親族内承継とは?メリット・デメリットや税金・手続き方法を解説

親族内承継とは?メリット・デメリットや税金・手続き方法を解説

親族内承継とは?

親族内承継を成功させるには?

親族内承継とは、経営者が自社の事業や株式を子どもや配偶者などの親族に引き継ぐ事業承継の方法です。

後継者を身近な親族から選べるため、理念や経営方針を維持しやすい点が大きな特徴です。

一方で、相続や税金、個人保証の扱いなど専門的な手続きや十分な準備が必要となります。

株式の移転方法や相続対策を誤ると、多額の税負担や親族間トラブルにつながる可能性があるからです。

実際に、事前の支援制度を活用せずに進めた結果、後継者が資金面で苦労するケースも少なくありません。

本記事では、親族内承継のメリット・デメリットから税金、具体的な手続き方法、活用できる支援策までをわかりやすく解説します。

これから事業承継を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

監修者

日本プロ経営者協会 会長
小野 俊法

経歴

慶應義塾大学 経済学部 卒業

一兆円以上を運用する不動産ファンド運用会社にて1人で約400億円程度の運用を担い独立、海外にてファンドマネジメント・セキュリティプリンティング会社を設立(後に2社売却)。

その後M&Aアドバイザリー業務経験を経てバイアウトファンドであるACAに入社。

その後スピンアウトした会社含めファンドでの中小企業投資及び個人の中小企業投資延べ16年程度を経てマラトンキャピタルパートナーズ㈱を設立、中小企業の事業承継に係る投資を行っている。

投資の現場経験やM&Aアドバイザー経営者との関わりの中で、プロ経営者を輩出する仕組みの必要性を感じ、当協会設立に至る。

目次

親族内承継とは「経営者が親族に会社を引き継ぐこと」 

親族内承継とは「経営者が親族に会社を引き継ぐこと」 

親族内承継は、会社を経営する人が自分の子どもや兄弟姉妹、甥や姪などの親族に会社を引き継ぐ事業承継の方法です。

親族内承継を選ぶ理由は、経営者自身が信頼できる家族に会社を任せたいと考えるからです。

準備期間をしっかり取れる点や従業員・取引先も安心しやすい点が大きなメリットといえるでしょう。

親族内承継には、信頼できる家族に会社を引き継げる安心感がある一方で、親族間トラブルなどの特有の課題も存在するため、早めの準備や後継者の教育が大切です。

事業承継については以下の記事をご覧ください。

親族内承継と親族外承継の違い

親族内承継と親族外承継の違い

親族内承継と親族外承継の最も大きな違いは、会社を引き継ぐ後継者が「親族」であるか「それ以外の人物」であるかという点にあります。

誰を後継者として選ぶかによって、社内外に与える影響や、引き継ぎのために必要となる手続きが全く異なるものになるからです。

スクロールできます
比較項目親族内承継親族外承継
後継者の対象子ども、配偶者、兄弟、孫などの親族役員、従業員、外部の第三者(M&Aなど)
主なメリット経営理念や社風を自然な形で引き継ぎやすい候補者の選択肢が幅広く、優秀な人材を探しやすい
主なデメリット親族の中に経営に適した人材がいない場合がある従業員や取引先からの理解を得るまでに時間がかかる

自社の現状や将来のビジョンと照らし合わせながら、それぞれの特徴を正しく理解し、最適な承継方法を見極めることが経営の安定につながります。

親族内承継の割合【近年の現状】

親族内承継の割合【近年の現状】

親族内承継の割合は年々減少傾向にあり、現在では親族外へ事業を引き継ぐケースが主流となっています。

経営者の高齢化が深刻化する一方で、少子化の影響や「厳しい経営環境の中で子どもに苦労をかけたくない」と考える経営者が増えていることが大きな要因です。

実際に中小企業庁の調査データを紐解くと、かつては5割近くを占めていた親族内承継が、現在では全体の3割程度にまで落ち込んでいることが分かります。

このように、長年当たり前とされてきた「子どもが会社を継ぐ」という形は、現代のビジネス環境においては必ずしも絶対的なものではありません。

社内の優秀な役員を社長に昇格させる内部昇格や、M&Aを活用して外部企業へ事業を譲渡する選択肢が、より一般的な解決策として選ばれるようになりました。

参考:親族内承継と従業員承継・第三者承継の割合の推移|中小企業庁

親族内承継のメリット4つ

親族内承継のメリット4つ

親族内承継のメリットは、以下の通りです。

親族内承継のメリット
  • 従業員や取引先からの理解・協力が得やすい
  • 後継者教育の期間を十分に確保できる
  • 企業理念や文化をスムーズに引き継ぎやすい
  • 相続・贈与による節税や事業承継税制の活用がしやすい

それぞれのメリットについて解説します。

従業員や取引先からの理解・協力が得やすい

親族内承継を選ぶと、従業員や取引先から理解や協力を受けやすいという大きなメリットがあります。

なぜなら、親族が後継者になる場合、会社の文化や経営方針が大きく変わりにくく、安心感が生まれやすいからです。

たとえば、現経営者の子どもや親族が後継者に選ばれると、普段から顔を合わせているため、信頼関係が築きやすくなります。

また、経営方針の継続が期待できるため、従業員や取引先も安心して仕事に取り組みやすくなります。

後継者教育の期間を十分に確保できる

親族を後継者に決める場合、早い段階から育成を始めやすくなります。経営に必要な知識や経験をじっくり身につけるためには、長い時間が必要です。

親族内承継なら、現経営者が元気なうちから計画的に教育できるため、準備不足による失敗を避けやすくなります。

実際には、10年ほどかけて各部門の仕事を経験させたりするケースが多いです。

さらに、他社で働く経験やセミナー参加など、社外での学びも取り入れることで、幅広い視点やスキルを身につけられます。

親族内承継は、後継者教育に十分な時間を確保しやすい点が大きなメリットです。

企業理念や文化をスムーズに引き継ぎやすい

親族内承継を選ぶと、企業理念や文化が自然に引き継がれやすいです。

日々の業務を通じて経営者と後継者が一緒に働き、価値観や考え方を共有できるからです。

たとえば、親が経営する会社で子どもが長年働きながら、経営判断やお客様への対応を間近で学ぶ場面が多くあります。

実際に現場で経験を積みながら、企業独自の文化や理念が身につきやすくなります。

相続・贈与による節税や事業承継税制の活用がしやすい

親族内承継を選ぶと、相続や贈与による節税対策や事業承継税制の活用がしやすいです。

事業承継税制を使うと、贈与税や相続税の納税が猶予または免除される特例があり、後継者の資金繰りが楽になります。

たとえば、事業承継税制を使って株式を親族へ贈与した場合、贈与税や相続税が全額猶予され、事業の運営資金を確保しやすくなります。

現金を用意する必要がなく、経営に集中できる安心感があります。

事業承継税制については以下の記事をご覧ください。

親族内承継のデメリット3つ

親族内承継のデメリット

親族内承継にはさまざまなデメリットが存在しますが、今回は特に注意すべきポイントを取り上げてご紹介します。

親族内承継のデメリット
  • 親族間のトラブルが発生しやすい
  • 債務や個人保証の引継ぎ問題
  • 経営の質が低下するリスクがある

それぞれのデメリットについて詳しく見ていきましょう。

親族間のトラブルが発生しやすい

親族が複数いる場合、誰を後継者にするかで争いが起こりやすいです。

この場合、後継者に選ばれなかった親族が納得できず、不満を持つことも多いため、トラブルに発展するリスクが発生しやすくなります。

また、株式や資産の分配をめぐって意見がぶつかる場面もよく見られます。

例えば、兄弟が二人いる家庭で長男が後継者になった時、次男が「自分も会社に貢献してきた」と主張し、経営権をめぐる争いが起きるケースもあります。

その結果、話し合いがまとまらず会社が分裂し、業績が低下してしまう事態も少なくありません。

このように、親族内承継は身近な人同士だからこそ、感情的な対立が深刻になりやすいです。

第三者承継も視野に入れているのであれば、
ぜひ日本プロ経営者協会へご相談ください。

後継者探しの無料相談バナー

債務や個人保証の引継ぎ問題

親族内承継では、債務や個人保証の引継ぎが大きなデメリットです。

後継者が経営者の借金や保証を引き受けることになり、生活や将来に大きな不安を感じやすいからです。

家族経営の旅館を引き継いだ長女が、多額の負債を抱えたまま事業を始めることを懸念し、事業承継に踏み切れなかったというケースがあります。

実際、現経営者の保証が残ったまま後継者にも新たな保証を求められることがあり、精神的な重圧や家族への影響も無視できません。

経営の質が低下するリスクがある

親族内承継では、経営能力や適性を持つ後継者が親族内にいるとは限らないため、経営の質が低下するリスクが高くなります。

経営には専門的な知識や経験、そして強いリーダーシップが必要ですが、血縁関係があるからといって、これらの能力が備わっているわけではありません。

例えば、経営経験やスキルが不足している親族が後継者となった場合、会社の業績悪化や競争力の低下を招く可能性があります。

また、従業員が「親族以外は昇進の機会がない」と感じることで、優秀な人材が流出するリスクも高まります。

さらに、外部の視点を取り入れにくくなるため、時代の変化に対応できずに事業が停滞することもあります。

親族内承継の手続きと進め方

親族内承継の手続きと進め方

親族内承継を成功させるためには、段階ごとに計画的に進めることが大切です。

事前準備や関係者への説明が不十分だと、後継者や親族間でトラブルが発生しやすくなり、事業の安定した継続が難しくなるからです。

親族内承継の手続きと進め方

STEP
事業承継の必要性を認識し現状を把握する
  • 承継のタイミングを検討する
  • 自社の財務状況や経営課題、リスクを正確に把握する
  • 必要に応じて専門家(税理士等)へ相談する
STEP
親族の中から後継者を選定する
  • 会社の将来を踏まえ、親族から後継者を決定する
  • 後継者の育成計画を早期に立て、準備を進める
STEP
経営改善と事業承継計画の策定
  • 洗い出した課題を改善し、後継者の経営リスクを軽減する
  • 「いつ・誰に・どう引き継ぐか」を定めた事業承継計画書を作成する
STEP
株式・資産の承継と個人保証の対応
  • 計画に沿って株式や事業用資産の移転手続きを行う
  • 専門家と連携し、税金対策や遺言書の作成を行う
  • 金融機関との個人保証(経営者保証)の交代手続きを行う
STEP
関係者への周知と事業承継の実行
  • 親族、従業員、取引先へ計画を説明し、理解を得る
  • 計画に沿って経営権の引き継ぎを行い、承継を完了させる

承継計画を作成し、親族や関係者にも説明して納得してもらいながら進めることが大切です。

最後に、株式や資産の移転手続き、税金対策を専門家と相談しながら進めていきます。

事業承継の必要性を認識し現状を把握する

親族内承継を成功させるための第一歩は、経営者自身が承継の必要性を早めに認識し、会社の現状を正確に把握することです。

経営者の年齢や健康状態を考慮せずに先延ばしにすると、適切な引き継ぎのタイミングを逃し、会社に致命的なダメージを与えるリスクがあるからです。

具体的には、財務諸表や経営指標を詳細に分析し、自社の収益性や成長力、さらには潜在的なリスクを徹底的に洗い出していきます。

現状把握を行う際のポイント
  • 財務諸表に基づいて正確な収益性を評価します。
  • 会社の将来的な成長性や競争力を客観的に分析します。
  • 経営上の課題や隠れた潜在的リスクを明確にします。

この際、税理士や中小企業診断士などの専門家に相談し、第三者の客観的な視点を取り入れることで、より正確に課題を把握できるようになります。

親族の中から後継者を選定する

会社の現状を把握した後は、親族の中から会社の未来を託すのにふさわしい後継者を慎重に選び出します。

誰を新しいリーダーにするかによって、従業員のモチベーションや取引先との関係性が大きく変わり、会社の存続自体を左右してしまうからです。

単純に「長男だから」という理由だけで決めるのではなく、本人の経営に対する熱意や能力、将来のビジョンをしっかりと確認しなければなりません。

後継者を選定する際に重視すべきポイント
  • 会社を背負う強い覚悟と経営への熱意を持っているか確認します。
  • 従業員や取引先と良好な関係を築ける人柄であるか見極めます。
  • 自社の事業内容や業界に対して深い理解があるか評価します。

もし現時点で経営者としての経験やスキルが不足している場合は、社内外での研修期間を設けるなど、具体的な育成計画を立てて手厚くサポートを行います。

経営改善と事業承継計画の策定

後継者が決まったら、引き継ぎに向けた具体的なロードマップとなる「事業承継計画」を作成し、並行して経営改善に取り組みます。

計画を立てずに見切り発車してしまうと、関係者間で認識のズレが生じ、後継者に不要なリスクや負債を背負わせてしまう危険性があるからです。

事業承継計画に必ず盛り込むべき項目
  • 後継者の選定理由と具体的な育成スケジュールを記載します。
  • 株式や事業用資産の移転方法(贈与や売買など)を決定します。
  • 関係者への説明方法や周知を行うタイミングを明記します。

まずは洗い出した課題に対し、収益性の低い事業の見直しやコスト削減など、後継者が安心して経営できる体制づくりを進めていきます。

同時に、いつ・誰に・どのように承継するかを明記した計画書を作成し、育成のスケジュールや株式の移転方法などを詳細に盛り込みます。

株式・資産の承継と個人保証の対応

計画が固まった段階で、会社の支配権を決定づける株式や事業用資産を移転し、経営者の個人保証に関する手続きを進めます。

株式を後継者に集中させなければ安定した経営権を確保できず、個人保証が残ったままでは後継者にとって過度な負担となってしまうからです。

贈与や相続によって株式を移転する場合は、多額の税金が発生する可能性があるため、税理士と相談しながら税金対策を同時に進める必要があります。

また、金融機関と交渉して現経営者の保証人交代手続きを行ったり、相続トラブルを防ぐために遺言書を作成したりといった対策も欠かせません。

関係者への周知と事業承継の実行

すべての準備が整った最終段階として、親族や従業員、取引先へ事業承継を行う旨を丁寧に周知し、正式に実行へ移します。

経営者の交代は会社に関わるすべての人にとって大きな関心事であり、事前の説明が不十分だと強い反発や不安を招く恐れがあるからです。

関係者への周知において注意すべきポイント
  • 親族間での不公平感をなくして相続トラブルを未然に防ぎます。
  • 従業員に対して今後の経営方針や雇用の安定を説明します。
  • 取引先へ新旧経営者がそろって訪問して信頼関係を引き継ぎます。

計画書をもとに、親族には遺産分割への理解を求め、従業員には今後の雇用や労働条件が変わらないことを伝えて安心感を与えます。

さらに、重要な取引先には現経営者と後継者がそろって挨拶に出向き、これまでと変わらぬ関係性を築いていきたいという熱意を直接アピールします。

周囲のステークホルダーから心からの納得と協力を得ながら計画を実行することが、親族内承継という一大プロジェクトのゴールとなります。

親族内承継での株式の承継方法と税金

親族内承継での株式の承継方法と税金

親族内承継を進める際には、相続税や贈与税、株式譲渡に伴う所得税・住民税が発生します。

税金の種類や負担額を事前に理解しておくことで、安心して事業承継の準備ができます。

スクロールできます
承継方法概要と特徴発生する主な税金
相続経営者の死亡をきっかけに株式を引き継ぐ方法相続税
生前贈与経営者が生きている間に株式を無償で譲り渡す方法贈与税
譲渡・売却後継者がお金を支払って経営者から株式を買い取る方法譲渡所得税(現経営者に発生)

それぞれの方法にもメリット・デメリットがあるため、自社の株価評価額や後継者の資金力を考慮しながら、最も負担の少ない手段を選ぶことが大切になります。

相続を通じて株式を承継する方法

相続を通じた株式の承継は、経営者が亡くなった際に、法定相続人である後継者が自社株を遺産として受け継ぐ方法になります。

後継者があらかじめ株式を買い取るための資金を用意しておく必要がないため、経済的なハードルが比較的低いという特徴があります。

ただし、会社の業績が良くて株価が高騰している場合、多額の相続税が発生し、後継者が税金を支払うために苦労するケースも考えられます。

また、遺言書が用意されていないと、他の親族との間で株式の取り分をめぐって遺産分割協議が難航し、経営権が分散してしまうリスクも潜んでいます。

相続で確実に会社を引き継がせるためには、生前から明確な遺言書を作成し、事業承継税制の活用を視野に入れた準備が欠かせません。

生前に贈与して承継する方法

生前贈与による株式の承継は、経営者が元気なうちに、自身の意思で後継者に対して無償で自社株を譲り渡していく方法です。

経営者の希望するタイミングで確実に株式を移転できるため、後継者の育成状況に合わせて段階的に経営権を移行させやすいというメリットがあります。

たとえば、毎年少しずつ株式を贈与する「暦年贈与」を活用すれば、基礎控除の枠を利用して贈与税の負担を最小限に抑えながら時間をかけて株式を移せます。

一方で、一度に大量の株式を贈与すると高額な贈与税が課せられるため、事業承継税制(贈与税の納税猶予制度)の適用を受けるなどの工夫が必要になります。

計画的に生前贈与を進めることは、不意の相続トラブルを回避し、会社を意図した通りに承継させるための有効な手段となります。

株式譲渡・売却して移転する方法

株式の譲渡や売却による移転は、後継者が自分の資金を使って、現経営者から直接自社株を買い取るという正当な取引に基づく方法です。

無償で財産を渡すわけではないため、他の親族から不公平だと不満が出にくく、遺留分をめぐって自社の株式が分散するトラブルを防ぎやすいという利点があります。

この方法を選ぶと、現経営者は株式を手放す代わりに現金を手に入れることができ、それを引退後の老後資金や他の親族への遺産として活用できます。

しかし、後継者側には株式を買い取るためのまとまった資金力が必要となり、役員報酬を引き上げたり、金融機関から融資を受けたりといった資金調達の対策が必須となります。

また、株式を売却して利益が出た現経営者には譲渡所得税がかかるため、適正な株価で取引が行われるよう専門家による評価が不可欠と言えます。

親族内承継を成功させるポイント

親族内承継を成功させるポイント

前述のとおり、親族内承継は一筋縄ではいかず、多くの課題が伴います。

しかし、適切な準備やサポート体制を整えることで、スムーズな事業承継が実現できます。

親族内承継を成功させるポイント
  • 早めに準備・計画を立てる
  • 株価対策を検討する
  • 従業員・取引先・金融機関へ丁寧に説明し理解を得る
  • 経営者保証(個人保証)の解除・移行に取り組む
  • 承継後の伴走体制を整える
  • 専門家や外部支援を活用する

上記の「親族内承継を成功させるポイント」について、詳しく解説します。

早めに準備・計画を立てる

親族内承継を成功させたいなら、できるだけ早く準備や計画を始めることがとても大切です。

親族間での事業承継には、後継者の選定や育成、関係者への周知、財産や株式の移転など、たくさんの手続きや調整が必要だからです。

後継者が他の会社に勤めている場合、家業に戻る準備や会社の経営を学ぶために数年かかることもあります。

実際に、早めに承継計画を立てて、後継者の育成や関係者との調整を進めた企業は、スムーズに引き継ぎができたという事例が多いです。

株価対策を検討する

自社株の評価額を正確に把握し、税負担を抑えるための株価対策を事前に行っておくことが重要です。

業績が好調な会社ほど株価が高騰しており、そのまま移転しようとすると後継者に重い税金がのしかかってしまうからです。

株価を引き下げるための手法としては、以下のような対策がよく用いられます。

  • 役員退職金を支給して会社の純資産を減らす
  • 不良在庫や不要な資産を処分して損失を計上し、利益を圧縮する
  • 設備投資や不動産の購入を行い、会社の評価額を下げる

上記の対策は決算期をまたいで長期的に行う必要があるため、税理士のアドバイスを受けながら計画的に進めることが重要です。

従業員・取引先・金融機関へ丁寧に説明し理解を得る

周囲のステークホルダーに対して、事業を承継する目的や今後の展望を丁寧に説明し、理解を得ることも欠かせないステップです。

経営者が変わることは関係者にとって大きな不安要素であり、説明が不十分だと「この会社は大丈夫か」と不信感を持たれてしまうからです。

特に金融機関に対しては、新しい社長の経営手腕や返済計画について論理的に説明し、今後も継続して融資を受けられる関係を維持しなければなりません。

従業員に対しても、待遇が悪くなることはないという安心感を与え、新社長を支えてもらえるようなポジティブな雰囲気を作り出すことが大切です。

経営者保証(個人保証)の解除・移行に取り組む

中小企業の事業承継において大きな障壁となる、経営者個人の連帯保証をいかに外すかという問題にも取り組む必要があります。

個人保証が残ったままだと、後継者が会社を引き継ぐことを恐れてしまい、承継の話自体が白紙に戻ってしまう危険性があるからです。

金融機関と交渉し、「法人と経営者個人の資産が明確に分離されていること」や「財務基盤が十分に強いこと」を証明できれば、保証を解除してもらえる可能性が高まります。

また、国が推奨している「経営者保証に関するガイドライン」を活用することで、専門家の支援を受けながら保証解除に向けた手続きをスムーズに進めることも可能です。

後継者に過度な精神的・経済的負担を背負わせないための配慮が、親族内承継を成功させるための経営者の最後の役目とも言えます。

参考:経営者保証 | 中小企業庁

承継後の伴走体制を整える

親族内承継では、承継後5~7年間の伴走期間を設けることが大切です。

事業承継の手続きが終わっても、すべての業務をすぐに任せるのは困難です。経営上のトラブル対処や優良顧客への対応など、長年の経験と信頼が必要な場面では前経営者の力が欠かせません。

また、経営者交代直後は従業員からの反発や負担増加が起こりやすく、前経営者のサポートが重要になります。

項目内容
期間準備期間を含め5~7年
業務サポート経営者業務の一部負担
同行支援取引先や金融機関とのやり取りに同行
専門機関活用事業承継・引き継ぎ支援センターや商工会議所への相談

承継後の伴走体制を整えることで、新経営者は安心して事業を軌道に乗せることができます。

専門機関と連携しながら、長期的な視点でサポート体制を構築してください。

専門家や外部支援を活用する

親族内承継を成功させるためには、専門家や外部支援を積極的に活用することが大切です。

親族内での承継は感情や思い込みが絡みやすく、客観的な判断や計画が難しくなりがちだからです。

専門家のサポートを受けることで、法律や税金など複雑な問題も安心して進められます。

例えば、中小企業診断士や税理士、弁護士などの専門家に相談すると、事業承継計画の作成や節税対策について具体的なアドバイスがもらえます。

また、事業承継・引継ぎ支援センターや商工会議所などの公的機関も無料相談を実施しており、第三者の視点でアドバイスを受けられます。

親族内承継で悩む方は、早めに専門家や外部支援を活用することをおすすめします。

事業承継における、税理士や弁護士の役割は以下の記事をご覧ください。

親族内承継に関するよくある質問

親族内承継についてよく寄せられる質問をまとめました。

親族内承継に関するよくある質問
  • 親族内承継で利用できる補助金にはどのようなものがありますか?
  • 親族内承継は減少していますか?
  • 会社が赤字や債務超過の状態でも親族内承継は可能ですか?

親族内承継で利用できる補助金にはどのようなものがありますか?

親族内承継で利用できる補助金は「事業承継・引継ぎ補助金(経営革新枠)」です。

項目内容
補助金名事業承継・引継ぎ補助金(経営革新枠)
主な目的事業承継やM&Aを契機とした中小企業等の新たな経営革新への取組みを支援
対象者中小企業者・個人事業主(親族内承継、従業員承継、M&A等)
主な類型創業支援類型(Ⅰ型)、経営者交代類型(Ⅱ型)、M&A類型(Ⅲ型)
補助対象経費設備費、店舗等借入費、原材料費、広報費、マーケティング調査費、謝金、旅費、外注費、委託費など
補助率2/3以内または1/2以内(条件による)
補助上限額最大800万円(廃業・再チャレンジ枠併用時は+150万円、最大950万円)
補助下限額100万円
主な要件経営革新計画の策定、付加価値額3%以上増加計画、デジタル化・グリーン化等の革新性
申請方法認定支援機関の確認書取得後、電子申請システム(jGrants)で申請
申請時期公募ごとに異なる(例:2024年4月1日~4月30日など)
注意点交付決定前の支出は対象外。賃上げ要件や補助対象経費の要件あり。

例えば、親が法人代表者の場合は、子が代表に交代し、事業の新しい活動(店舗改装や新商品開発など)にかかる費用を最大800万円まで補助してもらえます。

小規模事業者や赤字の場合は補助率が2/3になるなど、条件によって金額や割合が変わります。

ただし、単なる承継費用は対象外で、承継後の新規投資が必要です。

親族内承継は減少していますか?

日本全国の中小企業において、事業承継全体に占める親族内承継の割合は減少傾向にあります。

少子高齢化によって子どもがいない家庭が増えていることや、職業選択の自由が広がり、子ども自身が別の道を選ぶケースが増加しているためです。

それに伴い、会社の従業員や役員に引き継ぐ「社内承継」や、M&Aを利用して第三者の企業に譲渡する「親族外承継」を選ぶ経営者が増えてきています。

会社が赤字や債務超過の状態でも親族内承継は可能ですか?

会社が赤字や債務超過の状態であっても、法的に親族内承継を行うこと自体は可能です。

ただし、そのままの状態で後継者に引き継がせてしまうと、多額の借金や厳しい経営状況だけを背負わせることになり、事業の継続が極めて困難になるリスクが伴います。

赤字のまま無理に引き継ぐと後継者が精神的に追い詰められてしまうため、まずは現経営者の代で少しでも経営改善を図り、黒字化への道筋をつける努力が不可欠です。

もし自力での立て直しが難しい場合は、事業再生の専門家に相談し、金融機関とリスケジュール(返済猶予)の交渉を行うなどの対策が必要になります。

親族内承継・後継者問題は日本プロ経営者協会にご相談ください

親族内承継は多くのメリットがある一方で、適切な後継者が親族内にいない場合や、経営能力の不足といった課題も存在します。

一般社団法人日本プロ経営者協会(JPCA)は、こうした後継者問題や事業承継に悩む企業オーナー様をサポートするために設立されました。

JPCAは、プロ経営者の輩出とマッチングを通じて、企業の成長と持続的な発展を支援しています。

JPCAでは、経営人材の紹介やサーチファンド機能、経営コーチング、専門家ネットワークによる総合的な支援体制を整えており、後継者選定から資本の承継、経営改善までワンストップでご相談いただけます。

事業承継や後継者問題でお悩みの方は、ぜひ一度日本プロ経営者協会までご相談ください。

日本プロ経営者協会のバナー
日本プロ経営者協会の概要
名称一般社団法人日本プロ経営者協会
設立日2019年7月
活動内容プロ経営者によるセミナーの開催
企業への経営者の紹介
経営者に関する調査・研究
書籍の出版
代表理事堀江 大介
所在地東京都千代田区丸の内1-6-2
新丸の内センタービルディング21階
URLhttps://www.proceo.jp/

まとめ

親族内承継を考えている方は、まず後継者の適性や意思を早期に確認し、家族や関係者と十分に話し合いましょう。

また、事業承継計画や税金対策、補助金の活用について専門家に相談し、計画的に準備を進めることをおすすめします。

親族内承継は多くの課題が伴いますが、しっかりとした準備と周囲の協力、専門家のサポートを得ることで、スムーズな事業承継が実現できます。

目次