任をした時にちょうど40歳、節目のところで退任しました。
株式会社DELTAは再度スポーツビジネスに再チャレンジという形で3年。ここは海外事業、資金調達、新規事業開発となっておりますが、ここもちっちゃい会社でしたので、まあ何でもやっていました。
最後、直近2年2020年8月から今年の6月末まで、株式会社かがやくコスメで、いわゆるファンド傘下でプロ経営者として入って、代表取締役社長も拝命しました。
ベンチャー企業とファンド傘下企業の経営の違い

続きまして、直近と二つ前まで、ベンチャーとファンド傘下の企業の経営の違いというところで、私がどうやっていわゆる「プロ経営者」になっていったかというところと、ベンチャー、ファンド傘下の企業の違い等々を含めて簡単に触れていきたいなと思っております。
ベンチャー企業(株式会社CMerTV)

まずベンチャーの方、私が株式会社CMerTVを友人と立ち上げてから、退任に至るまでの時系列を簡単にまとめたものがこちらになります。
会社の登記自体は、2010年10月になされていて、私が参画し出したのが11年4月、ちょうど東日本大震災の直後で、社員として入社したのがその年の7月からです。当時って非常に資金調達とかマーケットが厳しかったと思うんですけれども、翌2012年の2月にはVC3社から1.7億円を調達して、その直後に取締役CFOに就任しました。
しかし、やっぱりベンチャーあるある、かつ動画広告の配信プラットフォーマーということもありましたので、すぐ資金が枯渇するような状況です。
最初の3、4年はただひたすら毎日資金調達のために動くというような生活をしていましたが、2014年の12月に2度目の大きなファイナンス、2.3億円をVC4社から調達するんですけども、その間にこの赤字で正木の乱!と書かせていただいていますね。ちょうど1回目と2回目の資金調達の間くらいで、何が起こったかっていうと、ベンチャーだとありがちだと思うんですけども、経営陣で色々もめ事という程ではないんですが、資金調達の仕方だったり、それがうまくいってなかったり、みたいなものがあって、辞める、辞めないの騒ぎが起きて…
結果私はそこからさらに3年半ぐらい残ってやることになるんですけども、そういったことも経験しつつ働いていました。
IPO上場を目指していましたが、この年表にあります通り、2016年9月にIPOを一旦諦めて、一部上場企業にベンチャーキャピタルの全持分である60%弱を売却しました。その半年後に私も取締役CFOを退任し、それが2017年、ちょうど40になる年でした。

会社は誰のものか
この6年弱、感じたこと得たことを大きく3つ書かせていただいています。
6年弱、簡単に年表にしても色んなことがございましたが、よく言われる「ステークホルダー、会社は誰のものか」、株主との関係性、社長との関係性、社員との関係性、お客様取引先との関係性などいろいろあると思うんですけれども、特にベンチャー企業として一つ大きな特徴は、社長が大株主であることが多くて、創業社長・創業株主になることが多いわけです。
特にプライベートエクイティファンド傘下の企業と比較すると、ここは大きい部分なのかな。
このCMerTV社の例でいきますと、半分強の株式がベンチャーキャピタルさん6社に握られていたので、必ずしも社長、大株主とはCMerTV社の場合は言えないんですが、ここで株主とうまく関係性を築くこと、社長との関係性を築くことは重要な部分であり、かつ自分が苦心したところです。
取締役CFOとしてどう動くべきか
そこがこの2つ目のところに繋がっていくんですけども。そんな中で自分が取締役CFOとしてどう動いていくことが会社のため、社員のため、株主のため、最終的な自分のためになるのかというのは、必然的に考えるようになりました。どれを優先して考えていくのか、その時々で優先順位が変わってくると思っているんですけれども、基本的に当時の私であれば、ここに書かせていただいている順番です。
会社のため、社員のため、株主のため、最後に自分のためという順番で考えて日々行動していったつもりです。その結果、IPOを目指していたんですけれども、それぞれのステークホルダーに利害が相関したり、色々ある中で「ベストは難しいとしても、ベターな選択肢は何かな」と考えた時に、IPOではなくて、M&Aするのが良いんじゃないか、ということでM&Aをするという選択をとりました。
代表取締役をやらなかった理由とは
最後3つ目は、「こんなのここで書いていいのか」という話はあるんですけども、何でも話すという触れ込みでやっていますので…
IPOを目指すにあたって、一部の株主さんから「代取(代表取締役)をやらないか」みたいな話があったタイミングもあったんですけども、そこは私自身としてはやらなかった。これなぜかということですが、一番上とも絡んでくるんですけども、結局「じゃあこの会社って誰のもの?」と考えた時に、ステークホルダー云々は置いておいて、やっぱり結局創業社長がこういうサービスやりたい、こういう事業をやりたいと思って立ち上げた会社ですし、思い入れも当然一番あるだろうと考えました。
そういった中で、立ち上げて間もないところで代取が変わるようなことになると、当然いろんな変化も起きますし、今まで築いてきたものが0からになってしまう部分もあって、時間的もかかるのと、「どうせベンチャー企業で代取やるんだったら、自分が考えたサービスだったり、事業でやりたいな」みたいなものもあったので、「今までのところで代表をサポートして、IPOを目指すなり、M&Aする方が良いだろう」という自分の中の判断・決断で代表取締役にはなりませんでした。
その結果IPOはできませんでしたけども、M&Aという形で一応イグジットはできたので、自分の判断っていうのは間違っていなかったのかなと思っております。
ファンド参画企業(株式会社かがやくコスメ)

続きまして、ファンド参画企業ということでかがやくコスメ時代はどうだったか。ここはトータルで2年弱とそんなに長くはなかったんですけれども、先程のベンチャー企業での私のCFOの経験を買ってくださって、2020年当時の株主であったファンドさんからの紹介で、8月にCOO兼経営戦略室長として入社をしております。
この時、実はこの時点では社長になるならないみたいな話はなかったので、どちらかというとずっとNo.2として社長を支えて、ゆくゆくはイグジットに向けて頑張ってもらう、ということで最初は入社しております。
入社後、すぐM&Aの案件を一つやって、COOとして組織の再編をして新しい中継も立てて、翌年の春3月に取締役CEOになります。ここまでは既定路線でした。
ただ、その3カ月後にいろいろありまして、代表取締役社長を拝命することになり、ここからたった半年ちょっとで代表取締役を退任し、今年の6月には全ての役職から退くという、かなり激動の2年弱を過ごさせていただいたのが、この直近2年です。

次期社長の育成か、自分でやるのか?
当然事業承継案件ではなかったんですけれども、当時の社長さんが実は60代後半とご高齢であったというのが一つ、ある意味事業承継モデルとは言えないですけども近い部分でした。当時、株主さんから言われていたのは次期社長候補の育成、一応内部から昇格というのをその時は考えておりました。
株主さんも社長さんも考えていらっしゃったので、それはNo.2として私の大事なミッションの一つでありました。
ただ、当時から、「次期社長の育成」と「誰にするか」っていうのを考えるのもそうですけど、もう一方で自分でやる可能性もあるのかな、というのは頭の片隅に入れながら、会社の経営だったり、次代の社長の育成をしていたというのが1つ目のところです。
会社はだれのものか?
2つ目は、先程のベンチャーとも通ずるんですが、会社は誰のものかっていうところで、株主との関係性、経営陣との関係性、社員との関係性ですね。
ベンチャーと大きく違うのは、株主がいて、社長、経営陣、社員がいて、あくまでも社長でも株主から経営を委任されている立場でありますので、例えば私が会社のためと思ったことだったり、やったこと、もしくはやろうとしていることであっても、株主さんの意にそぐわないことだと、そもそもできなかったり、結果が伴わないと厳しい判断、決断を迫られたりするというところは一つ大きな違いだったのかなと思っております。
これまでのキャリアの振り返り

7社を経験した後の気づき
次は直近10年弱、ベンチャー2社とファンド傘下企業1社でいわゆる経営の仕事をしてきておりましたので、そこを踏まえてこれまでのキャリアを振り返りつつ、今まで大成功だったり、失敗だったりといったもの、いろんな経験をさせていただいた中で気付いたこと、もしくはこれから先の自分のキャリアだったり、皆さんに何か共有できるようなことを書かせていただいているのが、次の2、3枚のスライドになります。
本当に転職に悩んだのは最初1回だけ
ここではCMerTVのところで詳しく説明しましたけども、今まで7社、転職を6回経験しております。それを経験した上での気づきですね。
転職をされたことがある方だったら賛同いただけるかなと思うんですけども、本当に転職するかしないかを悩んだのが基本的には最初の1回、私の場合、野村アセットからJ.P.Morganだけで、2回目以降は何となく自分の気がおもむくままに転職をしていたのが正直なところです。
20代はインプット期、30代はインプット・アウトプット期、40代はアウトプット期
2つ目のところ、これはどっちかというと自分で意識してそういうキャリアを築き上げていったというよりは、たまたまだと思いますが、20代はアナリストだったり、コンサルっていう場所で過ごしたんですけども、ここは大きく言うとインプット期だったのかなと。
30代のスポーツビジネス、あとはCMerTV共同創業企業ですね。前半まではインプット期、後半は取締役CFOとしてインプットしつつもアウトプットしていかなきゃいけないような時期だったのかなと。
40代は、私は45歳なので40代は半分終わったところなんですけれども、ここはスポーツビジネスと、また企業経営というところで、ここから先はアウトプット期です。50代以降も恐らくアウトプット期という形になっていくのかな。
自分の興味や関心、面白いと思ったことに正直に動いた結果でしかない
ここはそんなに意識していた訳ではないですね。本当は意識しなきゃいけないところなのかもしれないですけども。ちょっと繰り返しになりますけれども、自分のキャリアに関して、5年先10年先を見据えて逆算していって今やらなきゃいけないことはこれだとか、今やらなきゃいけないことはこれだからこういった業界、業種、もしくはこういった仕事に就きたいみたいな志向は基本的には全くなく、何となく自分の興味や関心に正直に忠実に従った結果、今があるという状況です。
自分のビジネスパーソンとしての礎を築いたのは1社目
ただこの20年ちょっとぐらいの社会人人生を思い返すと、自分のビジネスパーソンとしての礎を築いてくれたのはやっぱり1社目の会社、私の場合でいうと野村アセットマネジメントだったと思います。もしかしたら私に限らず、皆さんも似たようなところはあるのかもしれません。何となく意図しないところで点が線となってうまく結び付いたキャリアなのかな、というのが、私の20年ちょっとの社会人人生を経た気づきです。

これまでの経験(成功・失敗)から学んだこと
ここまでの20数年、特にこの直近の8~10年ぐらい色んな経験をさせていただいた、「成功と失敗から学んだこと」が5個あります。学び過ぎじゃねえかというご意見もあるかもしれませんが…
「会社は誰のもの?」「ステークホルダーとは?」
「会社は誰のもの?」「ステークホルダーとは?」っていう教科書的には株主、経営陣、社員、取引先とか色々あると思うんですけれども、よく議論されるのはその中で何が大事、大事じゃない、何を優先すべき、優先すべきじゃないということですね。
先程のベンチャーCMerTV社の例とあとはかがやくコスメ社、ファンド傘下の企業を例にとって少しご説明させていただきましたけども、当たり前のことなんですけども、自分の置かれている状況によって何を重要にしなきゃいけないのか、優先順位は変わってくるんだろうなと思います。
その時々で、時には株主だったり、社員だったり、お客さんだったり、の方を向いて仕事をやっていかなきゃいけない。当たり前のことだと思うんですけども、実際経営に携わって改めて感じました。
株主とのコミュニケーション(対話)の重要性
2つ目に株主さんとのコミュニケーションの対話の重要性というところで、きれい事だけでは限界もあるとのところで、これは特にかがやくコスメ社での経験という訳ではないんですけれども、やっぱり当然社長として自分がやりたいことを推し進めたいことと、株主さんが株主としてやりたいこと進めたいことって常に一致する訳ではないと思いますので、特にそこに乖離が出てきた時にどうやって解決していくかと。当然その会社の為にと思っていてもきれい事だけじゃ限界もあると書いておりますけども、株主さんの為にやらなきゃいけないようなことも当然あるでしょうし、場合によっては株主さんだけを見て、何かしら忘れなきゃいけないようなことも出てきたりして、そういった時にどれだけ自分を納得させてじゃないですけどもっていうのを考えていくと、やっぱりコミュニケーションを取って当然自分の言いたいこと、自分の主張もしつつ、株主さんとコミュニケーションを取りながら、その着地点を見出していくじゃないですけども、やっていくっていうのは大事なことだと思いますし、もしかしたら1年ぐらい前の私にはちょっと欠けていた部分かもしれないなと、今となっては思っております。
自分の信頼できる人を右腕・左腕に置く重要性
この3番目が実は結構大事というか。特に最近の気付きと言うか、これも当然かがやくコスメ社での経験からっていうところになるんですけども。自分の信頼できる人間を右腕なり、左腕として置くことの重要性と。ベンチャー企業ですと先程申し上げたように、特に共同創業みたいな立場だと0から1から作り上げていくので、会社を作り上げていくので、そこから人の採用なりっていうのをしていけばいいと。勿論何もないとこから人の採用していくのはそれはそれで凄い大変ではあるんですけれども、それをやっていけばいいと。
一方かがやくコスメ社ですと、もうある程度人もいて事業も何10年と続いていて、そんな中で私が入っていって色んなことを変えていかなきゃいけない。かつその変えていくことに関して色んな軋轢もある中で、もう推し進めていかなきゃいけないし、付いてきてもらわなければ困ると。そういう状況の中で当時1年前、2年前の自分っていうのはどちらかというと、次の社長候補を育成、探さなきゃいけないっていうミッションもあった手前、なるべく中の人材の中からいい人をうまく見つけて、育成して、次期社長なり、次期経営候補なり、次期管理職候補なりっていうのを探していくような形を取ろうと思ってやってたんですけども。
まあ当然うまく行くこともあればうまくいかないこともあるという中で、その中で当時の自分は結構中の人、社内にいる人で完結させようという思いが強かったんですけども。今思えば別にそこをこう外から持って行って、自分がよく知っている人だったり、信頼できる人を外から連れてきて、自分の右腕、左腕としてもっていく形を取っても良かったんじゃないのかなと。結局ここにも書かせていただいていますけども、そういった人が一人でも二人でも三人でもいれば、当然自分のやりたいことを推し進めてくれるだけではなくて、自分の味方、精神的な部分でも非常に助けになってくれたのかなというような思いもありまして。
今思えば非常に学んだことだし、後悔という表現が適切かどうか分りませんが、こういう進め方もあったなというふうに思いますし、こういう進め方でやった方が良かったかなと思っていることです。
業種・業界、役職・役割、国・地域
4つ目、5つ目はちょっと何でしょう。一般抽象的、一般化の話になってしまうんですけども、なかなか新しい仕事なりをやっていく中で、業種・業界、役職・役割、国・地域と無理やり3つに軸切っていますけども。という軸があった時に、この3つのうち2つ以上が初めてだとまあやっぱりなかなか厳しいかなというような感じで。
それでいくと、実は直近のかがやくコスメっていうところでいくと、業種・業界と役職・役割が初めて。国・地域はずっと日本にいたところで変わんなかったんですけども初めてだったんで、まあ話を受けるとからそこそこ厳しい戦いになるかなとか思ってもいたんですけども。結果的にはそういう形になってしまったのかなと言うところで。今一度頭では分かっていたんですけどもなかなか難しいところがありました。
頼られる/頼られない、向いてる/向いていない
一番最後の頼られる/頼られない、向いてる/向いていない、できる/できない、やりたい(好き)/やりたくない(嫌い)っていうところなんですけれども、仕事だったり、好き嫌いだったりでやれるやれないってのもありますけども、どうしても自分がしんどくなってくると、そういう判断軸で決めてしまいがちにはなると思うんです。
当然嫌いなことでも向いていたり、よくできたりとか、好きなことでも全然うまくいかないとかできないってことは山ほどあると思います。
この辺はやっぱり人から、会社から、もしくは社会から頼られる・頼られないとかやっぱりその向いている・向いていないって、できる・できないと同義かもしれないんですけども。やっぱりそういった軸で考えていくと何ていうんでしょう。そのやっている仕事だったり、事業だったりに対してまあ成功するうまくいく角度っていうのが上がっていくのではないでしょうか。
今までの経験を踏まえてこの5つあたりが学んだことだったり、今後、まだまだ私も仕事を続けていくと思いますので、次のキャリアに生かしていきたいなというところでございます。
プロ経営者になるには?

最後にちょっとおこがましいんですけど、プロ経営者になるには。
プロ経営者は「株主から会社を委任される人」だと思いますので、どういった人が委任されやすい、もしくは声がかかりやすいのか。
殆ど一般論と言いますか当たり前じゃんという話になってしまうかもしれないんですけども。
当然CXOかCEOか代取かで変わってきますが、CXOだったらCOOよりはチャンスは広い。
今までの経歴、学歴、職歴で十分チャンスはあるのかなと。
もうちょっと言うと、分かりやすい経歴、有名大学だったり、海外の大学院、ビジネススクール出ているとか、金融機関とかコンサルティング会社、いわゆるプロフェッショナルファームって言えばいいですかね、そういうところでの就業経験があると、比較的CXOとかだとチャンスは大きいですね。
一方で、やっぱり代表取締役社長になってくると、それにプラスアルファである程度過去にCXOとしての経験、できれば成功体験があった方がいいのかな、欲しいかなと。どっちかというと分かりやすい実績があると良いですね。
当然起業経験もそうでしょうし、CXOとしてだったら会社、事業の成長へ寄与したような経験、あとはわかりやすい話では、ベンチャー等でIPOをしたり、M&Aをした経験っていうのがあるとトップの経営者としてお声がかかる確度、確率っていうのは上がってきます。
かなり駆け足にはなってしまいましたけれども、以上で私からの「プロ経営者のリアル~成功(光)も失敗(影)も、酸いも甘いも、全てお話しします!~」にかえさせていただきたいと思います。ご静聴ありがとうございました。
Q&A

ありがとうございました。
Q&Aが来ているんですけど、スライドの中で僕も気になったことがいっぱいあったので、主催者権限で質問していいですかね?
Q.株主とのコミュニケーション、対話の重要性、きれい事は限界があること。話せる範囲で具体例というか、どういうところで何にお困りになられたんですか?
正木氏:まあ、今すぐ出てくるのは、やっぱり人の採用とかですかね。



採用ですか。
正木氏:いっぱいあると思うんですけども、採用では株主さんが「こういう人が欲しい」「ああいう人が欲しい」「ここにいい人います」「あそこにいい人います」と。
もちろん我々も人の採用はしたいのでお会いするんですが、会社とのフィットとかとも含めてちょっとどうかなというのもあったりなかったりした時に、でも株主さんとしてはこの人で。
逆に言ったら、「じゃあ他にいい人いるんですか」みたいな話になるんですね。じゃあこの人ちょっと厳しいなということを言うためにわざわざ誰か別の人をあてるのかっていうとなかなかそういうわけにもいかないので、結果としては取らないなのか、取るのかっていうようなところで例えばそういう選択を迫られることは、私の場合は結構ありましたね。



社長と株主で評価が分かれる採用対象の方がいたんですね。
正木氏:そうですね。しかも、そこそこいました。



結構重要なポジションでいたんですか。
正木氏:そうですね。



現場で経営してる人からすると、自分が嫌だなと思う人を近場に置くのって結構ストレスですよね。
そこのファンドと社長とで採用した人のズレが生じるのってどうしてなんでしょうね。単純な好みの問題なのか、物の考え方なのか、小野さんも含めてどういう時にそれが起こると思いますか?
正木氏: 私の時は物の考え方、好みとかの違いの方が大きかったかなと思いますけども、当時コミュニケーションの不足、こういう人が欲しいよね、必要だよねの「こういう人」っていうのを深掘りしきれなかった部分はあったのかなと思います。
その結果、双方が考えることにズレが出てきたのかなっていう。



それは現場にいる社長と、ちょっと遠めから見ているファンドでは現場の見え方の違いから欲しい像がずれるんですか?
それとも、経営戦略上欲しいと思う「この人が最適だ」っていう判断の力って言うか、物の考え方とか知識の問題にズレが生じるんですかね?
正木氏:両方ですが、現場の見え方の違い、中からと外からの見え方の違いの方が大きいと思います。
ただ、後者のそもそものズレっていうのもなくはないです。



採用もそういうことだったと。
小野さんの立場からするとこういう時ってどういう風に持って行けばうまくいきそうですか?



僕の場合は意見があるとしても、社長が優秀であることを前提に、基本的には現場を知っている社長が決めた方がいいと思っています。
僕らがよくやるのは、プロ経営者を決める時に何人か違う方向性の強みがある人を用意して、現場を知っている人に決めてもらうということです。
多少優劣はあるんですけども、僕らが決めちゃうと「現場を知らない株主が決めやがって」みたいになるので、「どちらかというとこの人はここに強くて、この人は…」みたいに、この人はマーケに強い、この人は管理に強いとかっていうのを複数提示して、決めてもらうと。
例えば、うちの会社には株主が揃えたいろんなタイプの経営者の3人のうち、「この人がいいな」っていうのをオーナーさんに決めてもらうというパターンが多いんですね。
現場の社員とか、会社のことを知っている社長に決めてもらうっていうのが基本ですよね。よっぽどじゃない限りは。



そこのファンド側の考え方の違いなのか、任せられるための関係性づくりとかコミュケーションが不足していたかもしれないということですかね。
正木氏:ちなみに、お前がダメだろうって言われちゃいそうなんですけども、一回バツつけた人をいいんじゃない、どうしてもこれいいと思うからもう一回会えないかって株主の方々にも面談してもらって、やっぱりバツだったみたいな話が。
堀江:一回バツだった。最終バツになったのは正木さんがオッケーで株主がバツつけて?
正木氏:いや、僕がバツつけて。
堀江:正木さんがバツつけて。
正木氏:どっからどう情報が回ってどうなったのかは分かんないですけども。株主さんが「でもこの人はいいと思うんで、ちょっと何とか我々もう一回会いたいです」みたいな話でもう一回面談の期間を設けてやっぱり株主と会ってやっぱりちょっとってなったっていう。そうなってくるとそもそも私は何なんだろうっていうのと、応募者の方にも本当に申し訳なかったと。



若干のチグハグみたいなのが生まれてきちゃったっていうのもあったり。ありがとうございます。こういう話の方が多分教科書に絶対載らないと思うんで、一番価値あると思うんです。今の話が3番目の「近場に信用できる人を置く」っていうところに繋がるのかもしれませんね。
正木氏:何となくこの時は中でやりきらなきゃいけないみたいなところが私の頭の中にあって。結局やっぱり外から私が信用している人を取ってくると、結局「正木の息がかかった奴だろう」みたいな感じに見られちゃって、最初からそういう状況からスタートして盛り返していくっていうのは来ていただいた人にもハードル上がるし、申し訳ないなというのがあって、自分が経営者としてやってくにあたってそんなことは言ってられないなっていう部分と、人のリソースには限りがあるんで、乗り越えていくためには、やっぱり外のリソースもうまく活用しなきゃいけなかったなっていうのがこの3番目の反省ですね。



ファンドからすると社長が信用できる知り合いを採用されることに、ネガティブな印象ってあるんですか?



あんまりないですけど、スモールキャップになると予算が結構限られてくるんですよね。
大体予算1200万円とか1500万円が一人の経営者にかかって、そこにさらにもう一人だと、2200万円とかになってくるんで。



それだけの価値が出せるのかってことですよね。



そうですね。
当然人がいた方がやりやすいってのは分かるんですが、意味合い、案も用意した上で提案して欲しいなって感じですね。
もし、今までの計画になかった人を入れるのであれば、「この人が入ることでこうなり、プラスの方が大きいです」っていうROIをちゃんと説明できるようにして欲しいですね。
利益が5億と出てれば別に1000万も1500万も2000万3000万もそんなには変わらないんですけど。



利益が5000万円、1億円だったら2、30%吹き飛ぶって話ですからね。



そうですね。



正木さんの言われた、かがやくコスメはそれなりに規模が大きいと思うのでちょっと違うかもしれませんが、スモールキャップでは特に顕著だということなんですね。
ではここからは、皆さんから既にいただいている質問もありますので、質問タイムに入りたいと思います。
Q.プロ経営者が就任した初日には何をしますか?



プロ経営者が就任したDAY1にまず何をしていくのかのイメージをつけていきたいです、と。
例えば既存の従業員、課長以上全員からヒアリングをして課題を見つけるとか、自分がCFOとして入るならば、CFOとして入って資金調達がミッションになるならば、金融機関をリスト化して優先順位を付けてアポ取っていくとかいろいろあると思うんですけど、DAY1からまずやることってどんなことが大事でしょうか?というご質問です。
正木氏:これは多分答えは明確で、ご質問者の方もおっしゃっていたように、ヒアリングですね。社員にヒアリングをしていくのが、やはり一番最初にやるべきことかなと思っています。実際、私もかがやくコスメ社に入社した当時はNo.2っていうポジションでの入社ではありましたが、入社して最初の2週間ぐらいかけて全部署の管理職級、課長・部長・役員あとはそれぞれの部署のキーパーソン、管理職以外でと面談をしてまずは会社の状況を把握するというのを一番最初にやりました。



当時従業員数は何名くらいいたんですか?
正木氏:90名ぐらいだったと思います。東京のほかに大阪にも支社があり、当時コロナ禍大全盛の2020年だったので、そこはZoomとかうまく使いながらやりました。



全体が90名ぐらいで、うち何名ぐらいとお話されたんですか?
正木氏:15名から20名くらいは話したと思いますね。



15名から20名くらいのキーパーソンということですね。ありがとうございます。
この辺のDAY1の動きは小野さんも同意ですか?



はい、そうですね。
やはり中小企業の場合は現場の方に会って話を聞いてもらったり、できれば名前も覚えるぐらいの気合でやってもらいたいですね。



そこはCFOとして入った正木さん、基本的には一緒ですか?
正木氏:そうですね。いわゆるCXOという形でのポジションで入社されるのであれば、ここは同じかなと思います。
Q.会社のためになって、株主のためにならないこととは?



会社のためになって、株主のためにならないというのは、例えばどういうものでしょうか、という質問が来ています。
正木氏:さっきの話で、人の採用の話もですけど、もう一個追加すると、よくあるのが新規事業を始めたいという話になった時に、これは特にファンドさんはそうかもしれませんが、どうしても目先の利益確保と将来大きくなるかどうか。
利益相反になると思うので、ここをどううまく説明して認めてもらって、やらせてもらうのかということは常に考えてますね。



軸がどうしても違ってきますもんね。
正木氏:そうなんですよ。



正木さんは経営者としてもう少し中長期でやりたいことが色々あったんですね。
正木氏:そうですね。



株主さんはもうイグジットの時期もあるので、それを想定してそこにPLに色を付けたいということですね。幹部の方々はどういう時間軸というか、正木さんのようなお考えなのか、どういう方が多かったですか?
正木氏:基本的には、中期、長期が多かったですね。



なるほど。うまい落としどころというか、調整は必要ですね。ファンドでIPOイグジットする時はバイアウトファンドってIPOしたら、そのタイミングですぐ売っちゃう場合が多いんですかね?



やっぱり売れるのであれば早めに売りたいですね。
あとは完全にインサイダーなので、会社が今どういう状況にあって、まだまだ伸びそうだと思ったらちょっと持ってようってなるでしょうし、来期からヤバいなと思ったら、できるだけ早く売るでしょうしね。



ファンドの立場からしたらそうですよね。難しいところですね。ファンドの経営の状況にもよるでしょうし。
時間軸の違いが一番わかりやすいと思います。時間軸が違えば採用も経営も全部変わってきちゃいますよね。そこをファンドと経営者がちゃんと握れるか、というのはとても重要な要素ですね。
Q.内部昇格組の経営者と、外部のプロ経営者はどちらが事業を伸ばせる?



次はですね。中から上がるサラリーマン経営者、内部昇格組の経営者と外から入ってくるプロ経営者はどちらが一般的に事業を伸ばせると思いますかという質問が来ています。
元々中にいた人の方が会社に対する理解はある、外の人は外のことが分かっているから改善しやすい、という点もあるかもしれませんが、お考えいかがでしょうか?
これも正木さんと小野さん両方からお聞きしたいですね。
どう思いますか?
正木氏:いただいた質問に真正面から答えると「ケースバイケースです」ということになってしまいます。
結局私のようなプロ経営者という仕事があるので、一般的にとは言いづらいですけども、どうしても中にいる人は中のことがよく分かっているけど、その中で嗜好だったり、いろんなものの見方とかも凝り固まっちゃっている部分は当然あると思うので、外の人はいろんな側面から見ることができると思います。外から入る経営者の方が伸ばせる可能性はあるのかなと。
ただ、外から入った人でも1年2年経てば中の人になってしまうので、意外と入社1か月以内に直感で感じたことが、結構あとあと引いてくるというのが経験則ですね。



その直感、当たっていることが多いですか?
正木氏:はい。



採用でもそうですよね。嫌だなって思っていると何か起きますもんね。
小野さんはどうですか?



これはまさに数字がありまして、私が持っている数字の中では、外部から入れた場合の方がEBITDA(企業価値評価の指標)の改善率が大きかったです。
何千社ではなくて、せいぜい十社くらいですかね。
一応持っている数字上は、外部から入れた時の方が良かったんですけど、良いパターンではインセンティブが大きい人と、「これをきっかけにプロ経営者としてのし上がるぞ!」みたいな野望がある人は結構良くなりがちだなと思いました。
ところが、下から上がってくると、ずっとそこの経営幹部だったりするので、いきなり株主が変わったからといってNo.2だったり、財務系の役員がCFOがCEOになるパターンっていうのは、会社のことをある程度分かってやっているので、ちょっとした改善くらいにしかならないことが多いように思います。
数字上はそうなっていたんですが、僕が思うのは、M&A仲介の業界は今めちゃめちゃ伸びているので、多分業界出身の人が業界と同じように伸びて行きましょう、くらいでも成功できると思うんです。
さらにダントツに伸びたいと思えば、もしかしたらハイリスクハイリターンかもしれないけど、ある程度違うことを知っている人を入れた時の方が伸びやすいんじゃないかなと思っています。
自分も実は不動産のファンドからPEファンドに来たという大きいキャリアがあって、不動産業界でやっていた手法をPEファンドに取り入れたら、他のPEファンドさんよりも高いリターンが出るようになった、ということがありました。
多分、これはずっとPEファンドにいたら一生気付かずに過ごしていたことだと思います。ハイリスク、ハイリターン、ハマる場合は外から入れた人がわっと伸ばせちゃう可能性はあるかな、と思いますね。
ハマらない場合は下がると。



同じ会社で同じ人でデータ取れないというのが非常に難しいですよね。以前、小野さんと一緒に見たデータだと、外部のプロ経営者と親族内承継がいいって言っていたデータを見たことがありますけど、外部から出たプロ経営者がどのレベルの人なのかというのは、どういうインセンティブ設計で働いているかってだいぶ差が出るので結構難しいところですよね。
ありがとうございます。
Q.経験を積んだ今、次にやるとしたら何をしたい?



正木さんに質問したいんですが、色々ご経験してベンチャー企業の役員で何でも全部選べるとしたら次にやるとしたらどういうことをやりたいですか?
起業というのもあるんですけども。いいアイデアがあれば起業だし、めちゃめちゃいいメガベンチャーのCFOとやってみたいとか、今やるとしたら何が良いですか?
正木氏:それでいくと、今小野さんがまさにおっしゃったとおりで、もし何かやりたい事業なりサービスがあったら自分で起業します。
ただ、残念ながら今この瞬間やってみたいなと思うような事業、サービスはないので、今自分でビジネスを立ち上げるっていうことは考えてないですね。必ずしも直近の代取が、自分の中でもうまくいった感じはあまりないので、もしもう一回そういう代表のポジションのチャンスがあるのであればチャレンジしてみたいなというのが一つ。
一方、ベンチャーのCFOとして、もしやり残したことが1個あるとすると、やっぱりIPO上場なので、どちらかというとメガベンチャーとか上場企業でグローバルなCFOをやるというよりは、やっぱりIPOを一回は経験したいなというのも正直あります。
現実的なところと、自分の目標を照らし合わせると、その2つのどっちかが現実的な部分なのかなとは思っています。



ありがとうございます。正木さん、今日は本当にどうもありがとうございました。
正木氏:こちらこそどうもありがとうございました。