「事業承継の手続きの流れは?」
「事業承継に必要な書類は?」
上記のように、事業承継の手続きについて疑問を抱く経営者の方は多いのではないでしょうか。
事業承継には親族内承継・社内承継・M&Aなどの方法があり、それぞれ必要な書類や手続きが異なります。
また、法人か個人事業主かによっても、承継の流れや必要な手続きが大きく変わる点には注意が必要です。
事業承継の手続きの流れ
| ステップ | 主な内容 |
|---|---|
| 現在の経営状況を把握する | 財務・経営・組織の3つの観点で分析 |
| 後継者を選定・育成する | 経営資質の評価と計画的な育成 |
| 事業承継計画を策定する | 具体的なゴールと期限を設定 |
| 関係者への周知 | 従業員・取引先・金融機関への説明 |
| 事業承継の実施 | 株式譲渡または事業譲渡の実行 |
準備期間は一般的に3〜10年(中小企業では多くが5〜10年)必要とされており、経営者の平均引退年齢が70歳前後であることから、60歳頃には着手すべきとされています。
本記事は、「事業承継の手続きの流れ」や「承継方法別に必要な書類」、「手続きにかかる費用」などについて詳しく解説していきます。
これから事業承継を検討している経営者の方は、ぜひ参考にしてください。
監修者

代表理事
小野 俊法
経歴
慶應義塾大学 経済学部 卒業
一兆円以上を運用する不動産ファンド運用会社にて1人で約400億円程度の運用を担い独立、海外にてファンドマネジメント・セキュリティプリンティング会社を設立(後に2社売却)。
その後M&Aアドバイザリー業務経験を経てバイアウトファンドであるACAに入社。
その後スピンアウトした会社含めファンドでの中小企業投資及び個人の中小企業投資延べ16年程度を経てマラトンキャピタルパートナーズ㈱を設立、中小企業の事業承継に係る投資を行っている。
投資の現場経験やM&Aアドバイザー経営者との関わりの中で、プロ経営者を輩出する仕組みの必要性を感じ、当協会設立に至る。
事業承継の手続き
事業承継の手続きとは、これまでの経営を次の担い手へ引き継ぐための準備と実務のことを指します。
単に後継者を決めるだけでなく、会社の資産・権利・取引関係・経営ノウハウなどを、スムーズに移すためのプロセス全体を含みます。
手続きの内容は、個人事業主か法人か、また親族に引き継ぐのか、第三者に譲渡するのかによって変わります。
たとえば、個人事業主であれば廃業・開業届の提出や名義変更などが必要になります。
一方、法人では株式の承継や役員変更登記、契約の引き継ぎなど、より専門的な法的対応が求められます。
事業承継は短期間で終わるものではなく、数年単位で進める中長期的なプロジェクトです。
余裕をもって準備を始めることで、経営の混乱を防ぎ、次世代へ円滑に引き継ぐことができるでしょう。
事業承継の手続きの流れ
事業承継の手続きは、以下の流れで進めます。
| ステップ | 主な内容 |
|---|---|
| 現在の経営状況を分析する | 財務・経営・組織の3つの観点で分析 |
| 後継者の選定・育成をする | 経営資質の評価と計画的な育成 |
| 事業承継の計画を立てる | 具体的なゴールと期限を設定 |
| 関係者への周知 | 従業員・取引先・金融機関への説明 |
| 事業承継の実施 | 株式譲渡または事業譲渡の実行 |
それぞれの手続きを以下に詳しく解説していきます。
現在の経営状況を分析する
事業承継を進めるうえで、最初に行うべきは「現在の経営状況を正確に把握すること」です。
経営の現状を分析せずに承継を進めると、後継者が想定外の負債や経営課題を引き継ぐ可能性があります。
上記により経営の安定性が損なわれ、事業の継続が難しくなるおそれがあります。
経営状況の把握では、下の表のように財務・経営・組織の3つの観点で整理します。
| 分析項目 | 内容 | 主な確認方法 |
|---|---|---|
| 財務分析 | 売上・利益・資産・負債の現状を確認 | 決算書・キャッシュフロー表を分析 |
| 経営課題 | 収益性・事業構造の強みと弱みを明確化 | SWOT分析や外部専門家の診断 |
| 組織体制 | 後継者との役割分担、社内の人材構成を確認 | 組織図・社員ヒアリング |
例えば、売上が安定していてもキャッシュフローが悪化していれば、資金繰りに課題があると判断できます。
また、従業員の高齢化が進んでいれば、人材確保策を立てる必要があります。
経営状況を「見える化」し、課題を洗い出すことで、後継者や第三者にも安心して引き継げる環境が整います。
後継者の選定・育成をする
後継者を選定・育成する際に最も大切なのは、早期に適切な人材を見極め、計画的に育てることです。
なぜなら、経営を任せられる人物を急いで決めると、企業の将来に悪影響を及ぼすリスクが高まるからです。
| 段階 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| 選定段階 | 経営資質と価値観を評価する | 自社の理念を共有できる人を見極める |
| 育成段階 | 部署ローテーション・経営参画 | 経営力と広い視野を養う |
| 引継ぎ段階 | 責任ある業務を任せる | 経営判断を実践で体得させる |
後継者選定では、親族に限らず「経営ビジョンを共有できるか」「リーダーシップや判断力があるか」を重視します。
候補者を1人に絞るのではなく、複数人を候補として観察し、段階的に育てることが失敗を防ぐポイントです。
次に育成についてですが、後継者は現場経験だけでなく、経営の視点を持たせることが重要です。
ジョブローテーションを通じて営業や管理、製造などの部署を経験させ、広い視野を養わせます。
同時に、経営者の意思決定の場に参加させ、責任ある立場で判断させる機会を設けることも有効です。
このように、時間をかけて後継者に経営者としてのスキルと覚悟を身につけさせることで、事業承継後も組織は安定しやすくなります。
事業承継の計画を立てる
事業承継計画は、スムーズな引継ぎを実現するために必須です。
事業承継に取り組む際、計画がないと手続きが複雑化し、後継者育成や株式譲渡のタイミングが曖昧になってしまいます。
計画を立てることで、関係者が納得した上で着実に進めることができます。
以下のような流れで事業承継計画を作成します。
| ステップ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 現状把握 | 会社の株式・資産・負債をリスト化 | どの財産を引き継ぐか明確にする |
| 2. 承継方法の検討 | 親族・従業員・第三者(M&A) | 各方法のメリット・デメリット比較 |
| 3. 行動計画の設定 | 具体的なゴールと期限を決める | 例:3年後に後継者教育完了 |
| 4. 計画表の作成 | 実施内容と時期を表にまとめる | 進捗管理がしやすくなる |
| 5. 進捗確認と修正 | 定期的に進捗を確認・修正 | 状況に応じて柔軟に対応 |
例えば、「5年後に株式譲渡を完了させる」と決めれば、後継者への教育や株式の整理など、必要な準備を逆算して行動できます。
このように、計画的に進めることで承継時の混乱を未然に防げます。
関係者への周知
事業承継の際は関係者へ丁寧に周知することが最も重要です。
なぜなら、経営者が交代する事実を知らされていない従業員や取引先が不安を感じると、離職や取引停止などのリスクが高まるからです。
| 関係者 | 周知の方法 | 主な目的 |
|---|---|---|
| 従業員 | 社内説明会・社内報で告知 | 不安の解消・後継者への信頼形成 |
| 取引先 | 個別訪問・書面通知 | 継続的な取引関係の維持 |
| 金融機関 | 後継者を交えての面談 | 与信継続と経営安定への理解獲得 |
| 親族 | 家族会議での説明 | 相続面の理解・協力体制の構築 |
周知を怠ると、経営の信頼性や事業の継続性が疑問視される場合があります。
特に、従業員・取引先・金融機関といった主要な関係者への説明不足は、社内外の混乱を招きかねません。
そのため、後継者を正式に発表し、経営方針やビジョンを共有することが求められます。
このように、後継者の紹介や将来方針を明確に伝えることで、従業員の協力を得やすくなり、事業承継後の混乱を防ぐことができます。
事業承継の実施
事業承継には「株式譲渡」と「事業譲渡」があり、それぞれ必要な手続きや複雑さが異なります。
特に事業譲渡は移転する資産や契約内容が多く、細かな検討が不可欠です。
手続きを誤ると、後継者への負担や会社の運営に支障を及ぼす可能性があります。
| 手続き方法 | 特徴 | 具体的な流れ |
|---|---|---|
| 株式譲渡 | 会社の法人格は維持されたまま、株式の移転により株主と経営権が承継される | 株式譲渡契約書を作成し、署名・押印後に株主名簿を変更 |
| 事業譲渡 | 経営資源の一部または全てを移転するため手続きが複雑 | 債権・債務移転や資産譲渡契約、従業員引継ぎなど複数の契約書が必要 |
事業承継は、選択肢ごとの特徴や流れを理解したうえで、専門家へ相談して計画的に進めることが成功へのポイントです。
【承継方法別】事業承継の手続きに必要な書類
事業承継の手続きに必要な書類は、承継方法によって異なります。
事業承継を円滑に進めるためには、承継方法ごとに求められる書類を正しく理解し、適切に準備することが重要です。
書類の不備は手続きの遅延や法的トラブルにつながるため、早期の準備が求められます。
それでは、承継方法別の手続きと必要書類についてそれぞれ解説していきます。
親族内承継の手続き・必要な書類
親族内承継を進める際の手順は、以下の通りです。
- 経営状況・課題の把握:現在の事業や財産の状況を詳細に分析し、将来のリスクと機会を洗い出します
- 後継者の指名・意思確認:親族内から適任者を選定し、本人の承継意思を確認します
- 事業承継計画の策定:後継者の能力や税金、経営状況を考慮した計画を作成します
- 関係者への周知:従業員や取引先に承継について説明し、理解を得ます
- 資産の移転と経営の引継ぎ:株式や事業用資産を後継者に移転し、経営権を譲渡します
- 法的手続き:定款変更や役員変更など、法的な手続きを完了させます
親族内承継の必要な書類
| 書類名 | 用途 | 必要となる場面 |
|---|---|---|
| 遺言書 | 後継者への株式集中を明確化 | 相続による承継 |
| 遺産分割協議書 | 相続人全員の合意内容を記録 | 遺言書がない相続 |
| 生前贈与契約書 | 贈与内容の書面化 | 贈与による承継 |
| 株式譲渡契約書 | 株式移転の取り決めを明確化 | 売買による承継 |
| 事業譲渡契約書 | 事業譲渡の条件を明確化 | 事業譲渡の場合 |
親族内承継では、主に「相続」「生前贈与」「売買」の3つの方法があります。
相続では遺言書や遺産分割協議書が、生前贈与では生前贈与契約書が重要になります。売買の場合は株式譲渡契約書が必要です。
社内承継(親族外承継)の手続き・必要な書類
社内承継では、親族以外の役員や従業員に事業を引き継ぐため、株式譲渡や経営権の移転に関する法的手続きが必要となります。
社内承継を進める際の基本的な流れは、以下になります。
- 経営状況・課題の把握:現在の事業や財産の状況を詳細に分析し、将来のリスクと機会を洗い出します
- 後継者の指名・意思確認:従業員や役員から適任者を選定し、本人の承継意思を確認します
- 事業承継計画の策定:後継者の能力や税金、経営状況を考慮した計画を作成します
- 関係者への周知:従業員や取引先に承継について説明し、理解を得ます
- 株式譲渡の承認手続き:取締役会または株主総会で株式譲渡の承認を得ます
- 資産の移転と経営の引継ぎ:株式や事業用資産を後継者に移転し、経営権を譲渡します
社内承継(親族外承継)の必要な書類
| 書類名 | 用途 | 必要となる場面 |
|---|---|---|
| 株式譲渡承認請求書 | 会社に対して株式譲渡の承認を求める | 株式に譲渡制限がある場合 |
| 株式譲渡契約書 | 譲渡の条件や権利移転に関する合意内容を記載 | 株式譲渡を行う場合 |
| 株式名義書換請求書 | 株主名簿の名義変更を申請する | 株式譲渡実施後 |
| 株主名簿 | 株主名・住所などが記載された管理名簿 | 株式譲渡後の確認 |
| 株主名簿記載事項証明書 | 書き換えられた株主名簿の内容を確認 | 名義変更完了後 |
社内承継では、主に「株式譲渡」による承継方法が用いられます。株式譲渡承認請求書から株主名簿の更新まで、必要な書類を準備することが重要です。
M&A(第三者承継)の手続き・必要な書類
親族以外の第三者に会社を譲渡する際には、法的な手続きが複雑で、多くの書類が必要になります。
- 買取候補先の選定:ロングリストやショートリストを作成し、適切な譲渡先を絞り込みます
- 秘密保持契約の締結:機密情報の漏えいを防ぐため、候補先企業と秘密保持契約を結びます
- 条件交渉:意向表明書や基本合意書を通じて、譲渡条件について協議を進めます
- デューデリジェンス:買い手側による財務状況や法的問題の調査が実施されます
- 最終契約の締結:株式譲渡契約書や事業譲渡契約書などの最終契約を結びます
- 従業員・取引先への周知:承継完了後、関係者に新しい経営体制について説明を行います
M&A(第三者承継)で必要となる書類
| 書類名 | 用途 | 必要となる場面 |
|---|---|---|
| 株式譲渡承認請求書 | 株式譲渡の承認を会社に求める書類 | 株式譲渡制限がある場合 |
| 株式譲渡契約書 | 株式譲渡の条件を明確化 | 株式譲渡による承継 |
| 事業譲渡契約書 | 事業譲渡の条件を明確化 | 事業譲渡による承継 |
| 株式名義書換請求書 | 株主名簿の書換を申請 | 株式譲渡実施後 |
| 秘密保持契約書 | 機密情報の漏えいを防ぐ | 候補先への打診時 |
| 基本合意書 | 交渉段階での合意内容を記録 | 条件交渉時 |
| 意向表明書 | 買収条件を提示 | 条件交渉時 |
M&A(第三者承継)は、株式譲渡と事業譲渡の2つの方法が主流となっています。
株式譲渡では株式譲渡契約書が、事業譲渡では事業譲渡契約書が中心的な書類となり、どちらの方法を選ぶかによって必要書類が変わってきます。
事業承継の手続きにかかる費用について
事業承継の手続きでは、税金や専門家への手数料など様々な費用が発生し、承継の形態や事業規模によって数百万円から数千万円規模になるケースもあります。
以下では、事業承継で実際にかかる主要な費用について詳しく紹介します。
税金関連の費用
事業承継では、相続・贈与・資産移転に伴う複数の税金が発生し、計画的に対策しなければ大きな出費となる可能性があります。
経営者が自社株や事業資産を次世代に継ぐ場合、それらの評価額に応じて課税される仕組みになっています。
また、承継の形態が「相続」「贈与」「売却」かによって税金の種類や金額が異なります。
| 税金の種類 | 課税される場面 | 税率・内容 |
|---|---|---|
| 相続税 | 経営者の死亡による承継 | 超過累進課税(最大55%) |
| 贈与税 | 生前贈与による承継 | 超過累進課税(最大55%)、特例贈与・相続時精算課税あり |
| 法人税 | 会社間の事業譲渡 | 実効税率約30% |
| 登録免許税 | 不動産・登記変更時 | 原則2%、合併0.2%、分割0.4%(軽減あり) |
| 不動産取得税 | 事業用不動産取得時 | 原則4%、税制特例で約3%に軽減 |
| 消費税 | 資産譲渡時に課税対象資産を含む場合 | 10%、株式譲渡は非課税 ※有形無形の資産を移転する場合は消費税の課税対象になる |
例えば、親から子へ自社株を贈与する場合、評価額が3,000万円なら基礎控除110万円を超える2,890万円が課税対象になります。
この場合、税率が20%前後となると、約570万円の贈与税が発生します。
但し、相続時精算課税制度や事業承継税制を利用すれば軽減可能です。
事業承継の税金は、種類ごとに仕組みが異なるため、税理士と連携した早めの対策が重要です。
制度の活用次第で数百万円単位の節税が可能になるため、シミュレーションを行い、無理のない承継計画を立てましょう。
参考:No.4301 相続時精算課税の選択と相続税の申告義務|国税庁
参考:法人版事業承継税制|国税庁
専門家への手数料
事業承継で専門家を利用すると、依頼する専門家の種類や業務範囲、事業規模により費用は大きく変動します。
以下は一般的な目安です。具体的な金額は案件ごとに異なるため、依頼前に複数の専門家から見積もりを取得することをおすすめします。
| 専門家 | 依頼内容 | 費用相場 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 税理士 | 自社株評価、税申告 | 数十万円~ | 自社株評価・相続税対策・申告支援を含むと高くなる |
| 弁護士 | 契約書作成、争い防止 | 相談料:数千円〜数万円 報酬(着手金・成功報酬など):数十万円〜数百万円(大型・紛争案件は例外的に数千万円) | 契約書作成、争訟対応、交渉支援で変動 |
| M&A仲介 | 候補紹介、企業価値算定 | 成果報酬:取引額の数%(+着手金等がある場合あり) | 小〜中規模は固定報酬+成功報酬の併用が多い |
このように専門家への手数料は業務範囲や会社規模により大きく変動するため、事業承継を検討する際は、複数の専門家から見積もりを取得して比較検討することが重要です。
事業承継に関する手続きの相談先

事業承継をスムーズに進めるためには、専門的なアドバイスや適切な支援を受けられる相談先を知っておくことが大切です。
今回は、事業承継に関する主な相談先についてご紹介します。それぞれどのようなサポートが受けられるのか、詳しく見ていきましょう。
- 事業承継・引継ぎ支援センター
- 商工会・商工会議所
- M&A仲介会社
- 金融機関
- 税理士・公認会計士・弁護士
事業承継・引継ぎ支援センター
国が設置した公的な相談窓口である事業承継・引継ぎ支援センターは、中小企業の事業承継に関するあらゆる相談に無料で対応しています。
専門知識を持つ中小企業診断士や税理士、公認会計士、金融機関のOBなどが在籍しており、中立的なアドバイスを受けることができます。
47都道府県すべてに設置されているため、全国どこでも利用可能です。
- 事業承継・引継ぎ全般に関する無料相談
- 専門家による事業承継計画作成支援
- 後継者候補の紹介やマッチング
- 従業員や親族への承継方法の提案
- M&Aや譲渡に関する情報提供とサポート
商工会・商工会議所
商工会・商工会議所が事業承継の相談先として優れている理由は、経営指導員による相談対応や事業承継診断を無料で実施している点にあります。
また、事業承継の専門家を紹介する橋渡し役も果たしており、各事業所のニーズに応じて経験豊富な専門家を派遣してくれます。
- 事業承継診断の実施
- 専門家の紹介・斡旋
- 後継者塾やセミナーの開催
- 事業承継準備の支援
- 経営改善のサポート
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、会社を売りたい企業と買いたい企業の間に立って、M&Aの成立をサポートする専門機関です。
売り手と買い手の双方と契約を結び、企業価値の算定から相手企業の選定、条件交渉、契約手続きまで包括的に支援します。
- 企業価値の算定と売却価格の提案
- 買い手企業の選定とマッチング支援
- 条件交渉の仲介と調整
- デューデリジェンスの実施サポート
- 契約書類の作成と手続き支援
金融機関
金融機関は普段から企業の財務状況を把握しており、事業承継に関するあらゆる相談に対応してくれます。
銀行などの金融機関は融資先の経営状態をよく理解しているため、個別の事情に応じた適切なアドバイスを提供できます。
また、相談料や着手金が発生しないケースが多く、コストを抑えて相談したい経営者にとってメリットがあります。
- 自社株の価値算定や評価に関する相談
- 事業承継に必要な資金調達の支援
- 経営改善や業績向上のアドバイス
- M&A相手先企業の紹介やマッチング
- 税務対策や節税方法の提案
税理士・公認会計士・弁護士
税理士は、承継方法の助言や自社株の評価、相続税・贈与税対策など税務面でのサポートが得意です。
顧問税理士であれば相談しやすく、付き合いのある専門家やM&A仲介会社なども紹介してもらえます。
公認会計士は、経営状況の見える化や事業承継計画の策定、M&Aでの財務デューデリジェンスを担当します。
財務の専門家として、経営課題の解決や経営強化を支援してくれます。
弁護士は、法務面でのサポートが主な役割です。
事業承継を行ううえで最善の方法をアドバイスし、金融機関との交渉や各種契約書の作成・確認を行います。
事業承継の手続きにおける注意点

事業承継の手続きにおける注意点は以下の通りです。
- 事業承継には数年単位の準備期間が必要
- 後継者の負担を考慮する
- 経営者資質のある後継者を選ぶ
事業承継は企業の未来を左右する重要なプロセスであり、適切な準備と配慮なしには成功しません。
上記の注意点について解説していきます。
事業承継には数年単位の準備期間が必要
事業承継の準備は3〜10年単位で取り組むべきです。
事業承継では、株式や資産の移転、後継者の育成、取引先との信頼構築など、短期間では対応しきれない要素が多いからです。
準備不足のまま代替わりすると、後継者が経営判断に悩み、業績悪化や従業員離職を招くリスクが高まります。
中小企業では、経営者の平均引退年齢が70歳前後であるため、60歳頃から準備を始めるケースが理想とされています。
| 準備項目 | 必要期間の目安 | 内容 |
|---|---|---|
| 後継者の選定・育成 | 5〜10年 | 経営ノウハウの引継ぎ 人間関係の構築 |
| 株式・資産の承継 | 3〜5年 | 贈与・相続、税務手続き |
| 取引先・従業員への引継ぎ | 2〜3年 | 信頼関係の移行 社内体制整備 |
事業承継の成功には、長期的な視点での計画立案が欠かせません。
「まだ早い」と感じる時期から行動を始めることが、企業の未来を守る最善の一歩です。
後継者の負担を考慮する
後継者の負担を軽減するには、税務・資金・メンタル面の支援を行うことが重要です。
| 負担の種類 | 対策 | 効果 |
|---|---|---|
| 税金の負担 | 事業承継税制の活用 | 相続税・贈与税の猶予や軽減を受けられる |
| 資金の負担 | 株式の段階的贈与 | 贈与税の平準化で支払額を抑えられる |
| メンタルの負担 | 現経営者の伴走・専門家支援 | 経営への不安を軽減し、引き継ぎを円滑に進められる |
事業承継では、相続税や贈与税など大きな金銭的負担が発生するうえ、経営責任による精神的な負担も重くなります。
これらの負担を放置すると、後継者が経営に専念できなくなり、結果として企業の安定や発展に支障が出る可能性があります。
後継者の負担を考慮しながら、精神的にも経済的にも無理のない事業承継計画を立てることが、企業の未来を守る方法です。
現経営者は、税制の活用や専門家相談を通じて、早期から準備を始めることが大切です。
経営者資質のある後継者を選ぶ
事業承継では、経営者資質を備えた後継者を選ぶことが重要です。
| 必要な資質 | 内容・確認ポイント |
|---|---|
| 経営理念・ビジョンへの理解 | 企業の理念や今後のビジョンに共感し、言葉で説明できるか |
| 専門知識・実務経験 | 自社事業や製品サービスへの知識、主要部門の現場経験 |
| コミュニケーション能力 | 社内外で信頼関係を築き、方針や意見を伝えられる力 |
| リーダーシップ | 目標達成を導き、周囲を巻き込む統率力 |
| 柔軟性・学習意欲 | 変化に向き合う姿勢、継続的な学びへの意欲 |
| 責任感・忍耐力 | 難題にも粘り強く取り組みやり抜く力 |
経営者としての資質が不十分な後継者を選んでしまうと、企業理念やビジョンの継承が不安定になり、経営環境の変化に対応できず、業績に悪影響が及ぶ可能性があります。
事業承継では、会社の理念やビジョンに一致した経営者資質を持つ後継者を、関係者の納得を得ながら選ぶことが重要です。
事業承継の手続きに関するよくある質問
最後に、事業承継の手続きにまつわる疑問、よくある質問に回答します。
- 事業承継を検討し始めた経営者が最初に取り組むべきことは何ですか?
- 個人事業主の事業承継手続きは法人とどのような違いがありますか?
- 事業承継で活用できる補助金制度にはどのようなものがありますか?
事業承継を検討し始めた経営者が最初に取り組むべきことは何ですか?
事業承継を検討し始めた経営者が最初に取り組むべきことは、会社の現状を正確に把握することです。
事業承継は3年から10年という長期間を要するため、まず自社の財務状況や経営課題を「見える化」することが重要になります。
現状把握なしに後継者選定や承継計画を立てることはできません。
現状把握では以下の項目を詳しく調査しましょう。
- 財務状況の分析:貸借対照表や損益計算書を確認し、収益構造を明確にする
- 株式の評価:自社株式の評価額や保有状況を把握する
- 経営課題の整理:会社の強みや弱点、将来のリスクを洗い出す
- 相続対策の検討:法定相続人の確認や納税方法の検討を行う
専門的な知識が必要な部分については、税理士やM&Aアドバイザーなどの専門家に相談することも大切です。
個人事業主の事業承継手続きは法人とどのような違いがありますか?
個人事業主の事業承継手続きは法人とは大きく異なります。
法人では株式の移転で完了しますが、個人事業主では現経営者の廃業と後継者の開業という2つの手続きが必要になります。
| 項目 | 個人事業主 | 法人 |
|---|---|---|
| 基本的な手続き | 現経営者の廃業届提出 + 後継者の開業届提出 | 株式の移転のみ |
| 資産の引き継ぎ | 事業用資産を個別に譲渡 | 株式移転で一括承継 |
| 手続きの複雑さ | 全資産の評価・移転が必要 | 株式移転で完了 |
| 税務処理 | 各資産に対する譲渡所得税 | 株式譲渡益課税 |
個人事業主と法人では資産の所有形態が根本的に違うためです。法人は法律によって人格が認められた組織であり、資産は全て法人の所有物となります。
一方、個人事業主の場合、事業に必要な資産は全て個人の所有物となるため、承継時には個別の資産移転が必要になります。
事業承継で活用できる補助金制度にはどのようなものがありますか?
事業承継では、事業承継・M&A補助金と事業承継税制の2つが主要な支援制度として活用できます。
事業承継補助金制度一覧
| 制度名 | 概要 | 補助上限額 | 補助率 |
|---|---|---|---|
| 事業承継・M&A補助金(経営革新事業) | 事業承継やM&Aを契機とした経営革新への挑戦費用を補助 | 600万円以内 | 2/3以内 |
| 事業承継・M&A補助金(専門家活用事業) | M&Aに係る専門家等の活用費用を補助 | 600万円 | 2/3以内 |
| 事業承継・M&A補助金(廃業・再チャレンジ事業) | 既存事業を廃業するための費用を補助 | 150万円 | 2/3以内 |
| 法人版事業承継税制(特例措置) | 非上場会社株式の贈与税・相続税を猶予 | 納税猶予100% | – |
| 個人版事業承継税制 | 特定事業用資産の贈与税・相続税を猶予 | 納税猶予100% | – |
事業承継には多額の資金が必要になることが多く、また相続税や贈与税の負担も大きくなります。国はこうした課題を解決するため、費用面と税制面の両方から支援制度を用意しています。
後継者問題・事業承継は日本プロ経営者協会にご相談ください
中小企業の経営者にとって、事業承継は企業の存続を左右する重要な課題です。
親族内承継、社内承継、M&A(第三者承継)といった様々な選択肢がある中で、適切な承継方法を選択し、必要な手続きを進めることは決して容易ではありません。
一般社団法人日本プロ経営者協会(JPCA)は、こうした後継者問題や事業承継に悩む企業オーナー様を専門的にサポートするために設立された組織です。
JPCAでは、プロ経営者の輩出とマッチングを通じて、企業の成長と持続的な発展を支援しています。
特に、経営人材の紹介やサーチファンド機能、経営コーチング、専門家ネットワークによる総合的な支援体制を整えております。
後継者選定から資本の承継、経営改善まで、事業承継に関するあらゆる課題にワンストップで対応いたします。
事業承継や後継者問題でお悩みの方は、ぜひ一度日本プロ経営者協会までご相談ください。
まとめ
今回紹介した3つの承継方法の特徴と手続きを参考に、まずは自社の現状を正確に把握し、財務状況の分析、株式の評価、経営課題の整理を行いましょう。
その上で、自社に最適な承継方法を選択し、必要な書類の準備と専門家への相談を進めてください。
事業承継は3年から10年という長期間を要するため、早期の計画策定が重要です。
また、事業承継税制の特例措置が2025年度末までとなっているため、該当する企業は早めの検討と申請を行うことをお勧めします。
