自己株式取得とは?メリット・デメリットや手続き・会計処理を解説

自己株式取得とは?メリット・デメリットや手続き・会計処理を解説

自己株式取得とは?

手続きや会計処理はどうすればいい?

自己株式取得とは、企業が過去に発行した自社の株式を株主から買い戻す行為のことで、「金庫株」とも呼ばれています。

株主への利益還元や株価対策、敵対的買収の防衛、事業承継における相続税の負担軽減など、さまざまな目的で活用されている経営戦略です。

2001年の商法改正で原則自由化されて以降、上場企業だけでなく中小企業でも積極的に取り入れる動きが加速しています。

ただし、会社法上の財源規制や手続き上の制限があるほか、みなし配当による税負担の発生など注意すべき点も少なくありません。

今回は、自己株式取得の基本的な仕組みから5つの目的、メリット・デメリット、具体的な手続きの流れ、さらには取得・消却・処分それぞれの仕訳方法まで解説していきます。

自己株式取得の活用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

監修者

日本プロ経営者協会 会長
小野 俊法

経歴

慶應義塾大学 経済学部 卒業

一兆円以上を運用する不動産ファンド運用会社にて1人で約400億円程度の運用を担い独立、海外にてファンドマネジメント・セキュリティプリンティング会社を設立(後に2社売却)。

その後M&Aアドバイザリー業務経験を経てバイアウトファンドであるACAに入社。

その後スピンアウトした会社含めファンドでの中小企業投資及び個人の中小企業投資延べ16年程度を経てマラトンキャピタルパートナーズ㈱を設立、中小企業の事業承継に係る投資を行っている。

投資の現場経験やM&Aアドバイザー経営者との関わりの中で、プロ経営者を輩出する仕組みの必要性を感じ、当協会設立に至る。

目次

自己株式取得とは「企業が自社の株式を買い戻すこと」

自己株式取得とは、企業が過去に発行して市場や株主のもとに流通している自社株式を、自らの資金で買い戻す行為のことを指します。

取得された株式は「自己株式」と呼ばれ、「金庫株」という別名でも知られています。

企業が自己株式を取得する理由は、株主への利益還元や買収対策などさまざまです。

上場企業であれば市場取引で購入でき、非上場企業であれば特定の株主から直接買い取るのが一般的な方法となっています。

自己株式には議決権が認められていないため、企業が保有しても株主総会での投票には影響しません。

また、配当請求権もないため、自己株式を保有すること自体には配当のコストが発生しないという特徴もあります。

なお、自己株式の保有期間に法律上の制限はなく、取得した株式をそのまま保有し続けることも、消却や処分を行うことも可能です。

自己株式取得の消却とは「自社株を帳簿上から消すこと」

自己株式の消却とは、一度買い戻した自己株式を帳簿上から完全に消滅させる手続きのことです。

消却を行うと、発行済株式の総数が減少し、その株式が再び市場に出回ることはありません。

消却が行われる主な理由は、発行済株式数の適正化と株価の向上効果にあります。

発行済株式数が減れば、1株あたりの利益(EPS)や自己資本利益率(ROE)が改善されるため、投資家からの評価が高まりやすくなるのです。

たとえば、発行済株式数が100万株の企業が10万株を消却すると、発行済株式数は90万株に減少します。

純利益が変わらなくても、1株あたりの利益は自動的に向上する仕組みになっています。

自己株式取得は旧商法改正まで禁止されていた

かつて日本では、企業が自社の株式を買い戻す行為は原則として禁止されていました。

その理由は、株価の不正操作やインサイダー取引に悪用されるリスクが懸念されていたためです。

しかし、経済界からの強い要望を受けて、2001年(平成13年)の商法改正によって「金庫株」が解禁されました。

この改正により、配当可能利益の範囲内であれば自己株式の取得が認められるようになったのです。

さらに2006年に会社法が施行されたことで、自己株式の取得は原則として自由化されています。

現在では、分配可能額の範囲内かつ法定の手続きを踏めば、上場・非上場を問わず取得が可能です。

参考:第2節 金融の再構築(25) – 内閣府

自己株式取得するのはなぜ?5つの目的

自己株式取得するのはなぜ?5つの目的

自己株式取得を行う企業には、明確な目的があります。

以下では、代表的な5つの目的について順番に解説します。

既存株主の持株比率を維持するため

自己株式取得の目的の一つは、既存株主の持株比率を維持・向上させることにあります。

市場に流通する株式数が減ることで、残りの株主が持つ1株あたりの価値が相対的に高まるためです。

たとえば、発行済株式数が1,000株の会社で100株を自己株式として取得した場合を考えてみましょう。

株主Aが200株を保有していると、取得前の持株比率は20%でしたが、流通株式が900株に減ったことで約22.2%に上昇します。

少数株主の整理にも自己株式取得は有効で、多くの株主に株式が分散している場合は管理コストが増加しがちです。

自己株式取得によって株主数を絞り込めば、意思決定のスピードアップにもつながります。

M&Aの対価に活用するため

自己株式は、M&A(合併・買収)の対価として活用することも可能です。

新株を発行してM&Aの対価とする方法もありますが、発行済株式数が増えると既存株主の株式価値が希薄化してしまうデメリットがあります。

その点、あらかじめ取得しておいた自己株式を対価に充てれば、新株発行の手間やコストを削減できます。

既存株主の利益を損なうこともないため、経営者と株主の双方にとってメリットが大きい手法です。

たとえば、株式交換によって他社を子会社化する際に、自己株式を交付すれば新株を発行する必要がなくなります。

現金を用意しなくてもM&Aを進められるという資金面の柔軟性も魅力です。

自社株の価値を向上させるため

自己株式を取得すると、市場に流通する株式数が減少するため、1株あたりの利益(EPS)が向上します。

EPSの上昇は投資家にとって魅力的なシグナルとなり、結果として株価の上昇が期待できるのです。

同時に、自己資本利益率(ROE)も改善される傾向があります。

自己株式は貸借対照表上で純資産のマイナス項目として計上されるため、自己資本が減少し、ROEの分母が小さくなることで数値が向上するのです。

実際に、2023年以降は東京証券取引所が上場企業に対して「資本コストや株価を意識した経営」を求めたことで、自社株買いを行う企業が急増しています。

株主還元の一環として自己株式取得を実施する企業は年々増加傾向にあり、投資家からの注目度も高まっています。

企業価値の向上を目指す経営戦略として、自己株式取得は非常に効果的な手段です。

事業承継の相続税を軽減させるため

事業承継の場面では、後継者にかかる相続税の負担が大きな課題となります。

自己株式取得は、この相続税の負担を軽減するための有効な手段の一つです。

具体的には、被相続人(先代経営者)が保有していた株式を会社が買い取ることで、後継者は相続税の納税資金を確保できます。

会社が自己株式として買い取った分の株式には議決権がないため、後継者は少ない株数でも経営権を安定して握ることが可能です。

たとえば、先代経営者が100%の株式を保有していた場合、会社がその一部を買い取れば、後継者は残りの株式だけで過半数の議決権を確保できます。

後継者の金銭的な負担を大幅に軽減しながら、スムーズな事業承継が実現できるのです。

なお、相続で取得した非上場株式を発行会社に売却する場合、一定の要件を満たせば「みなし配当」が譲渡所得として扱われる特例も設けられています。

参考:No.1477 相続により取得した非上場株式をその発行会社に譲渡した場合の課税の特例|国税庁

自己株式取得を活用した事業承継対策も、日本プロ経営者協会
ワンストップでサポートいたします。
「相続税や手続きが不安…」という方も、まずはお気軽にご相談ください。

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敵対的買収への防衛策として活用するため

自己株式取得は、敵対的買収からの防衛策としても活用されています。

市場に流通する株式数を減らすことで、買収を仕掛ける企業が十分な株式を集めにくくなるためです。

自己株式を取得すると、既存の主要株主の持株比率が相対的に上昇します。

この結果、買収者が過半数の議決権を獲得するためにはより多くの株式が必要となり、買収のハードルが高まるのです。

たとえば、ある企業の発行済株式数が1,000株で、経営陣が300株を保有しているとしましょう。

会社が200株を自己株式として取得すれば、流通株式は500株に減少し、経営陣の実質的な持株比率は60%に跳ね上がります。

ただし、敵対的な企業がすでに相当数の株式を保有しているケースでは、自己株式取得だけでは防衛効果が限定的になる場合もあります。

自己株式取得のメリット

自己株式取得には、企業にとって多くのメリットがあります。

メリット内容
株主還元の強化EPS・ROEが向上し、株主への利益還元が充実する
株価の安定・上昇市場の流通株式数が減り、株価を下支えする効果がある
買収防衛流通株式の減少により、敵対的買収のハードルが上がる
M&A対価としての活用新株発行なしでM&Aを進められ、希薄化を防げる
事業承継の円滑化後継者の金銭的負担を軽減し、経営権の移行がスムーズになる
配当金の節約自己株式には配当を支払う必要がないため、配当負担が減る
ストックオプションへの活用自己株式を従業員へのインセンティブとして付与できる

特に注目すべき点は、自己株式取得が「株主と企業の双方にメリットをもたらす」ことです。

株主にとっては株式価値の向上、企業にとっては経営の安定化と柔軟な資本政策の実現が期待できます。

また、自己株式を保有していれば、将来の事業再編やストックオプション付与など、多様な場面で機動的に活用できます。

ただし、メリットだけに注目するのではなく、次に解説するデメリットも十分に理解しておくことが大切です。

自己株式取得のデメリット

自己株式取得にはメリットが多い反面、無視できないデメリットも存在します。

実施を検討する際は、以下のリスクを把握しておく必要があります。

デメリット内容
資金繰りの悪化株式の買い戻しに現金を使うため、手元資金が減少する
自己資本比率の低下純資産の減少により、財務の安全性が低下して見える
処分の手間とコスト自己株式を処分する際に取締役会決議などの手続きが必要になる
みなし配当の発生取得価額によっては株主に重い税負担が生じる場合がある
株価下落のリスク資金繰り悪化が懸念されると、逆に株価が下落する可能性もある

最も注意したいのが、自己株式取得が企業の現金を直接的に減少させることです。

十分な余裕資金がない状態で自己株式取得を実施すると、設備投資や運転資金に影響が出てしまいかねません。

また、自己株式は貸借対照表上で純資産のマイナス項目として表示されるため、自己資本比率が低下します。

投資家や金融機関から財務状況の悪化と見なされるリスクがある点にも注意してください。

さらに、自己株式を消却せずに保有し続ける場合は、将来的に市場で売却される可能性も残ります。

その場合、売却によって再び発行済株式数が増加し、EPSの低下(希薄化)を招くことになるため、取得後の方針も事前に検討しておくことが重要です。

非上場会社が自己株式取得を行うメリット


非上場会社にとっての最大のメリットは、株主構成の安定化と事業承継対策にあります。

非上場企業の株式は取引市場がないため、株式が複数の関係者に分散しやすく、それが経営上のリスクとなることがあるのです。

たとえば、創業者の相続によって株式が複数の親族に分散し、経営の意思決定が困難になるケースは珍しくありません。

こうした状況で自己株式取得を行い、少数株主の株式を買い取ることで株主構成を整理できます。

また、非上場企業の事業承継では、後継者が株式を取得するための資金不足が大きな壁になりがちです。

会社が先代の株式を買い取ることで後継者の負担を減らし、円滑な事業承継を進めることが可能になります。

自己株式取得の手続き方法

自己株式取得の手続き方法

自己株式を取得するためには、会社法に基づいた所定の手続きを踏む必要があります。

主な取得方法は以下の4つです。

スクロールできます
取得方法内容特徴
市場取引上場企業が証券取引所を通じて株式を買い付ける方法手続きが最も簡易でスピーディーに実施可能
公開買付(TOB)買付け条件を事前に公開したうえで株式を取得する方法大量取得に適しており、計画的な買付が可能
全株主からの取得(相対取引)すべての株主に平等に売却機会を与えて取得する方法株主総会の普通決議が必要、公平性が高い
特定の株主からの取得特定の株主のみから株式を取得する方法株主総会の特別決議(3分の2以上の賛成)が必要

特定の株主から取得する場合は、他の株主に対して「売主追加請求権」を保障する必要がある点に注意が必要です。

これは、ほかの株主が「自分も売りたい」と請求できる権利で、株主間の公平性を確保するために設けられています。

手続きの大まかな流れは次のとおりです。

  1. 株主総会で自己株式取得の承認を得る(取得する株式の種類・数・対価の総額・取得期間を決議)
  2. 取締役会で具体的な取得条件を決定する
  3. 株主に対して通知または公告を行う
  4. 株主から株式の譲渡申し込みを受け付ける
  5. 株式の取得と対価の支払いを実行する

なお、取締役会設置会社で市場取引またはTOBにより取得する場合は、定款の定めによって取締役会決議のみで実施することも可能です。

自己株式取得における注意点

自己株式取得における注意点

自己株式取得は有効な経営戦略ですが、注意すべきリスクもいくつか存在します。

ここでは、特に押さえておきたい2つの注意点を解説します。

資金繰りが悪化するリスクがある

自己株式の取得は、企業の現金を直接的に使用する行為です。

そのため、手元資金に余裕がない状態で実施すると、日常の事業運営や将来の投資に支障をきたす可能性があります。

特に、大規模な自己株式取得を行う場合は、運転資金や設備投資に充てるべき資金まで圧迫してしまうリスクがあります。

資金繰りの悪化が市場に知れ渡れば、自己株式取得によって得られるはずの株価上昇効果が打ち消されてしまうことも考えられます。

自己株式取得を検討する際は、事前にキャッシュフローを綿密にシミュレーションし、余剰資金の範囲内で行うことが鉄則です。

分配可能額の範囲を超えない計画を立てたうえで、財務バランスを維持しながら進めることを心がけてください。

税負担が重くなるケースがある

自己株式取得では、取得価額によって「みなし配当」が発生し、株主側に想定以上の税負担が生じることがあります。

みなし配当とは、会社法上は配当ではないものの、税務上は配当と同様に扱われる金額のことです。

自己株式の取得対価のうち「資本金等の額」に対応する部分を超える金額が、みなし配当として課税されます。

個人株主がみなし配当を受け取った場合、原則として「総合課税」の対象となります。

総合課税は所得が増えるほど税率が上がる累進課税方式のため、場合によっては非常に重い税負担を強いられるケースもあるのです。

一方、法人株主がみなし配当を受け取った場合は、一定の要件を満たせば「受取配当等の益金不算入制度」の適用を受けられます。

この点は法人株主にとって税務上のメリットとなりますが、すべてのケースで適用されるわけではないため、事前の確認が必要です。

自己株式取得における税務処理は複雑なため、実施前に必ず税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

参考:No.1330 配当金を受け取ったとき(配当所得)|国税庁

自己株式取得にかかる制限

自己株式の取得は原則として自由化されていますが、無制限に行えるわけではありません。

会社法では、債権者や株主の利益を守るためにいくつかの制限が設けられています。

最も重要な制限が「財源規制」です。

企業が自己株式を取得する際に支払う対価は、取得日時点の「分配可能額」の範囲内でなければなりません。

分配可能額とは、大まかにいえば「その他資本剰余金」と「その他利益剰余金」の合計額をベースに算出される金額です。

資本金や準備金は債権者保護の観点から分配が認められないため、自己株式の取得に充てることはできません。

制限の種類内容
財源規制分配可能額を超える自己株式取得は不可(会社法461条)
手続規制株主総会決議や取締役会決議など所定の手続きが必要
売主追加請求権特定株主からの取得時には他の株主にも売却機会を保障する必要がある
インサイダー取引規制上場企業は金融商品取引法に基づく開示義務などを遵守する必要がある

財源規制に違反して自己株式を取得した場合でも、取引の安全を守る観点から取得行為自体は原則として有効とされます。

ただし、対価を受け取った株主は会社への返還義務を負い、関与した取締役等も会社に対して連帯して金銭を支払う厳しい責任(損害賠償責任)を問われることになります。

分配可能額が不足している場合は、減資手続きを通じて資本金等を「その他資本剰余金」に振り替えることで枠を広げることも可能です。

減資には債権者保護手続きが必要となるため、慎重に進める必要があります。

自己株式の仕訳【会計処理】

自己株式に関する会計処理は、「取得」「消却」「処分」の3つの場面で異なります。

それぞれの仕訳方法を具体的な例とあわせて確認していきましょう。

自己株式を「取得」した時

自己株式を取得した場合は、純資産の部の「自己株式」勘定で処理します。

貸借対照表上では、株主資本のマイナス項目として表示されるのが特徴です。

【仕訳例】自己株式500万円を現金で取得した場合

借方金額貸方金額
自己株式5,000,000円現金預金5,000,000円

取得時に証券会社へ支払った手数料がある場合は、「支払手数料」として営業外費用に計上します。

なお、無償で自己株式を取得した場合は仕訳の必要はなく、自己株式の数量のみを増加させれば問題ありません。

自己株式の取得や消却は、会社法上の「減資(資本金の減少)」には該当しません。

会計上、自己株式の取得は純資産の控除として扱い、消却時は「その他資本剰余金」を減少させます。

一方、税務上は取得時点で「資本金等の額」および「利益積立金額」を減少させる処理が行われるため、会計と税務で認識のタイミング等に差異が生じる点に注意が必要です。

自己株式を「消却」した時

自己株式を消却した場合は、「その他資本剰余金」から帳簿価額を減額する形で処理します。

【仕訳例】帳簿価額250万円の自己株式を消却した場合

借方金額貸方金額
その他資本剰余金2,500,000円自己株式2,500,000円

消却の結果、「その他資本剰余金」の残高がマイナスになった場合は、会計期間末にその他資本剰余金をゼロとし、マイナス分を「その他利益剰余金」から補填して処理します。

なお、税務処理では取得時点ですでに全額が減資扱いとなっているため、消却時に追加の税務処理は発生しません。

会計処理と税務処理の間に差異が生じるため、確定申告時には別表での申告調整が必要です。

自己株式を「処分」した時

自己株式を第三者に売却(処分)した場合は、帳簿価額と売却価額の差額を「自己株式処分差益」または「自己株式処分差損」として処理します。

【仕訳例①】帳簿価額200万円の自己株式を300万円で処分した場合(差益が出るケース)

借方金額貸方金額
現金預金3,000,000円自己株式2,000,000円
その他資本剰余金(自己株式処分差益)1,000,000円

【仕訳例②】帳簿価額200万円の自己株式を150万円で処分した場合(差損が出るケース)

借方金額貸方金額
現金預金1,500,000円自己株式2,000,000円
その他資本剰余金
(自己株式処分差損)
500,000円

自己株式処分差益・差損はいずれも株主資本等変動計算書に計上され、損益計算書には影響しません。

処分差損により「その他資本剰余金」がマイナスになった場合は、消却時と同様に「その他利益剰余金」から補填する処理を行います。

自己株式取得に関するよくある質問

自己株式取得について、読者から多く寄せられる質問にお答えします。

自己株式取得によって発生するみなし配当とは何ですか?

みなし配当とは、会社法上は配当に分類されないものの、税務上は剰余金の配当と同じ扱いを受ける金額のことです。

自己株式を有償で取得する際、株主への支払額のうち「資本金等の額」に対応する部分を超える金額が、みなし配当に該当します。

わかりやすくいえば、会社から受け取ったお金のうち、もともと出資した分を超えた金額が「利益の払い戻し」として配当扱いになるという仕組みです。

個人株主の場合、みなし配当は原則として総合課税の対象となり、所得に応じた累進税率が適用されます。

一方、法人株主の場合は「受取配当等の益金不算入制度」により課税負担が軽くなるケースもあります。

自己株式取得すると株価下がるのですか?

一般的に、自己株式取得(自社株買い)は株価にプラスの影響を与えるとされています。

市場の流通株式数が減少するため、1株あたりの利益(EPS)や1株あたりの純資産が向上し、株式の価値が高まりやすいからです。

しかし、自己株式取得が必ず株価上昇につながるわけではありません。

企業の資金繰りに深刻な影響を与えると市場が判断した場合や、借入金で自己株式取得を行ったことで財務の健全性が疑問視された場合は、かえって株価が下落するリスクもあります。

また、取得した自己株式を消却せずに保有しているだけでは、将来の売却リスクが残ります。

自己株式取得した銘柄が注目されるのはなぜですか?

自己株式取得を発表した銘柄が投資家から注目されるのは、主に3つの理由があります。

まず、自社株買いは「経営陣が自社の株価を割安と考えている」というシグナルとして受け取られるためです。

会社の内部をよく知る経営陣が自社株を買い戻すということは、現在の株価水準に上昇余地があると判断していると解釈できます。

次に、自社株買いの発表は「株主還元の姿勢が強い」という好印象を市場に与えます。

特に近年は東京証券取引所が資本効率の改善を上場企業に求めていることもあり、積極的な自社株買いは企業統治(ガバナンス)の評価向上にもつながっています。

さらに、EPSやROEなどの財務指標が改善されることで、機関投資家のスクリーニング基準を満たしやすくなり、新たな買い需要が生まれることも注目される理由の一つです。

自己株式取得に株主総会は不要ですか?

自己株式取得には、原則として株主総会の決議が必要です。

ただし、取得方法や会社の機関設計によって、求められる決議の種類や手続きが異なります。

すべての株主から取得する場合は、株主総会の「普通決議」(出席議決権の過半数の賛成)で足ります。

一方、特定の株主からのみ取得する場合は、「特別決議」(出席議決権の3分の2以上の賛成)が必要です。

ただし、取締役会設置会社が市場取引または公開買付(TOB)によって自己株式を取得する場合は、定款に定めがあれば取締役会の決議のみで実施できます。

自己株式取得・事業承継は日本プロ経営者協会にご相談ください

自己株式の取得は、事業承継における相続税の負担軽減や、M&A(経営統合)をスムーズに進めるために有効な手段です。

しかし、会社法に基づく複雑な手続きや税務上の専門知識が求められます。

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所在地東京都千代田区丸の内1-6-2
新丸の内センタービルディング21階
URLhttps://www.proceo.jp/

まとめ

自己株式取得を検討する際は、メリット・デメリットの両面を十分に理解したうえで、財源規制や手続きのルールを正しく把握し、自社の経営状況に合った活用方法を見極めることが大切です。

今回紹介した5つの目的や手続きの流れ、会計処理の仕訳方法を参考に、税理士や弁護士などの専門家と連携しながら、実行計画を立ててください。

自己株式取得は、正しい知識と適切な手続きのもとで実施すれば、企業価値の向上に大きく貢献する経営戦略です。

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