自社株の相続税が払えない場合は、事業承継税制の活用や延納・物納、金融機関からの借り入れなどを検討し、納税資金を確保することが重要です。
自社株は評価額が高くなりやすい一方、非上場の株式は簡単に売却・現金化できないため、相続税を支払うための資金が不足するケースがあります。
そのため、相続が発生してから対応するだけでなく、生前から株価や相続税額を把握し、納税資金の確保や事業承継税制の活用などの対策を進めておくことが大切です。
本記事では、自社株の相続税が払えなくなる主な原因と、払えない場合に検討できる対処法について解説します。
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自社株の相続税が払えなくなる原因

自社株の相続税が払えなくなる原因は主に以下の5つです。
- 生前の相続対策が十分にできていなかった
- 自社株の評価額が想定以上に高くなっていた
- 現金や預貯金など納税資金が不足している
- 相続財産の大半が自社株だった
- 相続税の納期限までに資金を準備できなかった
自社株の相続では、株式の評価額が高額になりやすい一方で、すぐに現金化することが難しいため、相続税の納税資金が不足するケースがあります。
特に、生前の対策が不十分だった場合や、相続財産の大半を自社株が占めている場合には注意が必要です。
次章で詳しく解説します。
生前の相続対策が十分にできていなかった
自社株の相続税が払えなくなる最大の原因は、経営者が元気なうちに相続対策を進めていなかったことにあります。
自社株の承継は時間をかけて計画的に取り組む必要があるにもかかわらず、日々の経営に追われて後回しにされがちだからです。
たとえば、先代経営者が突然亡くなり、後継者が何の準備もないまま多額の自社株を相続したケースでは、評価額の高さに驚き、納税資金の確保に奔走することになります。
生前贈与や事業承継税制といった制度を活用していれば、負担を大きく減らせたはずです。
しかし対策がゼロの状態では、相続発生後に選べる手段が限られてしまうのです。
自社株の評価額が想定以上に高くなっていた
自社株の評価額が想定以上に高くなっていたことも、相続税を払えなくなる原因の一つです。
非上場株式は市場で売買される価格がないため、会社の利益や純資産、配当などをもとに評価額が算定されます。
そのため、業績が好調だったり、長年の内部留保によって純資産が増えていたりすると、経営者が考えていた以上に自社株の評価額が高くなることがあります。
たとえば、「非上場企業だから株式の価値はそれほど高くない」と考えていても、実際に相続税評価を行った結果、自社株だけで数千万円から数億円規模の評価額になるケースもあります。
評価額が高くなれば、その分だけ相続財産の総額も増え、後継者が負担する相続税も大きくなります。
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現金や預貯金など納税資金が不足している
納税に必要な現金や預貯金が不足している状況も、相続税を支払えなくなる原因となります。
相続税は原則として現金で一括納付する必要があるにもかかわらず、事業資金や生活費として預貯金を使ってしまい、納税資金として確保していないケースが少なくないからです。
たとえば、会社の運転資金や設備投資に個人の預貯金を充ててきた経営者が、いざ相続が発生した際に手元資金がほとんど残っていなかったというケースがあります。
納税資金は自社株の評価額とは切り離して、日頃から計画的に積み立てておく必要があります。
相続財産の大半が自社株だった
自社株の相続税が払えなくなるのは、相続財産の大半を自社株が占めているケースに多く見られます。
中小企業のオーナー経営者は、個人資産の多くを自社株という形で保有していることが多く、財産の構造そのものが現金を生みにくいからです。
たとえば、株式を売れば現金化はできるものの、第三者に売却すると経営権が他人に移ってしまうため、後継者は簡単に処分できません。
その結果、「資産はあるのに納税資金だけがない」という状態に陥り、対策をしていても資金を用意しづらい問題が生じます。
財産が自社株に集中している場合は、経営権を守りながら納税資金を確保する方法を、早い段階で検討しておく必要があります。
相続税の納期限までに資金を準備できなかった
相続税の納期限までに必要な資金を準備できなかったことも、自社株の相続税が払えなくなる原因の一つです。
相続税の申告・納付期限は、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。
特に、自社株はすぐに売却して現金化しにくいため、相続が発生してから金融機関への融資相談や資産売却を始めても、納期限に間に合わないケースがあります。
納期限を過ぎると、延滞税などが課される場合もあるため注意が必要です。
相続発生後に慌てないためにも、生前から相続税額を試算し、生命保険や預貯金、資金調達などを含めた納税資金の確保方法を検討しておきましょう。
自社株の相続税が払えない場合の対処法

万が一、自社株の相続税が手持ちの現金で払えない状況に陥ったとしても、諦める必要はありません。
ここでは、納税資金が不足した場合に検討すべき対処法を解説します。
延納制度を利用して分割で納税する
手元に十分な現金がない場合、相続税を分割払いにする「延納制度」の利用を検討すべきです。
相続税は原則として現金一括納付ですが、一定の要件を満たすことで、長期間にわたる分割払いが認められるからです。
- 相続税額が10万円を超えていること
- 現金で一括納付することが困難な理由があること
- 申告期限までに「延納申請書」を税務署に提出すること
- 担保を提供すること(※一定の金額や期間以下の場合は不要)
ただし、延納期間中は利子税が上乗せされるため、最終的に支払う総額は一括納付よりも増えてしまう点には注意が必要です。
それでも、手元資金が尽きて事業継続が困難になる事態を防ぐための有効な選択肢となります。
物納制度を利用する
延納を利用してもなお支払いが困難な場合には、「物納制度」を活用して現物で納税する方法があります。
具体的には、延納によっても納付が難しい金額を限度として、以下のような財産を物納に充てることができます。
- 国債や地方債
- 土地や建物などの不動産、船舶
- 上場株式や非上場株式(自社株)
ただし、物納には厳しい条件があり、抵当権が設定されている不動産や権利関係に争いがある財産は対象として認められません。
自社株を物納することも可能ですが、会社に国という外部株主が介入することになるため、経営への影響を慎重に判断する必要があります。
参考:相続税の物納|国税庁
個人資産を売却して納税資金を確保する
自社株を手放さずに納税するためには、後継者自身の個人資産を売却して資金を確保する方法が有効です。
事業承継において最も重要なのは会社の経営権を維持することであり、そのためには自社株以外の資産を現金化する方が安全だからです。
たとえば、後継者が個人で所有している以下のような資産の売却を検討します。
- 使っていない遊休土地や収益性の低い不動産
- 保有している上場株式や投資信託
- 趣味で収集した価値の高い美術品や車
上記の資産を換金して相続税の支払いに充てれば、会社の議決権を減らすことなく事態を乗り切ることができます。
会社に自社株を買い取ってもらう(金庫株)
後継者が相続した自社株の一部を会社に買い取ってもらう手法は、納税資金の確保に非常に効果的です。
この方法は一般的に「金庫株」と呼ばれ、後継者個人の手元に会社の資金を合法的に移転させることができるからです。
| 項目 | 内容 |
| 主なメリット | 会社の資金を使って後継者の納税資金を用意できる |
|---|---|
| 税制上の優遇 | 相続から一定期間内であれば、譲渡所得として約20%の低い税率が適用される特例がある |
| 経営権の維持 | 株式が会社に吸収されるため、第三者に議決権が渡るリスクがない |
| 注意点 | 会社側に株式を買い取るだけの十分な資金と「分配可能額」が必要 |
このように、金庫株を活用すれば、外部に経営権を分散させることなく、納税資金を確保することが可能です。
自社株を第三者へ売却する(M&A・株式譲渡)
後継者が納税資金を用意できず、事業の継続も難しい場合は、自社株を第三者へ売却するM&Aという選択肢があります。
自社株を他社に売却すれば、まとまった現金を得て相続税を払えるうえに、事業そのものを存続させながら経営を引き継いでもらえるからです。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 多額の現金を確保でき雇用も維持しやすい | 経営権を手放す必要があり、買い手探しも必要 |
たとえば、自社の事業に共感してくれる買い手企業を選べば、会社の将来を託しながら円満に承継を進められます。

金融機関から資金調達する
不足している納税資金を、銀行や信用金庫などの金融機関から借り入れる方法も有効な手段です。
一時的に負債を抱えることにはなりますが、大切な自社株や不動産を手放すことなく納税を済ませられるからです。
最近では、多くの金融機関が「相続税納税資金向けローン」などの専用商品を提供しています。
- 遺産として引き継いだ不動産や会社の事業資産を担保にできる場合がある
- 延納制度の利子税割合と、銀行のローン金利を比較して有利な方を選べる
- 審査に通れば、一括で現金を用意でき、申告期限に間に合わせることができる
ただし、当然ながら利息の負担が発生するため、今後の返済計画をしっかりと立てておく必要があります。
相続放棄を検討する
自社株の負担があまりにも大きく、ほかの手段でも対応できない場合は、相続放棄という最終手段もあります。
相続放棄をすれば財産を一切引き継がないことになるため、自社株にかかる相続税も発生しないからです。
たとえば、会社の業績が悪く自社株の価値も乏しいうえに、多額の負債まで抱えているケースでは、後継者を過大な負担から守れます。
判断にあたっては、次の点を押さえておきましょう。
- 期限:相続開始を知ってから3か月以内に手続きが必要
- 注意点:預貯金や不動産などプラスの財産もすべて相続できなくなる
いったん放棄すると原則として撤回できないため、慎重な判断が求められます。
自社株の相続税負担を軽減する方法

相続税が払えなくなる事態を防ぐためには、相続が発生する前から計画的に税負担を減らす対策を講じておくことが重要です。
ここでは、生前に実施できる自社株の負担軽減策について解説します。
事業承継税制を活用する
自社株の相続における最大の解決策とも言えるのが、「事業承継税制」を活用することです。
この制度を利用すれば、一定の要件を満たすことで、自社株にかかる相続税や贈与税の納付が猶予、あるいは免除されるからです。
| 項目 | 内容 |
| 対象となる株式数 | 全株式(上限なし) |
|---|---|
| 納税猶予の割合 | 贈与税・相続税ともに100% |
| 雇用の維持要件 | 実質的に撤廃(要件を下回っても理由があれば継続可能) |
| 特例承継計画の提出期限 | 2027年(令和9年)9月30日まで延長 |
このように、特例措置を利用すれば税負担を実質ゼロにできるため、後継者にとって非常に強力な味方となります。
ただし、適用のための手続きが複雑であり、期限を過ぎると猶予が取り消されるリスクもあるため、実績のある専門家への依頼が必須です。
自社株の評価額を引き下げる対策を行う
相続税そのものを抑えるには、自社株の評価額を計画的に引き下げる対策が有効です。
非上場株式の評価額は会社の利益・配当・純資産などをもとに計算されるため、これらの要素をコントロールすれば株価を下げられるからです。
- 役員退職金を支給して利益や純資産を圧縮する
- 生命保険を活用して利益を平準化する
- 持株会社や資産管理会社を設立して株式を移転する
評価方法は会社の規模や業種によって異なり、判断も複雑なため、実行前に税理士へ相談することが大切です。

生前贈与で相続財産を分散する
将来の相続財産を減らすために、自社株を少しずつ生前贈与して分散させる方法も効果的です。
時間をかけて後継者に株式を移転しておくことで、相続発生時に残る財産が減り、結果として相続税を抑えることができるからです。
生前贈与の主な手法としては、以下の2つの方式があります。
| 制度 | 概要 |
|---|---|
| 暦年課税制度 | 年間110万円の基礎控除枠を利用して、毎年少しずつ無税で贈与する方法 |
| 相続時精算課税制度 | 2,500万円までの特別控除枠を利用し、まとまった株式を一気に贈与する方法 |
特に相続時精算課税制度は、贈与時点の株価を基準として将来の相続税を計算する仕組みであるため、今後株価の上昇が見込まれる場合には、将来的な税負担の軽減につながる有効な選択肢となります。
ただし、2024年の税制改正により、暦年贈与の持ち戻し期間が3年から7年へと段階的に延長されるなど、ルールが複雑化しています。
生命保険を活用して納税資金を準備する
納税資金を確実に用意しておきたい場合は、生命保険の活用が非常に有効です。
死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠があり、現預金をそのまま残すより効率的に納税資金を準備できるからです。
- 非課税枠の分だけ相続税の課税対象を減らせる
- 受取人の口座へ直接支払われ、すぐ納税資金にあてられる
- 遺産分割協議の結果を待たずに現金を確保できる
たとえば、法定相続人が3人であれば1,500万円までが非課税となり、その範囲の保険金には相続税がかかりません。
経営者が自身を被保険者として保険に加入しておけば、後継者が相続税で困るリスクを大きく減らせます。
遺言書・事業承継計画を整備しておく
自社株をめぐるトラブルを防ぐには、遺言書と事業承継計画をあらかじめ整えておくことが欠かせません。
自社株を誰にどれだけ引き継がせるかを明確にしておかないと、遺産分割協議がまとまらず、経営権が分散して会社経営が不安定になるおそれがあるからです。
- 自社株を後継者に集約させ、経営権を安定させられる
- ほかの相続人への配慮により、遺留分をめぐる争いを防げる
- 納税資金の確保方法を事前に検討できる
たとえば、遺言書で自社株を後継者に集約しつつ、ほかの相続人には預貯金や役員退職金などを分けるように配慮すれば、家族間の対立も起きにくくなります。
円滑な事業承継のためにも、経営者が元気なうちから計画を文書として残しておくことが大切です。

自社株の相続税に関する質問集
ここからは、自社株の相続税について多くの方が抱く疑問を、Q&A形式でわかりやすくまとめます。
自社株を相続すると税金はどうなる?
自社株を相続すると、その評価額に応じて相続税が課税されます。
自社株も預貯金や不動産と同じく相続財産の一部として扱われ、遺産の総額が基礎控除額を超えた部分に相続税がかかる仕組みだからです。
基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算され、これを超える財産に課税されます。
非上場の自社株は評価額が高くなりやすいため、財産の大半が自社株というオーナー経営者の相続では、多額の相続税が発生するケースも珍しくありません。
株の相続税は二重課税になるのですか?
相続した株を後日売却すると、相続税と所得税の両方がかかりますが、負担を和らげる特例が用意されています。
相続時には財産に対して相続税がかかり、売却時にはその売却益に対して所得税がかかるため、課税の根拠が異なる別々の税金として扱われるからです。
取得費が増えればその分だけ売却益(譲渡所得)が圧縮され、所得税の負担を抑えられる仕組みです。
自社株の相続の手続き方法は?
自社株の相続手続きは、遺産分割協議から株主名簿の名義書換までの流れで進めます。
非上場株式は上場株式のように証券会社を通さず、その株式を発行している会社で名義変更の手続きを行うのが原則だからです。
- 遺言書または遺産分割協議で株式を相続する人を決める
- 戸籍謄本や遺産分割協議書など、相続を証明する書類を準備する
- 発行会社へ株主名簿の名義書換を請求する
名義書換が完了しないと、議決権の行使や配当金の受け取りができない点に注意しましょう。
自社株の相続税を計算する方法は?
自社株の相続税は、まず株式の評価額を算定し、それを含めた相続財産全体をもとに計算します。
主な評価方法は、以下の3つです。
| 評価方法 | 概要 | 傾向 |
|---|---|---|
| 類似業種比準方式 | 同業種の上場企業と、利益・配当・純資産を比較して算定 | 株価が低く出やすい |
| 純資産価額方式 | 会社の資産から負債を差し引いた純資産をもとに算定 | 株価が高く出やすい |
| 併用方式 | 上記2つを会社規模に応じた割合でブレンドして算定 | 会社規模で割合が変動 |
会社の規模(大会社・中会社・小会社)や、相続人が同族株主かどうかによって使う方式が変わります。
計算は複雑なため、正確な税額を知りたい場合は税理士に依頼するのが確実です。
自社株の相続税はいつまでに支払う必要がありますか?
自社株の相続税は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に申告と納付を行う必要があります。
相続税は現金による一括納付が原則で、この納期限は自社株であっても他の財産と変わらないからです。
たとえば、被相続人が1月10日に亡くなった場合、その年の11月10日が申告・納付の期限となります。
期限を過ぎると延滞税や無申告加算税といったペナルティが加わり、負担がさらに増えてしまいます。
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| 日本プロ経営者協会の概要 | |
|---|---|
| 名称 | 一般社団法人日本プロ経営者協会 |
| 設立日 | 2019年7月 |
| 活動内容 | プロ経営者によるセミナーの開催 企業への経営者の紹介 経営者に関する調査・研究 書籍の出版 |
| 代表理事 | 堀江 大介 |
| 所在地 | 東京都千代田区丸の内1-6-2 新丸の内センタービルディング21階 |
| URL | https://www.proceo.jp/ |
まとめ
自社株の相続対策を行う際は、税金が払えなくなる原因と万が一の対処法を理解し、具体的な負担軽減策を参考にして、計画的に準備を進めることが大切です。
今回紹介したポイントを押さえ、早めに納税資金の確保や自社株の評価額対策を行うことで、後継者に負担をかけないスムーズな事業承継を実現させましょう。
