廃業とは?近年の動向、メリット・デメリット、避ける方法を解説

「廃業とは何か?」

「廃業を避ける方法はあるのか?」

廃業とは、事業を自らの意思でやめることを指します。業績悪化だけでなく、経営者の高齢化や後継者不足など様々な理由で選択されます。

近年の日本では、2023年の休廃業・解散件数が59,105件に達し、前年比10.6%増と過去最多を記録しています。

廃業の主な理由は、業績悪化・売上減少、経営者の高齢化や健康問題、後継者不在の3つが挙げられます。

廃業を避ける方法
  • 親族内承継
  • 従業員・役員承継
  • M&A(第三者承継)

今回は、「廃業を選択する理由」や「廃業を避ける方法」について詳しく解説していきます。

事業承継や廃業を検討している経営者の方は、ぜひ参考にしてください。

監修者

代表理事
小野 俊法

経歴

慶應義塾大学 経済学部 卒業

一兆円以上を運用する不動産ファンド運用会社にて1人で約400億円程度の運用を担い独立、海外にてファンドマネジメント・セキュリティプリンティング会社を設立(後に2社売却)。

その後M&Aアドバイザリー業務経験を経てバイアウトファンドであるACAに入社。

その後スピンアウトした会社含めファンドでの中小企業投資及び個人の中小企業投資延べ16年程度を経てマラトンキャピタルパートナーズ㈱を設立、中小企業の事業承継に係る投資を行っている。

投資の現場経験やM&Aアドバイザー経営者との関わりの中で、プロ経営者を輩出する仕組みの必要性を感じ、当協会設立に至る。

目次

廃業とは?

廃業とは、事業を自らの意思でやめることをいいます。

経営状態が悪くなったためだけでなく、後継者不足や経営者の高齢化など、さまざまな理由で事業を終了する場合があります。

たとえば、長年続けてきた飲食店が、健康上の理由や後継者の不在で閉めることも廃業にあたります。

廃業は、一時的にやめる休業や倒産とは異なり、将来的に事業を再開しない点が特徴です。

自らの意思で事業を終えるため、計画的に手続きを進めることが大切です。

このように、廃業は経営者が意図的に事業を終える選択であり、次のステップに進むための方法でもあります。

近年の廃業に関する動向

近年、日本の廃業件数は増加傾向にあり、特に2025年問題が大きな影響を与えています。

経営者の高齢化や後継者不足により、黒字経営であっても廃業を選択する企業が増えているのが現状です。

2025年上半期の倒産件数は5003件で前年より2.4%増加し、3年連続の増加となりました。

また、2023年の休廃業・解散件数は59,105件に達し、前年比10.6%増と過去最多を記録しています。

業種別では建設業が7,628件と最も多く、卸売業、小売業が続いています。

老舗旅館や町工場など、技術力のある企業でも後継者不足により廃業を選択する事例が増えています。

廃業の増加は避けられない状況にあり、早めの対策や事業承継の準備が重要です。

参考:倒産集計 2025年 6月報|株式会社 帝国データバンク[TDB]

廃業を選択する理由

廃業を選択する理由

企業が廃業を選択する理由は、以下の通りです。

廃業を選択する理由
  • 業績悪化・売上減少
  • 経営者の高齢化や健康問題
  • 後継者不在

それでは上記の廃業理由について詳しく解説していきます。

業績悪化・売上減少

廃業を考える経営者の約3割が売上減少を理由に挙げており、販売不振による倒産は全体の約7割を占めています。

売上が何期にもわたって減少し続けると、回復させることが困難になり、資金不足から新たな融資を検討せざるを得なくなります。

業績悪化・売上減少による廃業事例

コロナ禍で急激な売上減少に見舞われた地方の飲食店経営者が、資金繰りの限界と融資返済の見込みが立たないことを理由に廃業を決断したケースがあります。
また、町工場では内製化や転注により売上を失い、行動を起こさなければ廃業に至るという現実に直面しています。

新規顧客の減少、既存顧客のリピート率低下、商品・サービスの質の低下などが重なると、経営状況はさらに悪化していきます。

取引先や従業員に迷惑をかける前に、余力のある段階で廃業を選択する経営者も少なくありません。

経営者の高齢化や健康問題

経営者の高齢化や健康問題は、現在の日本で最も深刻な廃業理由となっています。

実際に廃業を決断した理由として、約半数の48.3%が「経営者の高齢化、健康(体力・気力)の問題」を挙げており、これは経営悪化よりもはるかに大きな要因です。

経営者が突然健康を害したり、引退年齢が迫ったりすると、後継者を探す時間的余裕がなくなります。

また、1978年に53歳だった経営者の平均年齢は、2010年には59歳まで上昇しており、日本全体の高齢化とともに経営者の高齢化も加速しています。

驚くことに、廃業企業の41.1%が資産超過、44.1%が経常黒字という良好な経営状態でした。つまり、経営が順調でも高齢化や健康問題により廃業を余儀なくされているのです。

後継者不在

後継者不在による廃業は、少子高齢化の進行により、親族内での後継者候補が減少していることが根本的な原因となっています。

事業の将来性に対する不安から、子どもに継がせたくないと考える経営者も多く存在します。

後継者不在による廃業事例

羽衣文具株式会社(愛知県)は、創業80年を超えるチョーク製造メーカーで、国内シェア約3割を誇る有名企業でした。滑らかな書き心地や折れにくさで知られていましたが、代表の体調不良がきっかけで後継者を探したものの、親族の子供は女性ばかりで、会社の財務も赤字が続いていたことから、2015年3月に事業承継を諦めて廃業しました。

後継者不在による廃業は、経営者個人の問題だけでなく、従業員の雇用や取引先への影響も大きな社会問題となっています。

早期の事業承継準備やM&Aなどの選択肢を検討することで、廃業を回避できる可能性があります。

廃業方法の種類

廃業方法は主に5つの種類があり、会社の財務状況や債務の状況によって選択が決まってきます。

債務を完済できるかどうか、債権者の協力が得られるかどうかなどの要因により、最適な方法が変わります。

廃業方法の種類

廃業方法開始条件執行者債務整理方法適している場面
自主廃業・通常清算債務を完済できる状態会社が選任した清算人通常の弁済による黒字経営で資産が負債を上回る場合
破産明確な支払不能・債務超過裁判所選任の破産管財人法律規定による債権者の協力が得られない場合
特別清算債務超過の疑いがある会社選任の清算人債権者との協定・和解債権者の協力が得られる場合
私的整理債務弁済が困難な状態当事者間での協議任意の協議による信用毀損を避けたい場合
経営者保証債務の整理経営者保証債務がある調停・支援機関ガイドラインに基づく経営者の個人破産を避けたい場合

黒字経営で資産に余裕がある場合は自主廃業を選択し、債務超過の状況では破産手続きを選択することになります。特別清算は債権者の協力が得られる場合に利用可能です。

廃業方法の選択は、会社の財務状況と債権者との関係によって決まります。

適切な方法を選択することで、経営者や株主の負担を最小限に抑えることができます。

専門家に相談しながら、自社の状況に最も適した廃業方法を選択することが重要です。

廃業するメリット・デメリット

以下では、廃業するメリット・デメリットを整理しました。

経営者として重要な決断を下す前に、一つずつ確認していきましょう。

メリット

廃業するメリットは、以下です。

メリット詳細
精神的負担の軽減赤字経営のストレスや事業主の責任から解放される
関係者への配慮取引先や従業員への迷惑を最小限に抑えられる
手続きの簡素化破産手続きが不要で、通常清算により事業終了が可能
短期間での撤退事業承継に比べて短期間で事業から撤退できる
資産の保全一定の資産を残せる可能性がある

廃業の最大のメリットは、経営に関するすべての負担から解放される点にあります。

会社経営を続ける限り、雇用問題やキャッシュフロー、税金対策などさまざまな悩みが生じますが、廃業すればこれらの責任から完全に撤退できます。

また、取引先への影響を最小限に抑えられることも重要なポイントです。

廃業では債務を返済した状態で事業を終了できるため、従業員の退職金や取引先への買掛金を支払ってから会社をたたむことができます。

デメリット

廃業するデメリットは、以下です。

デメリット詳細
従業員の失業雇用の継続ができず、再就職支援が必要になる
取引先への影響売上減少や調達先の喪失など経営に打撃を与える
事業資産の消失技術、ノウハウ、ブランド価値が完全に失われる
廃業費用の発生登記費用、清算手続き、官報公告費などがかかる
許認可の喪失再開時には新たに許認可を取り直す必要がある
資産売却の損失急いで処分するため適正価格での売却が困難

廃業を選択すると、単に事業が終了するだけでなく、関係者全体に問題が発生します。

最も重要なのは、従業員の雇用が完全に失われることです。長年共に働いてきた従業員は家族同然の関係であることが多く、生活基盤を奪ってしまいます。

さらに、取引先も新たな取引相手を探す必要が生じ、経営にダメージを受ける可能性があります。

廃業により培ってきた技術やノウハウ、ブランド価値などの無形資産もすべて消失してしまいます。

廃業を避ける方法

廃業を避ける方法

廃業を避ける方法として、以下の3つの手法があります。

廃業を避ける方法
  • 親族内承継
  • 従業員・役員承継
  • M&A(第三者承継)

それぞれの方法について詳しく解説していきます。

親族内承継

親族内承継とは、経営者が自身の子どもや孫、兄弟、甥、姪などの親族に会社の経営権を引き継ぐことです。

親族内承継が効果的な理由は以下のとおりです。

項目内容効果
経営理念や企業文化を維持しやすい子どもや兄弟などの親族は、長年にわたって会社の価値観を理解している急激な変化を避けられる
十分な準備期間を確保できる親族への承継では、後継者育成に時間をかけられる安定した引き継ぎが可能になる
関係者からの信頼を得やすい取引先や従業員にとって、親族による承継は安心感を与える事業継続への協力を得やすくなる
親族内承継の成功事例

株式会社西松屋チェーンでは、先代社長の息子が約1年半の育成期間を経て社長に就任し、28期連続増収を達成しました。

このように、親族内承継は、適切な準備と計画があれば、廃業を回避する確実な方法といえます。

従業員・役員承継

従業員・役員承継とは、経営者が自身の社内の従業員や役員に会社の経営権を引き継ぐことです。

従業員・役員承継が効果的な理由は、以下の通りです。

項目内容効果
会社の内情に精通している従業員や役員は長年にわたって会社の業務を理解している円滑な事業承継が可能になる
後継者候補の選択肢が広がる親族内に適任者がいない場合でも、社内から選べる廃業リスクを大幅に減らせる
経営継続への信頼を得やすい取引先や従業員にとって、社内の人材による承継は安心感を与える事業継続への協力を得やすくなる
従業員・役員承継の成功事例

株式会社ユニックスでは、親族内に後継者候補がいなかったため、従業員アンケートを実施して後継者を選定しました。全従業員が現社長の町田泰久氏の名前をあげ、3年間の育成期間を経て代表取締役社長となった町田氏による新体制下では、全従業員が一丸となって会社を新たなフェーズへと推し進めています。

従業員・役員承継は、親族承継が難しい場合でも、会社を守りたいと願う経営者にとって有力な選択肢です。

早めに後継者候補を探し、育成計画を立てることが、廃業を防ぐための第一歩となります。

M&A(第三者承継)

M&A(第三者承継)とは、親族や従業員以外の外部の第三者に会社の経営権を引き継ぐことです。

M&Aによる第三者承継がおすすめの理由は、以下のとおりです。

項目内容効果
後継者不足の解決親族や社内に適任者がいない場合でも、広く外部から候補者を探せる廃業を回避できる
事業の継続性確保従業員の雇用や取引先との関係がそのまま維持される安定した事業運営が可能になる
経営資源の活用買収企業の経営ノウハウや資金力を活用できる事業のさらなる成長が期待できる
創業者の利益確保株式売却により、まとまった資金を得られるハッピーリタイアが実現する
M&A(第三者承継)の成功事例

・売却企業: ZOZO
・買収企業: ヤフー
・取得価額: 約4,007億円
・手法: 株式譲渡

2019年、ZOZOはヤフーによる買収を受けました。ZOZOは大手ファッションサイトZOZOTOWNを運営し、圧倒的なシェアを持つ企業でした。ヤフーのPayPayモールへの出品により集客力向上を図る戦略的な買収となり、ZOZO株主にとって大きなリターンをもたらしました。

このように、M&A(第三者承継)は、後継者問題で悩む経営者にとって廃業を回避する有効な手段といえます。

廃業に関するよくある質問

廃業に関するよくある質問とその解決方法についてご紹介します。

廃業に関するよくある質問
  • 廃業と破産はどう違うのですか?
  • 会社が廃業した場合、従業員はどうなるのでしょうか?
  • 「休廃業」とはどういう意味ですか?

廃業と破産はどう違うのですか?

廃業は経営者が自主的に事業をやめることを指し、破産は債務超過や支払不能により裁判所を通じて資産を整理し事業を終了することを意味します。

廃業では全ての債務を支払える状態で行われることが多く、破産では債務を完済できない場合に選択される手続きとなります。

廃業と破産の違い

項目廃業破産
手続きの性質自主的な事業終了裁判所による強制的な清算
債務の状況債務を完済できる状態債務超過・支払不能
手続き期間最短2ヶ月程度半年から1年半程度
費用登記費用約4万円程度数十万円以上
社会的影響比較的軽微官報掲載による信用毀損

廃業は経営者の判断で行える自主的な選択肢であり、破産は法的な強制力を伴う最終手段といえます。

会社が廃業した場合、従業員はどうなるのでしょうか?

会社が廃業すると従業員は解雇されて、給与や賞与などの収入が途絶えます。

廃業すると会社自体が法的に消滅するため、雇用契約を継続できません。働いている従業員も、雇用先の会社が無くなってしまうので、解雇されることになります。

従業員は基本的に会社から給与や賞与などを得て生活していますが、会社が廃業すると職を失うため、給与や賞与などの所得が一切なくなってしまいます。

しかし、廃業による解雇は会社都合の退職となるため、失業保険の特定受給資格者として手厚い保護を受けられます。

待機期間なしで早期に受給開始となり、手当の給付日数も通常より多くなります。健康保険は国民健康保険へ切り替わり、厚生年金から国民年金に自動的に切り替わります。

「休廃業」とはどういう意味ですか?

休廃業とは、会社や個人事業主が資産超過の状態で事業を停止することです。

休廃業が生じる理由は、経営不振による倒産とは異なります。

高齢の経営者が体調不良で事業継続が困難になったり、市場環境の変化に対応する意欲を失ったりした場合も休廃業に該当します。

休業は一時的な事業停止であるのに対し、廃業は完全な事業終了を意味するため、両者をまとめて「休廃業」と呼んでいます。

まとめ

廃業とは経営者が自らの意思で事業を終了することで、近年は後継者不足や経営者の高齢化により増加傾向にあります。

経営者の高齢化や後継者不足による廃業を防ぐため、早期の事業承継準備を開始してください。

まず自社の状況を客観的に分析し、親族内に適任者がいるか検討し、いない場合は従業員や第三者への承継を視野に入れましょう。

また、専門家への相談を積極的に行い、自社に最適な承継方法を見つけることが重要です。

黒字経営であっても廃業を選択する企業が多いことを踏まえ、技術やノウハウ、従業員の雇用を守るためにも、廃業以外の選択肢を検討してください。

後継者問題・事業承継は日本プロ経営者協会にご相談ください

現在、日本の中小企業では後継者不在が深刻な社会問題となっており、経営者の高齢化や後継者不足により、黒字経営であっても廃業を選択する企業が急増しています。

このような状況において、廃業を回避し企業の持続的発展を実現するために、専門的なサポートが不可欠です。

一般社団法人日本プロ経営者協会(JPCA)は、まさにこの課題を解決するために設立された組織です。

JPCAには現在、直接・間接的に2,000名以上のプロ経営者候補が所属しており、上場企業の経営者やファンド等での中小企業再生経験を持つ経営者など、高度なスキルを有する人材が集まっています。

JPCAでは、経営人材の紹介やサーチファンド機能、経営コーチング、専門家ネットワークによる総合的な支援体制を整えており、後継者選定から資本の承継、経営改善までワンストップでご相談いただけます。

事業承継や後継者問題でお悩みの方は、ぜひ一度日本プロ経営者協会までご相談ください。

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