IRR(内部収益率)の計算方法は?判断の目安や注意点を解説

IRR(内部収益率)の計算方法は?判断の目安や注意点を解説

IRR(内部収益率)は、将来のキャッシュフローの現在価値の合計が初期投資額と等しくなる割引率のことで、下記の計算式で表されます。

0 = Σ[CFₜ ÷(1+r)ᵗ]-初期投資額
※CFₜ:t期目に得られるキャッシュフロー r:IRR(内部収益率) t:投資開始からの期間 Σ:各期間の数値を合計する記号

IRRは、投資によって得られる収益性を割合で示す指標です。お金の時間的な価値を反映できるため、不動産投資やM&Aなど、投資額や回収時期が異なる案件を比較する際に活用されています。

ただし、IRRが高ければ必ず投資価値があるとは限りません。

投資判断を行う際は、利益の金額を示すNPVや、キャッシュフローの見込み、投資規模、リスクなどもあわせて確認することが重要です。

本記事では、IRRの基本的な計算方法やExcel・電卓を使った求め方、投資判断における目安、活用する際の注意点についてわかりやすく解説します。

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目次

IRR(内部収益率)とは

IRR(内部収益率)とは

IRR(内部収益率)とは、投資の収益性を「年利何%で運用するのと同じか」という割合で示す指標です。

お金の時間的価値を考慮して算出できるため、不動産投資やM&A、ファンドなど幅広い場面で活用されています。

まずはIRRの意味や、NPV・利回りといった似た指標との違いを整理しながら、基本的な考え方を理解していきましょう。

IRR(内部収益率)の意味

IRR(内部収益率)とは、投資で将来得られるキャッシュフローの現在価値と、初期投資額が等しくなる割引率のことをいいます。

「Internal Rate of Return」の頭文字をとった略称で、日本語では内部収益率や内部利益率と訳されます。

なぜこの指標が重要かというと、お金の価値は時間の経過とともに変動するからです。

たとえば今の100万円と1年後の100万円は、同じ金額でも価値が異なります。

IRRは、この時間的価値を織り込んだうえで投資の収益率を数値化できる点に特徴があります。

100万円を投資して1年後に105万円が得られる場合、IRRは5%と計算されます。この5%は、その投資が年利5%で運用されているのと同じ効率であることを意味します。

つまりIRRは、投資が「どれだけ効率よくお金を増やせるか」を一つの割合で表してくれる指標なのです。

IRRがM&Aの投資判断で重要視される理由

IRRがM&Aの投資判断で重要視されるのは、投資の魅力度をシンプルな数値で示せるからです。

「IRR15%」と言えば「年利15%相当のリターン」と直感的に伝わるため、専門家でない経営者や取締役会にも理解されやすい利点があります。

買収価格や買収後に得られる収益、回収のタイミングは案件によってバラバラです。

IRRを使えば、こうした条件の違う案件でも同じ土俵で収益性を比較できます。

たとえば、1億円で企業を買収し、年間1,500万円のキャッシュフローが5年間続き、5年後に1.2億円で売却するケースを想定します。

このときIRRは約17.8%と算出され、この数値が自社の要求する収益率を上回っていれば投資価値があると判断できます。

このようにIRRは、限られた情報の中で的確な投資判断を下すためのツールとなるため、M&Aの現場で重視されているのです。

IRRとWACCの違い

IRRとWACCの違いは、IRRが「投資から得られる収益率」を示すのに対し、WACCは「資金調達にかかるコスト」を示す点にあります。

項目IRR(内部収益率)WACC(加重平均資本コスト)
意味投資で得られる収益率資金調達にかかるコスト
立場投資家・運用サイド企業・調達サイド
使い方投資判断の対象となる数値判断の基準(ハードルレート)

たとえば、WACCが8%の企業が投資を検討するとします。

このときIRRが8%を上回れば、調達コストを超える収益が見込めるため投資価値があると判断できます。

つまりIRRとWACCは、収益とコストを比較して投資の可否を決めるための対になる指標なのです。

IRRとNPVの違い

IRRとNPVの違いは、IRRが投資効率を「%(割合)」で示すのに対し、NPVは利益を「金額(円)」で示す点にあります。

NPV(正味現在価値)は「結局いくら儲かるのか」という利益の絶対額を、IRRは「年利何%で運用するのと同じか」という効率性を示します。

指標示すもの単位得意なこと
IRR投資の効率性規模の違う案件の比較
NPV利益の絶対額投資規模を含めた評価

具体例として、IRRだけを見ると小さな案件が有利に見えても、NPVで見ると大きな案件のほうが利益額は大きい、というケースがよくあります。

そのため、どちらか一方に頼るのではなく、両方を組み合わせて多角的に評価することが、より良い投資判断につながります。

IRRと利回りの違い

IRRと利回りの違いは、投資期間全体のキャッシュフローと、お金の時間的価値を考慮するかどうかにあります。

一般的な利回りは、投資額に対して1年間でどれくらいの収益を得られるかを示す指標です。

例えば、1,000万円の物件から年間60万円の家賃収入を得られる場合、表面利回りは6%となります。

一方、IRRは毎年の収益だけでなく、収益を得る時期や最終的な売却額まで含めて、投資期間全体の収益性を算出します。

例えば、最終的な回収額が同じ投資であっても、早い段階で多くの収益を得られる案件のほうが、後半にまとめて収益を得る案件よりIRRは高くなります。

早く受け取ったお金ほど、再投資などに活用できる期間が長く、現在の価値が高いと考えるためです。

このように、利回りは年間収益を簡単に把握するのに適しており、IRRは購入から運用、売却までを含めた投資全体の収益性を比較するのに適しています。

IRRの割引率とは

割引率とは、将来受け取るお金を現在の価値に換算するときに使う割合のことです。

将来の金額を割引率で割り戻すことで、現在価値を求めることができます。

現在価値を求める計算式は下記のとおりです。

現在価値 = 将来受け取る金額 ÷(1+割引率)ⁿ
※nは、将来の金額を受け取るまでの年数

具体例として、1年後に受け取る103万円を割引率3%で割り戻すと、現在価値は100万円になります。

このとき使った3%が割引率にあたります。

IRRは、割引率を少しずつ変えながら、NPV(正味現在価値)がちょうどゼロになる値を探して求めます。

そのため、割引率と現在価値の意味がわかれば、IRRの考え方も自然と理解できます。

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IRRの計算方法

IRRの計算方法

IRRの計算方法は、初期投資額と各年のキャッシュフローがわかれば求められます。

ただし計算式そのものは複雑で、手計算だけで正確に算出するのは難しいのが実情です。

ここでは、IRRの基本的な計算式から計算手順、具体的な計算例までを順に見ていきます。

IRRを求める基本的な計算式

IRRを求める基本的な計算式は、将来キャッシュフローの現在価値の合計が初期投資額と等しくなる割引率を探すものです。

言い換えると、NPVがゼロになる割引率rがIRRとなります。

IRRの定義が「投資額と将来キャッシュフローの現在価値が均衡する割引率」だからです。

計算式は下記のように表されます。

  • 0 = Σ CF_t /(1 + r)^t - 初期投資額
  • CF_t:t期目のキャッシュフロー、r:IRR、t:年数、Σ:合計

この式を日本語で表すと、「初期投資額」と「各年に回収したキャッシュフローの割引現在価値の合計」がちょうど釣り合う状態を意味します。

つまり、投資で出ていったお金と、将来入ってくるお金の現在価値がぴったり一致する利率を探しているわけです。

このrがIRRであり、その投資が内部的に持つ真の収益力を表す数値となります。

IRRの計算手順

IRRの計算手順は、キャッシュフローを整理し、NPVがゼロになる割引率を探す流れで進めます。

手計算では、割引率を少しずつ変えながら近づけていく「試行錯誤法」を用いるのが一般的です。

IRRの計算手順
  1. 初期投資額と各年のキャッシュフローを時系列で整理する
  2. 適当な割引率を仮に設定してNPVを計算する
  3. NPVがプラスなら割引率を上げ、マイナスなら下げる
  4. NPVがゼロに近づくまで割引率の調整を繰り返す
  5. NPVがゼロになったときの割引率をIRRとする

まず割引率10%で計算し、NPVがプラスなら次は12%で試す、というように調整していきます。

この試行錯誤を繰り返すことでIRRの近似値が得られますが、手間がかかるため、実務ではエクセルの関数を使うのが現実的です。

IRRの具体的な計算例

IRRの具体的な計算例を見ると、数値がどのように算出されるのかが実感できます。

ここでは、初期投資に対して数年間キャッシュフローが発生するシンプルなケースで確認します。

下記の条件で計算してみます。

キャッシュフロー
初期投資(0年目)-100万円
1年目+30万円
2年目+40万円
3年目+60万円

IRRを求めるには、各年のキャッシュフローの現在価値の合計が、初期投資額の100万円とちょうど等しくなる割引率を探します。

まずは割引率を仮に決めて、現在価値の合計がいくらになるかを試していきます。

割引率10%で計算すると、現在価値の合計は約105.4万円となり、100万円を上回ります。
合計が投資額より大きいということは、実際のIRRは10%より高いと判断できます。
次に割引率15%で計算すると、現在価値の合計は約95.8万円となり、今度は100万円を下回ります。
このことから、IRRは10%と15%の間にあるとわかります。

この調整を繰り返して割引率を12.71%まで近づけると、各年の現在価値は下記のようになります。

計算式現在価値
1年目30万円 ÷(1+0.1271)約26.6万円
2年目40万円 ÷(1+0.1271)²約31.5万円
3年目60万円 ÷(1+0.1271)³約42.0万円
合計約100万円

3年分の現在価値を合計すると約100万円となり、初期投資額とぴったり一致します。

このとき使った割引率12.71%が、この投資のIRRです。

言い換えると、NPV(正味現在価値)がゼロになる割引率が求まったことになります。

この約12.7%という数値は、この投資が年利12.7%で運用されているのと同じ効率であることを示しています。

このように、割引率を少しずつ動かしながら現在価値の合計が投資額と釣り合う点を探せば、IRRを求められます。

初期投資額と将来のキャッシュフローさえわかれば、IRRという一つの数値で投資の収益性を把握できるのです。

IRRを手計算する際の注意点

IRRを手計算する際は、あくまで近似値しか得られない点に注意が必要です。

正確な数値を求めようとすると、膨大な反復計算が必要になります。

IRRを手計算する際の注意点
  • 割引率を細かく変えても、ぴったりゼロになる値は見つけにくい
  • 期間が長い案件ほど計算量が増え、誤差も生じやすい
  • キャッシュフローの符号が途中で変わると、解が複数出ることがある

5年や10年にわたる投資では、割引率を1%刻みで試すだけでも大変な作業量になります。

そのため、手計算はIRRの考え方を理解する練習と割り切り、実際の算出にはエクセルなどのツールを使うのがおすすめです。

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エクセルでIRRを計算する方法

エクセルでIRRを計算する方法を覚えれば、複雑な計算式を意識せずに正確な数値を求められます。

初期投資額と各年のキャッシュフローを入力し、関数を使うだけで自動的に算出できます。

ここでは、基本のIRR関数の使い方、XIRR関数との違い、よくあるエラーの対処法までを解説します。

IRR関数の使い方

IRR関数の使い方は非常にシンプルで、キャッシュフローの範囲を指定するだけでIRRを算出できます。

複雑な計算式を自分で組む必要はありません。

その理由は、エクセルが内部で反復計算を自動的に行ってくれるからです。

IRR関数の使い方の手順
  1. セルに初期投資額をマイナスの数値で入力する
  2. その下に1年目、2年目と各年の収益をプラスで入力する
  3. 空いているセルに「=IRR(範囲, 推定値)」と入力する
  4. 推定値は省略可能で、通常は省略しても計算できる

具体例として、A2セルに「-1000000」、A3に「300000」、A4に「400000」、A5に「600000」と入力し、別のセルに「=IRR(A2:A5)」と入力します。

すると約12.7%という結果が表示されます。

戻り値は小数で返るため、セルの表示形式をパーセントに設定すると見やすくなります。

参考:IRR 関数 | Microsoft Support

XIRR関数との違いと使い分け

XIRR関数は、キャッシュフローが不規則な間隔で発生する場合に使う関数です。

日付を指定できるため、通常のIRR関数より正確な収益率を計算できます。

関数前提構文
IRR関数一定間隔(毎年末など)=IRR(範囲, 推定値)
XIRR関数不規則な日付でもOK=XIRR(値, 日付, 推定値)

具体例として、「8か月後に一部売却」「1年3か月後に配当」といった不規則なスケジュールの投資では、XIRR関数が適しています。

不動産投資やファンドの評価など、日付単位で正確に把握したい場面ではXIRR関数の使用がスタンダードです。

一方で、毎年末に一定額が発生する単純なケースなら、IRR関数で十分に対応できます。

エクセルで計算する際によくあるエラーと対処法

エクセルでIRRを計算する際によく出るのが「#NUM!」エラーです。

これは、エクセルが有効なIRRを見つけられないときに表示されます。

原因対処法
プラスとマイナスの値が混在していない初期投資をマイナス、収益をプラスで入力する
計算が収束しない推定値に0.1や-0.05など近い値を指定する
エラー値や誤った数値が含まれている指定範囲と入力した数値に誤りがないか確認する
数値の桁や符号を取り違えている入力データを時系列順に見直す

すべての数値がプラスだとIRRは計算できないため、必ず最初の投資額をマイナスにする必要があります。

IRR関数は反復計算を最大20回行い、収束しない場合にエラーを返す仕組みです。

エラーが出たら、まず符号と推定値を確認するのが解決への近道となります。

参考:エラー値 #NUM! を修正する方法 | Microsoft Support

電卓でIRRを計算する方法

電卓だけでIRRを正確に計算するのは、現実的には難しいのが結論です。

簡単な近似値を求める程度であれば可能ですが、正確な数値を出すにはエクセルの利用が推奨されます。

その理由は、IRRの計算式が反復計算を前提としており、割引率を何度も変えて試す必要があるからです。

電卓で計算する場合は、下記の手順を繰り返すことになります。

  1. 適当な割引率を設定し、各年のキャッシュフローの現在価値を計算する
  2. その合計と初期投資額を比較してNPVを求める
  3. NPVがゼロに近づくよう割引率を変えて再計算する

割引率を5%、7%、10%と少しずつ変えながらNPVがゼロになる点を探していきます。

この作業を手作業で行うと時間がかかり、精度にも限界があります。

そのため電卓は考え方を確認する用途にとどめ、実際の算出にはエクセルやGoogleスプレッドシートの関数を使うのが効率的です。

IRRの見方と判断基準

IRRの見方と判断基準を理解しておくと、数値を投資判断に正しく活かせます。

単に数値が高いか低いかだけで判断するのは危険です。

ここでは、IRRを評価する際の基準となる資本コスト(WACC)との比較方法や、投資判断における目安を解説します。

IRRは高いほど良いとは限らない

IRRは高いほど良いように見えますが、必ずしもそうとは限らない点に注意が必要です。

その理由は、IRRが投資規模やリスクの大きさを反映しない指標だからです。

自己資金を基準に算出するエクイティIRRは、借入比率を高めるほど高くなる場合があります。

  • IRRが高くても自己資金が少なく、リスクが大きい場合がある
  • 途中で得た収益を同じ利回りで再投資できる前提のため、実態より高く見えることがある
  • 数値だけを見て飛びつくと、思わぬリスクを抱える可能性がある

フルローンに近い借り入れで購入した物件は、エクイティIRRが高く算出されやすいものの、返済リスクを伴います。

そのため、IRRの数値だけにこだわるのではなく、投資全体の収益率やリスクもあわせて把握することが大切です。

数値の高さと安全性はイコールではないと理解しておきましょう。

資本コスト(WACC)との比較方法

IRRの評価は、資本コスト(WACC)との比較で行うのが基本的な方法です。

IRRがWACCを上回っていれば、投資価値があると判断できます。

その理由は、WACCが「資金調達にかかる最低限のコスト」を示しているからです。

このコストを超える収益が見込めなければ、投資する意味がありません。

  • IRR > ハードルレート:投資を実行する判断材料となる
  • IRR = ハードルレート:要求収益率と同等
  • IRR < ハードルレート:投資を見送る判断材料となる

WACCが8%の企業であれば、IRR8%の案件ではプラスの価値を生みません。

実務では、WACCに案件固有のリスクを考慮した上乗せ幅を加え、ハードルレートを設定する場合があります。

このハードルレートを上回るIRRの案件だけを選ぶことで、収益性の低い投資を効率的に除外できます。

投資判断におけるIRRの目安

投資判断におけるIRRの目安は、案件の種類やリスクによって異なります。

「何%以上なら良い」という一律の基準は存在しないのが実情です。

業種や投資目的、市場環境によって求められる収益率が変わるからです。

判断の際は、下記のような視点で総合的に考えます。

  • 自社のWACCやハードルレートを上回っているか
  • 他の投資案件と比べて魅力的な数値か
  • 投資額や回収期間、リスクとのバランスは取れているか

具体例として、ある企業が6%のハードルレートを設定していれば、IRRが6%未満の案件は候補から外れます。

一方で、不動産投資では「IRRが○%以上でなければ買わない」という明確な基準はありません。

目安はあくまで参考とし、「早期に利益を得られる投資は収益性が高い」というIRRの本質を理解したうえで判断することが重要です。

IRR(内部収益率)を活用するメリット

IRR(内部収益率)を活用するメリット

IRR(内部収益率)を活用するメリットは、投資の効率性を一つの数値で客観的に把握できる点にあります。

条件の異なる案件を同じ基準で比較でき、意思決定の助けになります。

ここでは、投資案件を比較しやすい点や時間価値を考慮できる点など、IRRの主な利点を整理します。

投資案件を比較しやすい

IRRの大きなメリットは、条件の異なる投資案件を同じ土俵で比較しやすい点です。

投資額や期間がバラバラでも、収益率という共通のものさしで並べられます。

不動産・株式・債券・ファンドなど、性質の違う金融商品でも比較が可能になります。

  • 投資対象の異なる商品を比較したいとき
  • 投資期間が異なる商品を比較したいとき
  • 収益額や回収時期が異なる投資案件を比較したいとき
    ※キャッシュフローの発生日が不規則な場合はXIRRを使用します。

具体例として、初期投資額が1億円の案件と1,000万円の案件でも、IRRが高いほうが効率の良い投資だと判断できます。

このように、規模や期間が異なる案件でも、共通の収益率を用いて比較しやすくなります。ただし、IRRでは投資規模を評価できないため、NPVなどとの併用が必要です。

時間価値を考慮して評価できる

IRRのメリットの一つは、お金の時間価値を考慮して投資を評価できる点です。

収益がいつ発生するかまで反映して収益性を測れます。

  • 投資期間全体のキャッシュフローを現在価値で測定できる
  • 売却時のキャッシュフローも含めて総合的に評価できる
  • 期間中のキャッシュフローの変動も考慮できる

同じ1億円を5年で1億5,000万円回収する2つのプランがあった場合、早く多く回収できるプランのほうがIRRは高くなります。

合計金額が同じでも、回収のタイミングによって評価が変わるわけです。

表面利回りでは見えない「時間の価値」を可視化できる点が、IRRならではの強みといえます。

意思決定の基準として活用しやすい

IRRは、投資の意思決定の基準として活用しやすい指標です。

一つの数値で投資の収益性を把握でき、社内での説明にも使いやすい特徴があります。

  • 「IRR15%」のように直感的に伝わる
  • 資本コストとの比較により、投資の可否を判断する材料にできる
  • エクセルを使えば誰でも簡単に算出できる

取締役会でハードルレートを上回るIRRの案件だけを検討対象とすれば、収益性の低い案件を効率的に除外できます。

数値が明確なため、経営層への説明もスムーズに進みます。

このように、客観的な判断材料として使える点が、IRRが実務で重宝される理由です。

IRR(内部収益率)のデメリット

IRR(内部収益率)のデメリット

IRR(内部収益率)には便利な面がある一方で、いくつかのデメリットも存在します。

限界を理解せずに使うと、投資判断を誤るおそれがあります。

ここでは、複数のIRRが算出されるケースや投資規模を考慮できない点など、注意すべき弱点を解説します。

複数のIRRが算出されるケースがある

IRRのデメリットの一つに、複数のIRRが算出されてしまうケースがあります。

この場合、どの数値を使えばよいか判断が難しくなります。

その理由は、キャッシュフローの符号(プラスとマイナス)が途中で複数回変わると、数学的にIRRが複数存在してしまうからです。

複数のIRRが算出されるケース
  • 初期投資 → 収益 → 追加投資 → 収益 のように符号が入れ替わる場合
  • 途中で大規模な追加投資が必要になる場合
  • 期の途中でキャッシュフローがマイナスに転じる場合

投資の途中で大きな設備更新が入ると、プラスからマイナスへ符号が変わり、複数のIRRが出てしまうことがあります。

このような非定型的なケースでは、IRRだけで判断せず、NPVやMIRR(修正内部収益率)を併用して正しく評価する必要があります。

投資規模を考慮できない

IRRのデメリットとして、投資規模を考慮できない点が挙げられます。

IRRは「効率」を測る指標であり、「金額」を測る指標ではないため、投資で得られる収益額の大きさは把握できません。

そのため、IRRが高くても収益額は小さいというケースが生じます。

案件投資額IRR総収益
案件A1,000万円25%600万円
案件B1億円15%4,000万円

上記のように案件AはIRRが高いものの、実際に得られる収益額は案件Bのほうが大きくなります。

IRRだけで判断すると、収益額の大きい投資機会を逃す可能性があります。

この弱点を補うには、金額の大きさを示すNPVと併用して総合的に判断することが効果的です。

キャッシュフローの前提条件に左右される

IRRのデメリットとして、キャッシュフローの前提条件に大きく左右される点も見逃せません。

その理由は、IRRが予測されたキャッシュフローに基づいて計算される指標だからです。

将来の予測には不確実性が伴うため、前提が変われば結果も変わります。

  • 空室率や賃料の変動で不動産のキャッシュフローがぶれる
  • シナジー効果の見込み違いでM&Aの収益が下振れする
  • 楽観的な予測を置くと、IRRが過大に算出される

不動産投資では入居者の退去や空室、賃料の下落などでキャッシュフローが変動します。

こうした前提が崩れると、当初のIRRは意味をなさなくなります。

そのため、楽観・悲観など複数のシナリオでIRRを試算する感度分析を行い、予測の妥当性を慎重に検討することが望ましいです。

不動産投資・M&AでのIRR活用例

不動産投資・M&AでのIRR活用例を見ると、実際の投資判断でどう使われるのかが具体的につかめます。

どちらもキャッシュフローや保有期間が案件ごとに異なるため、IRRが役立つ分野です。

以下では、不動産投資とM&Aそれぞれの計算例を紹介します。

不動産投資におけるIRRの計算例

不動産投資では、購入から運用、売却までの総合的な収益率をIRRで評価できます。

家賃収入だけでなく、最終的な売却価格まで含めて判断できる点が特徴です。

下記の条件で計算例を見てみます。

キャッシュフロー
物件購入価格-1,000万円
1〜4年目(家賃収入)各+60万円
5年目(家賃+売却)+60万円+1,100万円=+1,160万円

IRRは、各年のキャッシュフローの現在価値の合計が、自己資金1,000万円と等しくなる割引率です。

割引率を調整していくと、この条件ではIRRは約7.71%と算出されます。

そのときの各年の現在価値の内訳は下記のとおりです。

計算式現在価値
1年目60万円 ÷(1+0.0771)約56万円
2年目60万円 ÷(1+0.0771)²約52万円
3年目60万円 ÷(1+0.0771)³約48万円
4年目60万円 ÷(1+0.0771)⁴約45万円
5年目1,160万円 ÷(1+0.0771)⁵約800万円
合計約1,000万円

5年分の現在価値を合計すると約1,000万円となり、自己資金とちょうど釣り合います。

このとき使った割引率7.71%が、この物件のIRRです。

ここで注目したいのが、年間家賃60万円だけで計算した表面利回りは6.0%にとどまる点です。

IRRが7.71%とそれより高くなっているのは、5年後に1,100万円で売却できた利益まで含めて評価しているからです。

このようにIRRは売却価格の影響を大きく受けるため、駅から近い、人気エリアにあるなど価格が下がりにくい物件ほど、IRRは高くなりやすい傾向があります。

M&AにおけるIRRの計算例

M&Aでは、買収価格に対して買収後に得られる収益をもとにIRRを算出します。

売却時の企業価値まで含めて、投資全体の収益性を測れます。

下記の条件で計算例を確認します。

キャッシュフロー
初期投資(買収価格)-1億円
1〜4年目(事業収益)各+1,500万円
5年目(事業収益+売却)+1,500万円+1.2億円=+1億3,500万円

IRRは、各年のキャッシュフローの現在価値の合計が、買収価格1億円と等しくなる割引率です。

割引率を調整すると、この条件ではIRRは約17.81%と算出されます。

そのときの各年の現在価値の内訳は下記のとおりです。

計算式現在価値
1年目1,500万円 ÷(1+0.1781)約1,273万円
2年目1,500万円 ÷(1+0.1781)²約1,081万円
3年目1,500万円 ÷(1+0.1781)³約917万円
4年目1,500万円 ÷(1+0.1781)⁴約779万円
5年目1億3,500万円 ÷(1+0.1781)⁵約5,950万円
合計約1億円

5年分の現在価値を合計すると約1億円となり、買収価格とぴったり一致します。

このとき使った割引率17.81%が、このM&A案件のIRRです。

この数値が自社のハードルレートを上回っていれば、投資価値があると判断できます。

具体例のように、M&Aではシナジー効果の見込みやコスト削減効果もキャッシュフローに織り込みます。

ただし予測には不確実性があるため、保守的に段階的な見積もりを行い、複数のシナリオで検証することが重要です。

IRRに関するよくある質問

IRRに関するよくある質問をまとめました。

IRRは何%あれば良いと判断できますか?

IRRは「何%以上なら良い」という一律の基準はなく、資本コストとの比較で判断するのが基本です。

数値の絶対値だけで良し悪しは決められません。

その理由は、求められる収益率が業種や案件のリスク、市場環境によって変わるからです。

判断の目安
  • 自社のWACCやハードルレートを上回っているか
  • 他の投資案件と比べて魅力的な数値か
  • リスクや投資規模とのバランスは取れているか

具体例として、WACCが8%の企業ならIRRが8%を超えれば投資価値があると判断できます。

実務ではWACCにリスクプレミアムを上乗せしたハードルレートを基準にするため、それを上回るかどうかが一つの目安になります。

IRRを計算できない場合の原因は?

IRRを計算できない場合、多くはキャッシュフローの入力に原因があります。

エクセルで「#NUM!」エラーが出るケースが代表的です。

その理由は、IRR関数が正しく解を見つけられる条件を満たしていない場合があるからです。

主な原因
  • プラスとマイナスの値が混在していない(初期投資がマイナスになっていない)
  • 計算が収束せず、有効な解が見つからない
  • キャッシュフローの符号が複数回変わり、IRRが複数存在する場合がある

すべての数値がプラスだとIRRは計算できないため、必ず初期投資をマイナスで入力します。

収束しない場合は、推定値に0.1や-0.05など近い値を指定すると解決することが多いです。

IRRを電卓だけで計算できる?

IRRを電卓だけで正確に計算するのは、現実的には難しいというのが答えです。

その理由は、IRRが割引率を何度も変えて試す反復計算を必要とするからです。

具体例として、5年や10年の投資では、割引率を少しずつ変える計算を何度も繰り返す必要があり、手間がかかります。

そのため、電卓は考え方を確認する用途にとどめ、実際の算出にはエクセルやGoogleスプレッドシートの関数を使うのが効率的です。

後継者問題・事業承継は日本プロ経営者協会にご相談ください

事業承継やM&Aを検討する際、IRRなどの指標で投資価値を見極めることは欠かせません。

しかし実際の承継では、数値の判断だけでなく、複雑な手続きや承継後の経営まで幅広い課題が伴います。

日本プロ経営者協会は、国内最大級のプロ経営者ネットワークを活用し、中小企業の事業承継課題の解決に豊富な実績を持つ組織です。

経験豊富なプロ経営者が、後継者問題の解消から経営統合まで、幅広いソリューションを提供いたします。

親族内承継から第三者承継(M&A)まで、あらゆる承継パターンに対応し、複雑な手続きや行政対応、承継後の経営方針の策定まで一貫してサポートいたします。

後継者不足や事業承継でお悩みの方は、ぜひ一度日本プロ経営者協会までご相談ください。

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日本プロ経営者協会の概要
名称一般社団法人日本プロ経営者協会
設立日2019年7月
活動内容プロ経営者によるセミナーの開催
企業への経営者の紹介
経営者に関する調査・研究
書籍の出版
代表理事堀江 大介
所在地東京都千代田区丸の内1-6-2
新丸の内センタービルディング21階
URLhttps://www.proceo.jp/

この記事を書いた人

小野俊法のアバター 小野俊法 日本プロ経営者協会 会長

慶應義塾大学経済学部卒業後、不動産ファンド運用会社にて約400億円規模の資産運用を担当。独立後、海外でファンドマネジメント事業などを立ち上げ、事業売却を経験。

その後、M&Aアドバイザリーおよびバイアウトファンドでの投資業務に従事し、中小企業投資・事業承継に延べ16年以上関与。これらの経験をもとにマラトンキャピタルパートナーズ㈱を設立し、事業承継支援に取り組んでいる。

投資の現場経験、M&Aアドバイザーや経営者との関わりをもとに、後継者問題や経営課題に関する情報発信・監修を行っている。

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