第三者承継とは?活用するメリット・デメリットと手法や事例を紹介

第三者承継とは?活用するメリット・デメリットと手法や事例を紹介

第三者承継とは?

第三者承継を活用するメリットやデメリットは?

第三者承継とは、親族や自社の従業員以外の「外部の第三者」に対して、会社や事業を引き継ぐ方法です。

後継者不足に悩む中小企業にとって、廃業を回避して大切な事業を未来へ残すための有効な選択肢として広く注目を集めています。

第三者承継がもたらすメリット
  • 後継者不足の解消
  • 事業が存続できる
  • 譲渡益が得られる
  • 従業員の雇用を守ることができる

第三者承継を活用すれば、企業の持つ技術やノウハウを次世代へ引き継ぎ、従業員の雇用を守りながら事業を継続・発展させることが可能です。

たとえば、地方の製造業や老舗飲食店などが、同業他社や異業種企業への第三者承継によって経営を維持・成長させた事例もあります。

本記事では、第三者承継の具体的な手法やメリット・デメリットをはじめ、実際の成功事例や買い手の探し方を詳しく解説しています。

これから事業承継を検討される方は、ぜひ参考にしてください。

監修者

日本プロ経営者協会 会長
小野 俊法

経歴

慶應義塾大学 経済学部 卒業

一兆円以上を運用する不動産ファンド運用会社にて1人で約400億円程度の運用を担い独立、海外にてファンドマネジメント・セキュリティプリンティング会社を設立(後に2社売却)。

その後M&Aアドバイザリー業務経験を経てバイアウトファンドであるACAに入社。

その後スピンアウトした会社含めファンドでの中小企業投資及び個人の中小企業投資延べ16年程度を経てマラトンキャピタルパートナーズ㈱を設立、中小企業の事業承継に係る投資を行っている。

投資の現場経験やM&Aアドバイザー経営者との関わりの中で、プロ経営者を輩出する仕組みの必要性を感じ、当協会設立に至る。

目次

第三者承継とは「外部の第三者に会社や事業を引き継ぐこと」

第三者承継とは「外部の第三者に会社や事業を引き継ぐこと」

第三者承継とは、外部の第三者に会社や事業を引き継ぐことを指し、後継者不在の企業にとって有効な事業継続の手段です。

親族や社内に後継者がいない場合でも、外部の企業や個人に引き継ぐことで、事業や雇用、技術を維持できるからです。

特に中小企業では、後継者不足が深刻化しており、第三者承継はその課題を解決する重要な選択肢となっています。

例えば、長年経営してきた会社の社長が引退を考えた際、社内や親族に適任者がいない場合でも、同業他社や投資家に事業を譲渡することで、会社を存続させることができます。

第三者承継は、家族や社内の誰にも継がせられず悩んだ時に、外部の力を借りてビジネスを守る新しい手段です。

第三者承継とM&Aの違い

M&Aとは「企業の合併・買収」を意味する広い概念で、成長戦略や事業拡大の目的でも行われるものです。

一方、第三者承継はM&Aのうち「後継者問題の解決」を主な目的とする事業承継型の取引を指しています。

項目M&A第三者承継
意味企業の合併・買収の総称第三者への事業の引き継ぎ
目的成長戦略、事業拡大、再編など多様後継者不在の解決、事業の存続
関係幅広い企業間取引全般M&Aの手法を使った事業承継

つまり、第三者承継は「事業承継を目的としたM&A」と捉えると理解しやすいです。

事業承継型M&Aとも呼ばれ、中小企業庁からも積極的に推進されています。

第三者承継で引き継がれる経営資源

第三者承継で引き継がれる経営資源

第三者承継では、会社の「目に見える資産」だけでなく「目に見えない資産」や「人の関係」まで幅広く引き継がれます。

中小企業庁の事業承継ガイドラインでは、承継される経営資源を「人(経営)」「資産」「知的資産」の3つに分類しています。

以下では、具体的にどのようなものが引き継がれるのかを解説します。

土地・設備・在庫などの有形資産

第三者承継では、事業運営に必要な「形のある資産」がすべて引き継がれます。

これらの有形資産がなければ、承継後すぐに事業を再開することは困難だからです。

具体的に引き継がれる有形資産は以下のとおりです。

  • 土地・建物などの不動産
  • 製造設備・機械装置
  • 車両・備品・什器
  • 在庫商品・原材料
  • 現金・預金・売掛金

たとえば製造業の場合、生産ラインに必要な機械設備を一から揃えるには多大なコストがかかります。

第三者承継によって既存の設備をそのまま引き継げることは、買い手にとっても大きなメリットとなります。

ブランド・ノウハウ・許認可などの無形資産

事業承継においてもっとも価値が高いとされるのが、無形資産です。

長年の事業活動で培われたブランド力やノウハウは、お金を出してもすぐには手に入らないものだからです。

引き継がれる無形資産には以下のようなものがあります。

  • 商号・商標・ブランド力
  • 特許権・知的財産権
  • 独自の技術やノウハウ
  • 顧客リスト・顧客との信頼関係
  • 事業に必要な許認可

たとえば飲食店であれば、長年愛されてきた「味」や「看板」の価値は計り知れません。

第三者承継を活用すれば、こうした目に見えない資産をまるごと引き継ぐことが可能になります。

従業員の雇用と取引先・契約関係

第三者承継では、従業員の雇用や取引先との契約関係も承継の対象となります。

廃業すれば従業員は職を失い、取引先にも大きな影響が出るため、これらの関係性を維持できることは重要です。

引き継がれる主な関係性は以下のとおりです。

  • 従業員との雇用契約
  • 取引先との売買契約
  • 金融機関との借入契約
  • リース契約・保険契約
  • 賃貸借契約

株式譲渡の場合は法人格がそのまま継続するため、これらの契約関係が自動的に引き継がれるのが大きな特徴です。

一方、事業譲渡の場合は個別に契約を結び直す必要があるため、手続きの違いには注意してください。

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第三者承継の方法

第三者承継の主な方法は、以下の2つです。

方法特徴
株式譲渡経営権を丸ごと譲渡。

手続きが比較的簡単で、従業員や取引先との関係も維持しやすい。

全資産・負債ごと引き継ぐため事前調査が重要。
事業譲渡譲渡する資産や権利を選べる。

必要な部分のみ引き継ぐことができる。

不要なリスクを避けて承継しやすい。

それぞれの特徴について解説していきます。

株式譲渡【株式を売買し会社の所有権を移す方法】

株式譲渡

株式譲渡は、会社の経営権を、株式を買い取る第三者へ移す方法です。

会社の支配権を円滑に移転でき、経営者が交代しても従業員や取引先との関係が保たれるメリットがあります。

たとえば、現オーナーが中小企業の株式を新しいオーナーに譲渡した場合、そのまま事業運営が続き、ブランドや顧客も維持されます。

ただし、会社のすべての資産や負債を一括して引き継ぐため、簿外債務のリスクもあります。

株式譲渡を選ぶ際は、引き継ぐ相手と信頼関係をしっかり築き、財務状況の確認(デューデリジェンス)が大切です。

事業譲渡【特定の事業だけを売却する方法】

事業譲渡

事業譲渡は「第三者承継」の中で、柔軟でリスクを抑えやすい方法です。

事業譲渡は、譲渡対象になる資産や権利を細かく選べるため、経営者自身が必要な部分を手元に残しつつ、不要な部分や引き継いでほしい部分を新しいオーナーに引き継げます。

実際、簿外債務など見落としがちなリスクを新オーナーに引き継ぎにくい点も大きな特徴です。

飲食業を経営している場合、同じ業種の他社に店舗ごと譲渡したり、設備・スタッフ・ブランドごと部分的に譲る形で譲渡することができます。

希望すれば自分の残したい店舗だけ経営し続け、新たな人には人気店のみ引き継いでもらえる、といった柔軟な譲渡も可能です。

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第三者承継のメリット4つ

第三者承継のメリット4つ

第三者承継のメリットは、以下の通りです。

第三者承継がもたらすメリット
  • 後継者不足の解消
  • 事業が存続できる
  • 譲渡益が得られる
  • 従業員の雇用を守ることができる

それぞれのメリットについて、順に解説していきます。

後継者不足の解消

第三者承継は後継者不足の課題を解消する上で有効です。

なぜなら、身内や従業員の中に適任者がいないケースでも、外部から広く後継者を探せるからです。

親族や従業員以外にも候補者が増え、実力や意欲のある人を経営者に迎えられるため、会社の存続のみならず新たな成長も見込めます。

事業が存続できる

第三者承継を選ぶことで事業の継続や発展が期待できます。

外部から経営力や意欲を持つ人材に引き継ぐことが可能になり、長年築いた信用や雇用を守れるためです。

たとえば、人気商品を持つ小売店が大手チェーン店に引き継がれる場合を考えてみましょう。

販売網やブランド力を活かして新店舗展開や商品開発を行うことで、事業を大幅に成長させることができます。

実際に、赤字状態から脱却し、安定した黒字経営を実現している事業も数多く存在しています。

譲渡益が得られる

第三者承継は、事業を売却することでまとまった売却益を確保できます。

事業を廃業した場合、従業員の退職金や固定資産の処分などにより、負債が残ってしまう可能性があります。

一方、M&Aを実施して事業を譲渡することで、余計な負債の発生を防げます。

中小企業の売却価格は、時価純資産に営業利益の1~5年分を加算した金額が目安とされます。

承継の際に会社の資産価値よりも高い金額で株式を売却できれば、その分の譲渡益による利潤が期待できます。

現経営者は個人保証からも解放され、確保した利潤を老後資金や新たな事業投資に自由に活用することが可能になります。

事業の継続性や譲渡価格などしっかりと計画を立てて事業承継を行うことで、金銭面の不安をなくせます。

従業員の雇用を守ることができる

第三者承継がもたらすメリットとして、従業員の雇用を守れることが挙げられます。

企業の事業承継に悩む方にとって、一番の心配は従業員の雇用の維持ではないでしょうか。

第三者への承継であれば、経営者が不在になることなく事業が続くため、従業員の働く場所や収入の安定が保たれます。

例えば、後継者が身内や社内にいない場合でも、第三者が事業を引き継ぐことで工場やオフィスが閉鎖されず、従業員はそれまで通り仕事を続けることができます。

特に地域や業界特有の技術が関係する事業の場合、第三者承継でノウハウが継承されることで従業員の雇用も確保されやすいです。

したがって、第三者承継は従業員の雇用を守る手段として大きなメリットを持っています。

後継者不足の解消から従業員の雇用維持
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第三者承継のデメリット3つ

第三者承継のデメリット3つ

第三者承継には多くのメリットがある一方で、注意すべきデメリットもあります。

事前にリスクを理解しておくことで、トラブルを防ぐことができるでしょう。

企業文化のミスマッチリスク

異なる企業文化や経営方針を持つ相手に事業を引き継ぐため、社内に混乱が生じるリスクがあります。

これまで当たり前だったルールや雰囲気が変わることで、従業員が戸惑いや不満を感じることも少なくありません。

人事制度や社内システムなどハード面の統合に加えて、価値観や仕事の進め方といったソフト面のすり合わせには時間がかかります。

PMI(統合プロセス)の専門家を活用しながら、丁寧に進めることが重要です。

取引先との関係が変わる可能性がある

第三者承継を行うと、取引先から「経営が危ないのでは」「方針が変わるのでは」と不安を持たれることがあります。

M&Aに対するネガティブなイメージがまだ残っている業界では、特に注意が必要です。

承継後も既存の取引先と良好な関係を維持するためには、適切なタイミングで丁寧な説明を行うことが大切です。

情報が外部に漏れてしまうと、顧客離れや従業員の動揺を招く恐れもあるため、情報管理にも十分配慮してください。

手続きが複雑で専門知識が必要になる

第三者承継の実務には、企業価値の算定、デューデリジェンス、契約書の作成など、法律・会計・税務にまたがる専門的な知識が求められます。

経営者一人で進めるのは難しく、専門家のサポートが不可欠です。

また、買い手候補を見つけて条件交渉を行い、最終契約に至るまでには半年から1年以上かかることもあります。

M&A仲介会社や事業承継・引継ぎ支援センターなどの専門機関を早めに活用し、計画的に進めることが重要です。

企業価値の算定・デューデリジェンス・契約書の作成まで、
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第三者承継を成功させるためのポイント

第三者承継を成功に導くには、事前の準備と計画が何よりも大切です。

以下の4つのポイントを押さえておくことで、スムーズな承継を実現しやすくなります。

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ポイント詳細
早めの準備開始少なくとも2~3年前から検討を始めるのが理想的です。
経営者の引退時期や市場環境を総合的に考慮し、最適なタイミングを見極めましょう。
信頼できる専門家への相談M&A仲介会社、税理士、公認会計士、中小企業診断士など、事業承継に精通した専門家に早い段階からサポートを依頼することで、手続きが円滑に進みます。
企業価値を高める取り組み承継前に経営改善や財務体質の強化を行うことで、譲渡価格や交渉条件を有利にすることができます。
関係者への丁寧な説明従業員、取引先、株主に対して適切なタイミングで情報を共有し、不安や疑問を解消することが承継成功の基盤になります。

特に「早めの準備」と「専門家への相談」は、承継の成否を大きく左右する要素です。

準備が遅れるほど選択肢が狭まるため、少しでも承継を意識し始めた段階で行動を起こすことをおすすめします。

第三者承継を活用する際の注意事項

第三者承継を活用する際の注意事項

第三者承継を活用する際の注意事項は、以下の3つです。

第三者承継を活用する際の注意事項
  • 自社に最適な相手を見極める
  • デューデリジェンス(買収監査)を怠らない
  • PMI(統合プロセス)を事前に計画する

上記を理解しないまま手続きを進めると、思わぬトラブルや失敗のリスクが高まります。

自社に最適な相手を見極める

第三者承継で重要なのは、信頼して事業を託せる相手を見つけることです。

単に金額が高い相手を選ぶのではなく、経営理念や事業への想いを共有できるかどうかが成功の分かれ目になります。

たとえば、従業員の雇用方針や事業の将来ビジョンが一致しているかどうかを、面談を通じて慎重に確認してください。

複数の候補者を比較検討し、時間をかけて見極めることが、後悔のない承継につながります。

デューデリジェンス(買収監査)を怠らない

デューデリジェンスとは、買い手が売り手企業の財務・法務・税務などの状況を詳しく調査するプロセスです。

デューデリジェンスを怠ると、承継後に思わぬ負債やリスクが発覚し、大きなトラブルに発展する可能性があります。

売り手側としても、事前に自社の財務状況を整理し、正確な情報を開示することが信頼関係の構築につながります。

数日間にわたる監査がスムーズに進むよう、書類の準備や関係者との調整を事前に済ませておきましょう。

PMI(統合プロセス)を事前に計画する

PMI(Post Merger Integration)とは、M&A成立後に両社の経営やシステム、組織文化を統合していくプロセスのことです。

承継が成立しても、統合がうまくいかなければ事業の成長にはつながりません。

統合計画は承継の実行前から策定を始め、人事制度の調整やシステムの統一、従業員への説明会の実施など、具体的なスケジュールを立てておくことが大切です。

必要に応じてPMIの専門家やコンサルタントの力を借りることも検討してください。

第三者承継の成功事例

第三者承継を活用し成功した4社の例を以下に紹介します。

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企業名業種特徴
株式会社小野製作所金属加工公的支援機関の連携マッチング

技術融合によるシナジー効果実現
株式会社ファルマ医薬品臨床開発支援(SMO)理念重視の後継者選定

デジタル化による業務効率改善
有限会社谷井田自動車自動車整備後継者人材バンク活用

社名・雇用維持で地域との関係継続
株式会社さらい理容・美容業2つのセンターが県を越えて連携

業界経験者への承継で約5カ月のスピード成約

第三者承継をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

株式会社小野製作所の事例

株式会社小野製作所は、後継者不在の課題を第三者承継で解決した成功事例です。

福島県いわき市の金属加工会社である同社は、前社長の小野智広氏に親族後継者がおらず、社内にも経営を任せられる適任者がいませんでした。

そこで公的支援機関を活用し、若手経営者である青山康明氏への株式譲渡を実現しています。

小野氏は55歳時点で事業承継を検討開始し、福島県よろず支援拠点や日本政策金融公庫に相談しました。

一方、譲受先となった青山氏は、福島県事業承継・引継ぎ支援センターの後継者人材バンクに登録しており、既に蒲田金属工業を承継した経験を持つ若手経営者でした。

日本政策金融公庫と同センターが連携し、「アルミ鋳造に切削加工技術を加えたい青山氏」と「適切な後継者を探している小野氏」をマッチングさせたことが成功の要因です。​

2022年12月に承継が完了した後、以下のような取り組みが実施されました。

施策内容目的・効果
従業員の雇用維持技術と企業文化の継続を図る
蒲田金属工業との連携強化アルミ鋳造から切削加工まで一気通貫の体制構築
前社長による技術指導現場の技術習得に3年間のサポート体制を確保
顧客価値の向上両社の技術融合によるシナジー効果を実現

青山氏は製造畑出身ではないサラリーマンでしたが、社員との丁寧なコミュニケーションを通じて信頼関係を構築し、事業の発展につなげています。

参考:〈事例25〉株式会社小野製作所|第三者承継の事例紹介|事業承継・引継ぎポータルサイト

株式会社ファルマの事例

株式会社ファルマの第三者承継の成功事例

株式会社ファルマは、理念を共有できるプロ経営者への第三者承継によって、会社の価値をさらに高めた成功事例です。

医薬品の臨床開発支援(SMO事業)を展開する同社は、2022年7月に前代表の山田正広氏から中村優介氏へと経営を引き継ぎました。

第三者承継が成功した最大の理由は、前代表の山田氏が後継者選びに時間をかけ、理念と人柄を重視したことにあります。

山田氏は定年を意識した2021年頃から準備を開始し、日本プロ経営者協会の支援を受けて候補者を厳選しました。

複数の候補者の中から、外資系コンサルティングファームやヘルスケアベンチャー経営の経験を持つ中村氏を選定しています。

中村氏は「創業者の想いを継ぎ、会社を成長させたい」という強い意志を持ち、「医学への貢献」という理念に共感していたことが決め手となりました。​

中村氏は承継後、創業者の理念を守りながら以下のような改革を実施しました。

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施策内容目的・効果
社員との個別面談・コミュニケーション強化承継後の不安を解消し、信頼関係を構築
業務プロセスの見直し・デジタル化業務効率の改善とミスの削減
組織文化の維持女性中心の職場環境を尊重しながら新体制へ移行
経営理念の再共有「医学への貢献」という創業理念の継続と明確化

上記の取り組みにより、従業員のモチベーションを維持しながら経営の効率化を進め、営業力の強化にも注力することで更なる発展への道筋をつけました。​

会社を任せるのは人。だからこそ、
信頼できる関係づくりを。
日本プロ経営者協会では、
後継者候補と何度も面談を重ねながら、
人柄・価値観・経営観を
共有できる体制があります。
“理念の引き継ぎ”までを支援する
専門機関として、
経営者の想いを未来へつなぐ
お手伝いをしています。

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有限会社谷井田自動車の事例

有限会社谷井田自動車は、後継者不在の課題を公的支援機関の活用により解決した好例です。

茨城県つくばみらい市で1973年に創業した同社は、50年間地域に愛され続けてきた自動車整備会社でしたが、ご子息が独立を希望していたため、後継者不在の問題に直面しました。​

萱橋前社長夫妻は、長年支えてくれたお客様や従業員のことを考え、廃業ではなく事業の継続を選択しました。

茨城県事業承継・引継ぎ支援センターの広告を見て相談したところ、センターが中古車販売業を営む有限会社清原を紹介し、マッチングが実現しました。

承継にあたっては、センターと専門家が連携し、以下のような調整を行いました。

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施策内容目的・効果
顧問税理士を交えた不動産・税務調整事業に関係のない不動産の扱いや節税対策を実施
従業員との個別面談清原社長の人間性や経営方針を理解してもらい不安を解消
社名・雇用の維持萱橋夫人も事務業務として継続し、お客様との関係を維持
業種転換のアドバイス萱橋夫妻は譲渡後に不動産賃貸業へ転換

承継後も、ふみ子夫人は事務業務として残り、地域のお客様とのつながりを継続しています。

清原氏はインターネットを活用した告知やホームページの充実などに取り組み、さらなる発展を目指しています。

参考:〈事例20〉有限会社谷井田自動車|第三者承継の事例紹介|事業承継・引継ぎポータルサイト

株式会社さらいの事例

株式会社さらいは、2つの事業承継・引継ぎ支援センターが県を越えて連携し、後継者不在の課題を解決した好例です。

千葉駅前でカットとカラーに特化した低価格型美容室「Cut Roze」を運営していた同社は、40~60代の女性を中心に固定客も多い人気店でしたが、親族や従業員に後継者候補が見つからず、事業承継の問題に直面していました。

前社長の村田正一郎氏は、60歳を過ぎた頃から引退を考え始めましたが、顧客へのサービスと従業員の雇用を守りたいという想いから、廃業ではなく第三者承継を選択しました。

千葉県事業承継・引継ぎ支援センターに相談したものの、県内では適任者が見つからなかったため、東京都のセンターとエリアを越えた連携が行われました。

その結果、東京都センターに譲受希望で登録していた元大手美容室チェーン経営者の佐藤文彦氏が紹介され、マッチングが実現しています。

承継にあたっては、2つのセンターが連携し、以下のような調整を行いました。

施策内容目的・効果
千葉・東京の2センター間での情報共有千葉県内で見つからなかった適任者を、東京都の登録者から発掘
佐藤氏が事前に客として店舗を訪問現場の雰囲気やサービスを自ら確認し、承継への本気度を示した
美容業界経験者の後継者選定大手美容室チェーンの経営経験を持つ人物を承継者とすることで即戦力を確保
スタッフとの信頼関係構築を最優先「美容室は従業員がお店そのもの」という方針のもと、丁寧なコミュニケーションで不安を解消

初回面談からわずか約5カ月で株式譲渡契約の締結が完了し、スピーディーな承継が実現しました。

佐藤氏は承継後、スタッフとの対話を何よりも優先し、村田氏が大切にしていた「顧客サービスと従業員の雇用を守る」という想いをしっかりと引き継いでいます。

参考:株式会社さらい(Cut Roze) | 事業承継・引継ぎポータル | 中小企業基盤整備機構

第三者承継の買い手や後継者を募集する方法

第三者承継の買い手や後継者を募集する方法は以下の通りです。

第三者承継の買い手や後継者を募集する方法
  • 専門のマッチングサービスや仲介会社を利用する
  • 事業承継支援の公的機関や商工会議所に情報を掲載する

それぞれの方法には独自の特徴があり、企業の状況や希望に応じて選ぶことが重要です。​

それでは上記の募集方法についてそれぞれ解説していきます。

マッチングサービスや仲介会社を利用する

専門のマッチングサービスや仲介会社を利用すると、自力では出会えない買い手・後継者候補と出会える可能性が高まります。

第三者承継の課題は、「信頼できる相手を見つけにくいこと」です。

マッチングサイトや仲介会社を使えば、匿名で安全に情報を開示しながら、全国の候補者から条件に合った相手を探せます。

さらに、交渉や手続きのサポートも受けられるため、初めてでも安心です。​

事業承継支援の公的機関や商工会議所に情報を掲載する

事業承継の買い手・後継者を探すには、公的機関や商工会議所の情報掲載サービスを活用することが有効です。

国が各都道府県に設置する事業承継・引継ぎ支援センターは、後継者不在の企業と起業希望者をつなぐマッチング支援を無料で提供しています。​

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支援機関特徴掲載方法
事業承継・引継ぎ支援センター国が設置する公的窓口。後継者不在の中小企業を対象に、M&Aマッチングや専門家紹介を実施。公式サイトまたは最寄りのセンターに相談して登録。ウェブ上に企業情報を掲載可能。
商工会議所地元企業向け支援が充実。会員向けの承継支援セミナーやマッチング掲示板を活用できる。支援センターと連携した掲示制度を利用し、買い手企業の紹介を受けられる。

商工会議所や事業承継・引継ぎ支援センターに相談すると、専門の相談員が面談を行い、企業情報を登録した上でマッチング候補を探してくれます。

地域の支援機関とも連携しているため、幅広いネットワークで後継者候補を見つけられる可能性があります。

第三者承継に関するよくある質問

最後に、第三者承継にまつわる疑問、よくある質問に回答します。

第三者承継に関するよくある質問
  • 事業承継の中で第三者承継が占める割合は?
  • 第三者承継の補助金や支援制度は?
  • 農業分野での第三者承継の課題は?
  • 株式の第三者譲渡とは?
  • 不動産の第三者承継とは?

事業承継の中で第三者承継が占める割合は?

M&A、社外からの外部承継を含む第三者承継の割合は全体の約28.0%で、2020年度の24.8%から増加傾向にあります。

全体の事業承継において、第三者承継(M&A等を含む)が占める割合は決して高くありませんが、親族内承継が年々減少しているため、今後さらに注目されると予想されます。

承継タイプ割合傾向
親族内承継39.3-32.2%減少傾向
従業員承継31.9-36.4%増加傾向
第三者承継24.8-28.0%増加傾向

帝国データバンクの調査によると、親族外承継全体は64.4%を占めており、その中で第三者を代表として迎える企業の割合が28.0%となっています。

かつては親族内承継が主流でしたが、現在は親族外承継が過半数を占めています。

後継者不在率が60%を超える現状において、第三者承継は重要な解決手段として位置づけられています。

参考:全国「後継者不在率」動向調査(2024年)|株式会社 帝国データバンク[TDB]

第三者承継の補助金や支援制度は?

第三者承継では「事業承継・M&A補助金」や地方自治体の補助金制度を活用できます。

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制度名補助上限額補助率対象
事業承継・M&A補助金600万円~2,000万円2/3または1/2M&A仲介手数料・FA費用
事業承継・M&A補助金150万円~1,000万円1/2または2/3M&A後の経営統合費用

このほか、事業承継・引継ぎ支援センターの無料相談や、事業承継税制(贈与税・相続税の猶予制度)なども活用できます。

農業分野での第三者承継の課題は?

農業分野での第三者承継には多くの課題があります。

後継者候補となる人材が農業の経験や知識を持っていない場合が多く、事業の引継ぎに不安を感じやすいからです。

たとえば、土地や設備の維持管理方法、地域との関係構築、農業経営のノウハウなど、習得するべき内容が幅広くあります。

さらに、財産評価や契約手続き、資金調達などの経営面でも専門的なサポートが必要となるケースが多いです。

こうした課題を乗り越えるためには、地域の農業協同組合や行政の支援策を活用することが重要です。

株式の第三者譲渡とは?

第三者への株式譲渡とは、株式会社のオーナー経営者が自社の株式を社外の第三者に売却する取引のことです。

第三者承継において株式譲渡が選ばれる場合、この株式譲渡によって経営権が移転します。

多くの中小企業は非上場(未公開)企業であり、株式の譲渡には株主総会や取締役会の承認が必要な「譲渡制限」がついているのが一般的です。

不動産の第三者承継とは?

不動産の第三者承継とは、事業用の土地や建物が事業承継に伴って新しい経営者に引き継がれることを指します。

株式譲渡の場合は法人が所有する不動産がそのまま移転し、事業譲渡の場合は個別に売買や賃貸借契約の手続きが必要です。

不動産を移転する際には、登録免許税や不動産取得税がかかる場合があるため、費用面の確認が欠かせません。

なお、一定の要件を満たせば事業承継に伴う登録免許税・不動産取得税の特例(軽減措置)を受けられる制度もありますので、専門家に相談しておくと安心です。

後継者問題・事業承継は日本プロ経営者協会にご相談ください

事業承継は、多くの中小企業が直面する重要な課題です。

特に第三者承継を検討されている経営者の皆様にとって、適切なパートナー選びは事業の将来を左右する重要な決断となります。

日本プロ経営者協会では、豊富な経験を持つプロ経営者のネットワークを活用し、皆様の事業承継をサポートしています。

当協会に所属する経営のプロフェッショナルたちは、さまざまな業界での実績を持ち、企業の価値を最大化しながら円滑な事業承継を実現いたします。

後継者不足でお悩みの経営者様、第三者承継をご検討中の企業様は、ぜひ日本プロ経営者協会までお気軽にご相談ください。

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日本プロ経営者協会の概要
名称一般社団法人日本プロ経営者協会
設立日2019年7月
活動内容プロ経営者によるセミナーの開催
企業への経営者の紹介
経営者に関する調査・研究
書籍の出版
代表理事堀江 大介
所在地東京都千代田区丸の内1-6-2
新丸の内センタービルディング21階
URLhttps://www.proceo.jp/

まとめ

第三者承継は、親族や従業員ではなく外部の第三者に事業を引き継ぐ方法です。

主なメリットとして、後継者不足の解消、事業の継続・発展、売却益の確保が挙げられます。

一方で、買い手が必ずしも見つからない可能性や、職場環境・企業文化の変化、複雑な手続きといった注意点もあります。

後継者不足に悩む経営者の方は、早期に専門家に相談し、事業承継・M&A補助金などの支援制度を積極的に活用して、第三者承継の検討を始めましょう。

事業価値の向上に取り組み、適切な買い手との信頼関係構築を進めることが大切です。

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