会社分割と事業譲渡の違いは?税務面の比較やメリット・デメリットを解説

会社分割と事業譲渡の違いは?税務面の比較やメリット・デメリットを解説

「会社分割と事業譲渡の違いは?」

「どちらを選べばいいのか判断に迷う」

会社分割と事業譲渡の違いは、「包括的に承継するか」「個別に譲渡するか」という点にあります。

会社分割は企業の事業をまとめて承継できる一方、事業譲渡は契約ごとに手続きが必要になる点が大きな違いです。

なぜこの違いが重要かというと、税務面や手続きの負担、対価の支払い方法、さらには従業員や許認可の扱いまで大きく影響するためです。

たとえば、会社分割は吸収型などの手法により円滑に事業承継が可能ですが、事業譲渡では個別の契約締結や再申請が必要になるケースが多く、実務負担が増えやすい特徴があります。

本記事では、「会社分割と事業譲渡の基本的な仕組み」や「それぞれのメリット・デメリット」、「選択する際の判断基準」について詳しく解説していきます。

企業の組織再編や事業承継を検討している経営者の方は、ぜひ参考にしてください。

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目次

会社分割と事業譲渡の特徴

会社分割と事業譲渡の最大の違いは、権利や契約を「まとめて承継するか」「個別に移すか」という点にあります。

会社分割は「包括承継」という仕組みで、事業に関する資産・負債・契約などを自動的に一括で引き継ぎます。

一方、事業譲渡は「個別承継」となり、従業員や取引先との契約を一つずつ結び直す必要があります。

この違いにより、手続きの手間や税金の負担が大きく変わってきます。

項目会社分割事業譲渡
承継方法包括承継(一括で自動承継)​個別承継(契約ごとに手続き)​
従業員の同意原則不要必要​
消費税非課税​課税​
簿外債務のリスク引き継ぐ可能性あり​引き継がない​
対価株式が一般的​現金​

例えば、多くの契約関係がある事業を承継する場合、会社分割であれば個別の同意なく移転できるため、スムーズに手続きが進みます。

しかし事業譲渡では、従業員一人ひとりから転籍の同意を取る必要があり、時間と労力がかかります。

また、税金面でも違いがあり、会社分割では消費税がかからず登録免許税の軽減措置も受けられますが、事業譲渡では消費税が課税される点に注意が必要です。

このように、会社分割と事業譲渡は承継方法や税務面で大きく異なるため、目的や状況に応じて最適な手法を選ぶことが重要です。

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会社分割とは「事業に関する権利義務を一括で引き継ぐこと」

会社分割とは

会社分割とは、会社の一部または全部の事業を他の会社に引き継がせる仕組みです。

会社分割は組織再編の方法であり、M&Aの手法の一つとしても活用されています。

会社分割は大きく「新設分割」と「吸収分割」に分かれます。

分類概要特徴・例
新設分割事業を切り離し、新しく会社を設立する子会社化・新事業立ち上げ
吸収分割事業を既存の会社に承継させる第三者M&Aでの事業移転

たとえば、A社が新会社(子会社)を設立し、その新会社に技術部門を承継させるのが新設分割、B社が既存の会社(グループ内外の第三者を含む)に販売部門を承継させるのが吸収分割です。

会社分割は、企業の再編や事業承継に役立つ便利な手法です。

会社の一部や全部を柔軟かつスムーズに切り離して譲渡でき、目的に応じて「新設分割」と「吸収分割」を選ぶことが大切です。

新設分割とは

新設分割とは、既存の会社が事業の一部または全部を切り出し、新たに設立する会社に承継させる組織再編の手法です。

項目内容
設立方法新しい法人を設立して事業を承継​
権利義務の移転包括的に承継されるため個別手続き不要​
主な活用場面グループ内の事業統合・整理

特定事業の分社化​
メリット新しい組織文化の形成

M&A設計の柔軟性​
デメリット初期投資と時間が必要

税務処理が煩雑​

新設分割では、まず新しい法人を設立した上で、既存事業の権利義務を包括的にその法人へ承継します。

既存の事業基盤や社内文化がない状態からスタートするため、承継した事業とのすり合わせが比較的スムーズに進められます。

分割の対価として、新設会社の株式を分割元の会社または株主が受け取る形となります。

新設分割は特定の事業を明確に独立させたい場合や、将来的な売却を見据えた事業分離に有効な手法といえます。

吸収分割とは

吸収分割とは、会社が特定の事業を既存の別会社に引き継がせる組織再編の手法です。

新しい会社を設立する必要がないため、手続きにかかる時間やコストを抑えられます。

項目内容
設立方法既存の法人に事業を承継​
権利義務の移転包括的に承継されるため個別手続き不要​
主な活用場面グループ内の事業再編

不採算事業の切り離し

M&Aによる事業統合​
メリット新会社設立が不要で時間・コストを削減できる

株式対価により資金負担を抑えられる

手続きが比較的簡便​
デメリット既存事業や組織文化とのすり合わせに時間がかかる

簿外債務を引き継ぐリスクがある

承継会社の選定が必要​

吸収分割では、分割会社が事業を切り離し、承継会社がその事業に関する権利義務を包括的に引き継ぎます。

対価として、分割会社は承継会社から株式や金銭を受け取ることになります。

株式を対価にすれば、資金負担を抑えながら事業の再編が可能になるため、キャッシュフローへの影響を最小限に抑えられます。

吸収分割は、既存企業への承継により迅速な事業再編を実現できる一方で、統合後の調整期間を見込んだ計画が重要になります。

事業譲渡とは「資産・契約などを個別に選んで引き継ぐこと」

事業譲渡とは

事業譲渡とは、会社が運営する事業の一部または全部を第三者へ契約によって譲り渡すM&Aの手法です。

経営資源の集中や不採算部門の整理など、企業の課題解決として活用されることが多いです。

また、売り手・買い手の間で「資産・負債・契約」の範囲を自由に交渉できる仕組みなので、状況に応じた最適な対応が可能です。

例えば、町工場の経営者が高齢により引退を検討する場合、主力の製造事業のみを大手メーカーに譲渡することで、従業員の雇用継続と事業の発展を両立させることができます。

また、不採算部門を切り離して売却し、残った収益事業に経営資源を集中させる企業再構築の手段としても活用されています。

会社分割と事業譲渡の違い6つをわかりやすく比較

会社分割と事業譲渡の違いは以下の通りです。

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項目会社分割事業譲渡
承継の仕組み権利義務を一括で引き継ぐ(包括承継)必要なものを個別に移転(特定承継)
対価の特徴株式での対価が一般的(子会社化が多い)現金での支払いが中心
契約・許認可原則としてまとめて引き継がれる再契約・再取得が必要になるケースが多い
負債の扱い原則すべて承継(簿外債務も含まれる可能性)基本的には引き継がない
債権者対応保護手続きが必要通常は特別な手続き不要
消費税の扱い組織再編のため非課税資産売却とみなされ課税対象
従業員の雇用労働契約承継法に基づき引き継ぎ従業員ごとに同意を取得

会社分割は、包括的に権利義務を一括承継できる組織再編行為です。

債権者保護手続きが必要ですが、消費税は不課税となり、雇用契約は労働契約承継法に基づき自動承継されます。

ただし、許認可は業種によっては新規取得が必要な場合があるため事前確認が必須です。

一方、事業譲渡は個別に資産や契約を移転する取引契約で、各契約ごとに同意が必要です。

消費税は課税されますが、債権者保護手続きは不要で、柔軟に承継範囲を選べる点が特徴です。

以下では、法律上・税務上・実務上の違いを詳しく解説していきます。

参考:企業組織の再編(会社分割等)に伴う労使関係(労働契約の承継等)について|厚生労働省

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法律上の扱いの違い

「法律上の扱い」という点で会社分割と事業譲渡には大きな違いがあります。

会社分割は会社法上の「組織再編行為」として法律で定められているのに対して、事業譲渡は「取引法上の契約」であり、組織再編には該当しません。

会社分割の場合は権利義務が包括的に新会社や承継会社に引き継がれます。

一方、事業譲渡では資産や負債、契約などを個別に選別して移転し、取引先や従業員の同意が必要になります。

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項目会社分割事業譲渡
法律上の性質組織再編行為
(会社法上)
取引法上の契約
権利義務の継承包括的承継
(自動的に承継)
個別承継
(同意・契約が個々に必要)
債権者保護手続必要
(公告や債権者への通知が必須)
原則不要
(必要な分のみ同意を得る)
雇用契約自動的に承継個別に同意・契約が必要

法律上の扱いに明確な違いがあり、どちらを選ぶかによって必要な手続きやリスクも大きく変わります。

そのため、会社分割か事業譲渡か迷う場合は、法的性質と目的、引き継ぎの範囲などから慎重に検討されることをおすすめします。

債権者保護の要否

会社分割では、債権や債務が包括的に承継されます。

そのため、債権者保護手続きが法律上必要となっており、原則的に官報公告や個別通知、異議申立期間の設定などが義務付けられています。

一方、事業譲渡では債権者保護手続きは不要ですが、債務を承継する場合は債権者ごとに個別の同意が必要となり、債権を承継する場合は債権譲渡の通知または債務者の承諾が必要です。

事業譲渡契約で明示されていない債務は譲受側に承継されず、簿外債務などの見落としがあると譲渡側・譲受側双方に不利益が発生する可能性があります。

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区分債権の承継債務の承継債権者保護手続き
会社分割包括承継包括承継必要
事業譲渡個別契約必要個別契約必要不要(同意必要)

このように、会社分割では債権・債務を一括承継し、債権者保護手続きが必要です。

一方、事業譲渡では債務ごとに個別同意が必要で、債権者保護手続き自体は求められません。

許認可

事業譲渡では許認可が原則承継できないため、買い手側が各種許認可を新たに取得しなければなりません。

一方、会社分割では包括承継が認められ、対象の許認可が多く自動的に新会社や承継会社へ引き継がれます。

事業譲渡は資産や事業を個別に現金で売買するため、許認可も法人ごとに紐づいている点を法律上引き継げません(特例業種あり)。

会社分割は会社法上の組織再編行為であり、契約や許認可も包括的に引き継げる仕組みとなっています。

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項目会社分割事業譲渡
許認可の扱い原則引き継ぎ可能。ただし建設業、宅建業、貸金業など承継不可も有り原則新たに取得が必要。個別業法の承継制度で認められる場合も有り
取得タイミング会社分割の効力発生日に自動承継(届出必要)譲渡契約締結後に各許認可を個別申請し取得
注意点承継不可な許認可や事前承認・届出が必要なケースに注意事業開始までに全許認可再取得が間に合うスケジュール管理が必要

宅地建物取引業、貸金業は会社分割でも新規取得が必要。
一般貨物自動車運送事業、旅館業は会社分割でも行政庁の許可が必要な場合あり。

会社分割を選んでも一部は新規取得が必要なため、どちらの場合でも事前にリストアップし行政等に確認しましょう。

労働契約

会社分割では従業員の雇用契約は自動的に引き継がれますが、事業譲渡の場合は従業員ごとに新たな同意と契約が必要です。

事業譲渡は、譲渡側と譲受側の間で個別に契約を結び直す必要があるため、従業員本人の同意が必須となります。

一方、会社分割は包括承継であるため、原則として雇用契約も手続きに従いまとめて承継される仕組みです。

項目事業譲渡会社分割
雇用契約従業員ごとに再契約が必要(同意必須)自動的に承継(まとめて引き継ぐ)
手続きの負担個別対応、多くの調整が必要労働者保護手続の実施のみ

例えば、事業譲渡の場合、従業員Aさんが転籍に同意しなければ元の会社に残ることもできますが、会社分割の場合は自動的に新しい会社に雇用が引き継がれます。

このように、雇用関係の引き継ぎ方法が大きく異なるので、手続きの負担や従業員への影響を十分に考慮して選択することが重要です。

消費税などの税務

会社分割は組織再編行為であり、資産・負債を包括承継するため、消費税は「不課税(課税対象外)」として扱われます。

一方、事業譲渡は資産の売買契約にあたるため、課税資産の部分にだけ消費税が課税されます。

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税目会社分割事業譲渡
消費税不課税(課税対象外)課税資産に課税
不動産取得税要件を満たせば非課税・軽減あり課税される
軽減措置受けられる原則なし

事業譲渡で課税資産1億円を移転した場合、現行税率10%で1,000万円の消費税が発生します(土地等の非課税資産は計算から除外)。

一方、会社分割では、適用要件を満たすことで不動産取得税の非課税・軽減が受けられる場合があります。

総じて、消費税など税務面では会社分割の方が負担が小さくなることが多い一方で、各種届出の有無で取扱いが変わるため、個別案件ごとに専門家へ確認するのが安心です。

会計処理

事業譲渡では、譲渡した資産や負債と譲渡対価(現金等)の差額が譲渡益や譲渡損として計上されます。

一方、会社分割の会計は税務の「適格・非適格」ではなく、同一支配下かどうかや対価の受領者で異なります。

第三者間の分割では承継会社は取得法(時価)で受け入れ、移転会社は対価と帳簿価額の差額を原則損益とし、同一支配下では簿価で移転し損益は原則計上しません。

事業譲渡の会計処理

譲渡した固定資産の簿価が300万円で、譲渡価格が350万円の場合、差額の50万円は「譲渡益」として貸方に計上します。

会社分割の会計処理

同一支配下(親子会社間など)では簿価で移転し譲渡益は発生しません。
一方、第三者間の会社分割では、会計上は取得法により時価評価で処理されます。
税務上は適格要件を満たせば簿価で課税繰延、満たさない場合は時価課税となります。

会社分割と事業譲渡は、会計処理が違います。

目的や状況に応じて仕訳や課税関係に注意しながら使い分けることが大切です。

会社分割と事業譲渡の共通点

会社分割と事業譲渡には、「M&Aの手法として事業を他の会社に移転できる」という共通点があります。

どちらも事業の全部または一部を別の会社に承継・移転させることができ、企業の組織再編や事業承継の場面で活用される点で共通しています。

会社分割は会社法上の組織再編行為であり、事業譲渡は取引法上の契約という法的性質の違いはありますが、「事業を移転させる」という点では目的が一致しています。

項目共通点
M&Aの手法どちらもM&Aの一種として利用される​
承継対象事業の全部または一部を他社に移転できる​
活用場面事業再編・事業承継・不採算事業の整理などに使える​
主な効果特定の事業を切り離して別会社に移管する​

例えば、後継者不在の問題を解決したい場合や、不採算事業を整理したい場合など、どちらの手法でも対応可能です。

このように、会社分割と事業譲渡は、事業を他社に承継させるという共通の機能を持つM&A手法といえます。​

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会社分割のメリット

会社分割のメリットが分かる画像

会社分割のメリットは、以下の通りです。

会社分割のメリット
  • 契約や許認可ごと承継できる
  • 不採算事業を切り離せる
  • 譲受企業に資金がなくても実施できる

会社分割は、経営効率の改善やリスク分散にも役立ちます。

特に中小企業にとって、負担を軽減しながら事業再編を進められる点は大きな利点といえるでしょう。

それでは、上記のメリットについて順番に解説していきます。

契約や許認可ごと承継できる

会社分割を利用すると、既存の契約や許認可をまとめて新会社や承継会社に引き継ぐことができます。

会社分割が「包括承継」という仕組みで、個別の契約や許認可を一件ずつ結び直す必要がないからです。

事業譲渡やM&Aと比べて、各種手続きの手間やリスクを大幅に減らすことができます。

項目会社分割事業譲渡
契約の承継包括承継
(まとめて承継)
個別承継
(契約ごと手続き)
許認可の承継原則承継可能基本は再取得が必要
必要な同意個別同意が不要個別に同意が必要

例えば飲食業や美容業などは、都道府県知事への届出によって許認可をそのまま引き継げます。

ただし、建設業や宅地建物取引業など一部の業種では再申請が必要です。

不採算事業を切り離せる

会社分割を活用すれば、赤字を出している事業だけを分社化して本体から分離できます。

その結果、採算の良い事業に経営資源を集中させることができ、無駄なコストや倒産リスクを分散できます。

ケース会社分割前会社分割後
事業構成黒字+赤字事業混在赤字部門のみ分社化
経営リソースの活用分散しがち好調事業に集中
倒産リスク赤字拡大で全社危機本体の健全経営を死守

例えば、複数の事業を展開している会社があるとします。

業績が悪化した事業部門のみを会社分割で新会社に移すことで、残った本体は採算の取れる事業だけに集中できるようになります。

上記により、経営判断も迅速になり、全体の利益を守ることが可能です。

譲受企業に資金がなくても実施できる

会社分割では、対価を現金でなく「新株」などの株式で支払うことが認められています。

そのため、譲受企業は多額の買収資金を準備する必要がなく、資金負担を抑えながら事業承継や再編ができます。

実際に中小企業のM&Aでは、譲受企業が必要な現預金を用意できない場合にも、会社分割を利用して自社の新株を売り手(分割会社)へ交付することで事業承継が行われています。

また、承継会社も現金流出が抑えられるため、リスクを減らしてスムーズにM&Aを進められます。

このように、譲受企業が資金を持っていない場合でも、会社分割なら新株発行による対価支払いでM&Aや事業承継が実現可能です。

会社分割のデメリット

会社分割のデメリットが分かる画像

会社分割のデメリットは、以下の3つです。

会社分割のデメリット
  • 簿外債務も引き継ぐ可能性がある
  • 税務手続きが複雑になる
  • 株主構成が変わる場合がある

会社分割は事業再編の有効な手法である一方で、予期しないリスクや複雑な手続きを伴うことがあります。

特に簿外債務の引き継ぎリスクや煩雑な税務処理、経営権への影響など、慎重な検討が必要な課題が存在します。

それぞれのデメリットについて詳しく解説していきます。

簿外債務も引き継ぐ可能性がある

会社分割では、帳簿に記載されていない簿外債務を引き継いでしまうリスクがあります。

会社分割は、事業や資産、負債、契約関係をまとめて包括的に引き継ぐ仕組みです。

そのため、表面化していない未払いの残業代や未認識の保証債務など、「簿外債務」も引き継ぐ恐れがあります。

簿外債務の例
  • 未払い残業代
  • 環境修復費用
  • 債務保証
  • 訴訟リスク

会社分割後に過去の未払い残業代が発覚し、多額の負債を新会社が抱える可能性があります。

事前の調査(デューデリジェンス)を徹底しても、すべての簿外債務を把握できるとは限りません。

デューデリジェンスとは、適正評価手続き。投資家が投資をおこなう際や金融機関が引受業務をおこなう際、投資対象の実体やリスクを適正に把握するために事前におこなう多面的な調査。

引用:デューデリジェンス|グロービス経営大学院

会社分割では、予測できない簿外債務も引き継ぐリスクがあり、慎重な検討と事前調査が必要です。

税務手続きが複雑になる

会社分割を行うと、税務手続きが複雑になるため、専門知識や準備が必須です。

分割対象の資産や負債の整理、適格分割か非適格分割かの判定、各種税務申告や移転資産の評価など、税金の負担や会計処理が大きく変わることが原因です。

例えば、会社分割の際には以下のような作業が発生し、手間が増えてしまいます。

  • 資産や負債、従業員や契約関係を細かく一つ一つ仕分けして記録する
  • 非適格分割の場合、時価評価による法人税等が課される場合がある
  • 移転後の各会社ごとに必要となる税務申告書類の作成が増えるうえ、届出や顧問税理士との調整作業も多くなる

上記のように、税務手続きの煩雑さは会社分割の大きなデメリットです。

適切に対応しないとコストや税金の負担が膨らむため、税理士の助言を受けて慎重に進めることが重要となります。

株主構成が変わる場合がある

会社分割では、新設分割を行う際に株主構成が変わるケースがあります。

特に「分割型分割」では、新しく設立した会社の株式が元会社の株主に分配されるため、株主の人数が増えたり、持株比率が変わることがあります。

これにより、経営権のバランスが崩れるリスクが生じます。

スクロールできます
分割の種類株主構成が変わる会社変化の内容
新設分割
(分社型)
新設会社新会社の株主構成が新たに決まる(元会社はそのまま)
新設分割
(分割型)
新設会社
元会社の株主
新会社株式を元会社の株主に配るため、株主が増える

たとえば、分割型分割を行った場合、新たな株主が加わることで、重要事項の決議に必要な議決権が分散し、経営者が意思決定しづらくなるケースがあります。

会社分割には予期せぬリスクも伴います。
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会社分割の手続きの流れ

会社分割の手続きは、会社法や労働契約承継法などの法律に従い、計画的なスケジュール管理が重要です。

不備があると会社分割自体のやり直しになりかねないため、専門家のサポートを受けながら進めることをおすすめします。

会社分割の手続きの流れ

STEP
分割契約書(吸収分割)または分割計画書(新設分割)の作成

商号・承継する権利義務・対価・効力発生日など会社法で定められた事項を記載します。書面作成には専門知識が必要です。

STEP
取締役会での承認決議

会社法362条4項に基づき、取締役会設置会社は契約締結前に承認決議が必要となります。

STEP
事前開示書類の本店備置き

分割契約書の写し、対価の相当性、計算書類などを備え置きます。電磁的記録での備置きも可能です。

STEP
労働者への通知・協議

労働契約承継法に基づき、対象事業従事者と労働組合へ書面で通知します。個別協議も並行して実施します。

STEP
株主総会の特別決議による承認

議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。簡易・略式の要件を満たせば省略できます。

STEP
反対株主の株式買取請求への対応

効力発生日の20日前までに株主に対して通知または公告を行う必要があります。

STEP
債権者保護手続き(官報公告・個別催告)

官報掲載までに1〜2週間かかります。重畳的債務引受などの要件を満たせば省略できる場合もあります。

STEP
会社分割の効力発生

新設分割は法務局休日には効力発生日を指定できないため注意が必要です。

STEP
登記申請

分割会社・承継会社が同時申請または経由申請で行います。登録免許税が発生します。

STEP
事後開示書類の本店備置き

効力発生によって承継した権利義務、債権者保護手続きの経過などを記載した書面を備え置きます。

株主総会の招集通知は実施日の2週間前までに行う必要があり、官報公告は掲載まで1〜2週間程度を要します。

全体の手続きには数ヶ月の期間を見込んでおくのが一般的です。

事業譲渡のメリット

事業譲渡のメリットが分かる画像

事業譲渡の主なメリットは下記の3つです。

事業譲渡のメリット
  • 譲渡対象を柔軟に選べる
  • 後継者問題を解決できる
  • 譲渡益を確保できる

事業譲渡を活用することで、経営資源の集中、新たな投資の実現、そして事業存続の可能性を広げることができます。

それぞれのメリットについて紹介していきます。

譲渡対象を柔軟に選べる

事業譲渡における最大のメリットは、売却したい事業や資産を自由に選択できる柔軟性にあります。

事業譲渡では「個別承継」の仕組みを採用しているため、譲渡対象となる資産・負債・契約・従業員などを個別に指定して選択できます。

項目詳細
対象事業の範囲特定部門のみ、複数事業の一部など
資産・負債の選別必要な資産だけを残し、不要な負債を除外
従業員の処遇転籍対象者の個別選定
契約関係継続する契約と終了する契約の選別

例えば、飲食企業がカフェ部門のみを切り離して譲渡し、レストラン部門に経営資源を集中させるケースが代表例です。

また、不採算部門を売却することで、コア事業への集中や財務体質の改善も同時に実現できます。

このように、譲渡対象を事業単位で柔軟に調整できるため、資金調達や経営の立て直し、選択と集中の実現において、企業の戦略的な事業再編を効率的に進めることができます。

後継者問題を解決できる

事業譲渡のメリットの一つは、後継者問題を解決できることです。

後継者がいない場合、会社をたたむ「黒字廃業」という事態も起こりやすく、長年築き上げてきた事業や従業員・取引先との関係性が失われてしまいます。

そうしたリスクを避けるため、事業譲渡を活用する経営者が増えています。

たとえば、地域で長く愛されてきた飲食店が後継者不足に悩んだ際、事業譲渡でノウハウや顧客・従業員ごと引き継いでもらい、閉店せずに事業を存続させた事例があります。

上記により、従業員や取引先との関係も維持でき、地域社会にも貢献できます。

後継者問題を解決した実際の事例

創業者の高齢化により、後継者問題に直面した治験施設支援機関の「ファルマ」は、日本プロ経営者協会の支援を受けて事業承継に取り組みました。

複数の候補者が紹介される中で、創業者の山田氏はスキルや経営手腕だけでなく、人柄や会社のビジョン、従業員への配慮を重視して後継者を選定しました。

承継後は、業務のデジタル化や個別面談の導入などを進め、社内のコミュニケーションを活性化させたことで、業務効率が大幅に向上し、従業員の士気も高まりました。

この事例は、事業の継続と次なる成長を同時に実現した好例といえます。

後継者問題は多くの企業が抱える課題ですが、専門機関のサポートを受けながら慎重に進めることで、会社と従業員双方にとって理想的な承継が可能になることを示す実際の成功事例です。

日本プロ経営者協会事例:ファルマ社

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まずは、今抱えている悩みを

私たちにお聞かせください。

譲渡益を確保できる

事業譲渡を活用することで、売却益(譲渡益)を現金として受け取り、経営資源の整理や新たな投資に活用できます。

事業譲渡では、譲渡する事業の価値と簿価の差額が利益となり、その分が「譲渡益」として手元に残ります。

現金化により、新事業への投資や債務返済など、事業経営の選択肢が大きく広がります。

事業譲渡で得られる資金活用例

活用例内容
債務返済金融機関からの借入金返済
新規事業投資新たなビジネスチャンスへの投資
企業再編主力事業への資源集中

例えば、不採算部門を譲渡し現金を確保した企業では、その資金を使い主力事業に再投資した結果、経営が安定し事業成長に寄与したケースがあります。

また、後継者がいない事業を譲渡し、売却益を老後資金や新たな事業立ち上げ原資に充てることも可能です。

事業譲渡のデメリット

事業譲渡のデメリットが分かる画像
事業譲渡のデメリット
  • 譲渡益に課税される
  • 従業員や取引先ごとに同意が必要になる
  • 許認可は引き継げない場合が多い

上記は、事業譲渡の手続きを進める上で大きな負担やリスクとなりやすい部分です。

内容を理解していないと、想定以上にコストや時間がかかり、事業継続にも影響を及ぼす可能性があります。

それでは、事業譲渡におけるデメリットについて順に解説していきます。

譲渡益に課税される

事業譲渡によって得た利益(譲渡益)には法人税等が課されるため、税負担が大きくなります。

原則として事業の売却金額から譲渡資産の簿価を差し引いた「譲渡益」が発生した場合、その利益に対して実効税率(おおむね30%前後)が課税される仕組みです。

実効税率とは、法人所得に課税される、法人税、法人住民税、法人事業税の税率を合計したもの。

引用:実効税率|グロービス経営大学院

譲渡益の課税計算例は以下のとおりです。

譲渡対価:5,000万円
資産簿価:1,000万円
譲渡益:4,000万円(5,000万円-1,000万円)
税額:1,200万円(4,000万円×30%)

譲渡益が多ければ多いほど課税額も大きくなり、法人の他に個人株主へ還流する際はさらに追加課税される場合もあります。

従業員や取引先ごとに同意が必要になる

事業譲渡では契約の自動的な承継ができず、従業員や取引先との雇用・取引契約は一件ごとに再契約が必要です。

そのため、誰か一人でも同意しなければ、その従業員や取引先との契約は引き継げません。

同意を得るためには丁寧な説明や交渉が求められ、手間と時間、精神的な負担が大きくなります。

対象必要となる手続き
従業員一人ひとりから転籍や雇用条件変更への同意を取る
取引先既存契約について個別に説明した上で承継の同意を得る

同意が得られなければ、必要な人材や大切な取引先が引き継げない場合もあり、事業継続自体に影響が及ぶ恐れがあります。

このように事業譲渡では、従業員や取引先ごとに同意を得るべき負担が大きく、想定通りに進まないリスクもあります。

許認可は引き継げない場合が多い

事業譲渡では、会社が持つ営業許可・業務免許などの許認可を自動的に引き継ぐことはできません。(一部業種には承継を認める特例制度あり)

許認可は法人単位で発行されるため、事業譲渡によって会社が変わると、従前の許認可は無効になるのが原則す。

そのため、譲受側は新たに許認可を取得するか、または法律で認められた「承継のための承認・認可・届出」などの手続きを行う必要があります。

業種によっては事業を止めずに承継できる特例制度が用意されていますが、スケジュールや要件を満たさないと無許可状態になるリスクがあるため注意が必要です。

業種・許認可原則
宅地建物取引業(宅建業)新規取得が必要
運送業再取得ではなく国交省の認可手続
建設業事前認可を受けることで空白期間なく承継可能
飲食店・理美容・クリーニング等届出で承継可能
旅館業原則新規取得

飲食店・理美容・クリーニングなどの生活衛生関係営業では、2023年(令和5年)12月13日施行の制度改正により、事業譲渡でも「承認手続」または「届出」によって営業者の地位を承継できるようになりました。

事業譲渡では許認可の再取得が大きなハードルとなりやすいため、事前に行政との相談やスケジュール調整が重要です。

参考:事業譲渡に関する手続が整備されます|厚生労働省

課税・個別同意・許認可の再取得
など、事業譲渡には多くのハードルがあります。
会社分割と事業譲渡、どちらが自社に適しているか、まずはお気軽にご相談ください。

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事業譲渡と会社分割を選ぶ基準

会社分割と事業譲渡の選択は、「何をどのように引き継ぎたいか」によって決めるのが最適です。

スクロールできます
基準会社分割の場合事業譲渡の場合
承継範囲資産・負債・契約・従業員を包括承継個別に承継対象を選択
取引先や従業員一括でまとめて引き継げる個別に契約や同意が必要
対価株式や現金で支払いも可能原則として現金
コスト比較的コストを抑えやすい登録免許税や消費税が発生
向いているケース雇用維持や迅速な再編を重視資産選別や現金化を急ぐ場合

会社分割は、従業員や契約、資産をまとめて一括で移転したい場合や、現金を使わず株式等で対価としたい場合に有効です。

逆に、事業譲渡は、引き継ぐ資産や契約を個別に選びたい、簿外債務のリスクを抑えたい、または現金化を急ぎたい場合に適しています。

自社のニーズに合わせ、引き継ぐ資産や契約を個別に精査したい場合は事業譲渡を、従業員や取引先も含めて包括的に承継したい場合には会社分割を選択してください。

事業譲渡が向いているケース

事業譲渡は、譲渡範囲を限定したい場合や、現金で対価を受け取りたい場合に向いています。

個別承継のため引き継ぐ資産・負債を契約で明確にできることから、リスク管理を重視するケースで選ばれることが多い手法です。

以下では、売り手・買い手それぞれの状況に応じた事業譲渡の向いているケースを解説します。

売り手企業の状況

売り手企業が以下のような状況にある場合、事業譲渡が向いています。

  • 譲渡対価を現金で確実に受け取りたい
  • 不採算事業のみを切り離し、残った事業に集中したい
  • 法人格を残したまま一部事業のみを売却したい
  • 比較的小規模な事業を譲渡したい
  • 簿外債務などのリスクを買い手側に引き継がせたくないと考えている

例えば、複数事業を持つ中小企業のオーナーが、本業に経営資源を集中させるために、副次的な店舗事業のみを売却するケースが該当します。

譲渡益を引退後の生活資金や新規事業への投資に充てたいオーナーにとっても、事業譲渡は有効な選択肢です。

買い手企業の状況

買い手企業が以下のような状況にある場合、事業譲渡が向いています。

  • 必要な資産や契約のみを選別して取得したい
  • 簿外債務や偶発債務のリスクを遮断したい
  • 買収資金として現金を準備できる
  • 比較的小規模な事業を取得したい
  • 譲渡対象を柔軟に交渉して決めたい

例えば、特定のブランドやノウハウ、優秀な人材だけを取得したい買い手にとって、不要な負債や資産を排除できる事業譲渡は理想的なスキームです。

リスクを限定しながら事業拡大を進めたい場合に、事業譲渡は有効な選択肢になります。

会社分割が向いているケース

会社分割は、契約や許認可を包括的に引き継ぎたい場合や、組織再編税制の優遇措置を活用したい場合に向いています。

包括承継のため手続きが簡素化される反面、簿外債務リスクへの対応が必要となる点には注意が必要です。

以下では、売り手・買い手それぞれの状況に応じた会社分割の向いているケースを解説します。

売り手(分割会社)の状況

売り手企業が以下のような状況にある場合、会社分割が向いています。

  • 取引先との契約を一括で承継させたい
  • 多数の従業員の雇用を確実に維持したい
  • グループ内での組織再編を実施したい
  • 消費税や不動産取得税の負担を抑えたい
  • 適格組織再編による法人税の優遇措置を受けたい

例えば、何百社もの取引先を持つ事業を移転する場合、個別同意が不要な会社分割の方が効率的です。

グループ内再編で支配関係が継続するケースでは、適格分割により課税繰り延べの優遇措置を受けられるメリットも大きくなります。

買い手(承継会社)の状況

買い手企業が以下のような状況にある場合、会社分割が向いています。

  • 買収資金(現金)が十分に準備できない
  • 自社株式を対価として活用したい
  • 契約や一部許認可を包括的に引き継ぎたい
  • 大規模な事業を効率的に承継したい
  • 組織再編税制による税務メリットを享受したい

例えば、上場企業が自社株式を活用して事業を取得すれば、現金支出を抑えながら事業規模の拡大が実現できます。

ただし、簿外債務リスクへの対応として、徹底したデューデリジェンスを実施することが不可欠です。

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会社分割と事業譲渡の違いに関する疑問

会社分割と事業譲渡の違いに関するよくある質問に回答します。

会社分割と事業譲渡の違いに関する疑問
  • 会社分割と事業譲渡では消費税の扱いはどう異なりますか?
  • 包括承継と個別承継の違いは?
  • 事業譲受と事業譲渡の違いは?
  • 事業譲渡と事業承継の違いは?
  • 事業譲渡と事業分離との違いは?
  • 新設分割と事業譲渡の違いは?
  • 事業譲渡の失敗例は?

会社分割と事業譲渡では消費税の扱いはどう異なりますか?

会社分割は「組織再編行為」として消費税法上の不課税取引に該当するため、消費税が発生しません。

一方、事業譲渡は「資産の売買契約」に該当し、有償で行われる資産の譲渡として課税対象になります。

事業譲渡で課税資産1億円を移転すると、消費税は1,000万円発生します。

なお、土地や有価証券は非課税資産として計算から除外されます。

包括承継と個別承継の違いは?

包括承継とは権利義務を一括して引き継ぐ方法で、個別承継とは承継する資産や契約を個別に選んで引き継ぐ方法です。

項目包括承継個別承継
承継範囲権利義務を一括して自動承継​承継対象を個別に選択可能​
主な手法会社分割、合併、株式譲渡​事業譲渡​
契約の引継ぎ相手方の同意不要​相手方の同意が必要​
債務の扱い原則として承継する​原則として承継されない​

包括承継は事業全体を効率的に引き継ぎたい場合に適しており、個別承継は承継対象を厳選したい場合に有効です。

事業譲受と事業譲渡の違いは?

事業譲渡は売り手側の視点、事業譲受は買い手側の視点を表す用語です。

項目事業譲渡事業譲受
立場売り手側 ​買い手側 ​
行為事業を譲り渡す​事業を譲り受ける ​
対価の動き対価を受け取る​対価を支払う ​
主な税金法人税​消費税・不動産取得税 ​

売り手企業が「事業を譲り渡す」行為を事業譲渡と呼び、買い手企業が「事業を譲り受ける」行為を事業譲受と呼ぶのです。

つまり、同一の取引でありながら、立場によって呼び方が変わるだけの違いといえます。

事業譲渡と事業承継の違いは?

事業譲渡と事業承継は、関連する概念ですが意味が異なります。

事業承継は、現経営者が事業や会社を後継者に引き継ぐ「行為全体」を指す広い概念で、親族内承継・社内承継・第三者承継(M&A)などすべての承継方法を含みます。

一方、事業譲渡は事業承継を実現するための「具体的な手段」の一つであり、株式譲渡や会社分割と並んでM&Aの手法として位置づけられます。

例えば、後継者不在の経営者が第三者承継を選ぶ場合、その実現手段として事業譲渡を選択するという関係になります。

事業譲渡と事業分離との違いは?

事業分離は会計上の概念で、事業譲渡を含むより広い範囲を指します。

事業分離とは、会社が営む事業を分離して別会社に移すこと全般を指し、会社分割・事業譲渡・現物出資など複数のスキームが該当します。

つまり、事業譲渡は事業分離の一形態であり、両者は包含関係にあるといえます。

例えば、企業会計基準では事業分離会計という基準が定められており、会社分割や事業譲渡を行う際の会計処理を規定しています。

新設分割と事業譲渡の違いは?

新設分割と事業譲渡は、ともに事業を切り出す手法ですが、法律上の扱いや手続きが異なります。

新設分割は会社法上の組織再編行為であり、新設会社に対象事業を包括承継させる手法です。

一方、事業譲渡は売買契約による個別承継であり、譲渡対象を当事者間で柔軟に選択できる点が特徴になります。

例えば、新設分割では債権者保護手続きが必要ですが、事業譲渡では不要です。

また、対価も新設分割は新設会社の株式、事業譲渡は現金が原則となります。

事業譲渡の失敗例は?

事業譲渡の代表的な失敗例として、契約書の不備や同意取得の不足によるトラブルが挙げられます。

譲渡対象の特定が曖昧だったために、後から「この資産は対象だ」「対象ではない」と争いになるケースが少なくありません。

また、サプライヤーとの長期契約に「譲渡禁止条項」が含まれていたにもかかわらず、同意取得が不十分なまま実行し、契約解除を主張される事例も報告されています。

例えば、従業員への説明が不十分で大量退職が発生し、事業価値が大きく毀損するケースや、簿外債務が後から発覚するケースもあります。

失敗を防ぐには、弁護士やM&A仲介会社などの専門家のサポートが必要です。

後継者問題・事業承継は日本プロ経営者協会にご相談ください

会社分割や事業譲渡は、中小企業が抱える後継者問題や事業承継において重要な手法です。

しかし、実際には法務・税務・労務に関する複雑な調整が必要となり、経営判断を誤ると大きなリスクを抱える可能性もあります。

日本プロ経営者協会は、国内最大級のプロ経営者ネットワークを活用し、豊富な承継支援の実績を持つ組織です。

会社分割を活用したスムーズな再編、事業譲渡による資産選別、さらにはM&Aによる第三者承継まで、幅広い選択肢から最適なソリューションを提供いたします。

承継後の経営安定や成長戦略までワンストップで支援可能ですので、事業承継をお考えの経営者の方は、ぜひ日本プロ経営者協会へご相談ください。

JPCAは、プロ経営者の輩出とマッチングを通じて、企業の成長と持続的な発展を支援しています。

JPCAでは、経営人材の紹介やサーチファンド機能、経営コーチング、専門家ネットワークによる総合的な支援体制を整えており、後継者選定から資本の承継、経営改善までワンストップでご相談いただけます。

事業承継や後継者問題でお悩みの方は、ぜひ一度日本プロ経営者協会までご相談ください。

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日本プロ経営者協会の概要
名称一般社団法人日本プロ経営者協会
設立日2019年7月
活動内容プロ経営者によるセミナーの開催
企業への経営者の紹介
経営者に関する調査・研究
書籍の出版
代表理事堀江 大介
所在地東京都千代田区丸の内1-6-2
新丸の内センタービルディング21階
URLhttps://www.proceo.jp/

まとめ

会社分割と事業譲渡はいずれも事業再編や承継に役立つ手法ですが、それぞれメリット・デメリットがあります。

会社分割は包括承継によって契約や雇用をまとめて引き継げる一方、事業譲渡は柔軟に資産や契約を選別できる点が特徴です。

それぞれの特徴を正しく理解し、自社の目的に合った方法を検討することが大切です。

承継する範囲や資金調達、リスク回避の観点から、自社に適したスキームを選びましょう。

この記事を書いた人

小野俊法のアバター 小野俊法 日本プロ経営者協会 会長

慶應義塾大学経済学部卒業後、不動産ファンド運用会社にて約400億円規模の資産運用を担当。独立後、海外でファンドマネジメント事業などを立ち上げ、事業売却を経験。

その後、M&Aアドバイザリーおよびバイアウトファンドでの投資業務に従事し、中小企業投資・事業承継に延べ16年以上関与。これらの経験をもとにマラトンキャピタルパートナーズ㈱を設立し、事業承継支援に取り組んでいる。

投資の現場経験、M&Aアドバイザーや経営者との関わりをもとに、後継者問題や経営課題に関する情報発信・監修を行っている。

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