事業承継には、一般的に5年〜10年程度の準備期間が必要です。
後継者の選定や育成だけでなく、自社株式・事業用資産の移転、税金への対応、従業員や取引先との関係づくりなど、計画的に進めるべき準備が多いためです。
この記事では、事業承継に必要な期間を承継方法別に紹介するとともに、適切なタイミングや長期の準備が必要な理由、具体的な事前準備まで分かりやすく解説します。
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| 経済産業省 | ミラサポplus |
|---|---|
| 中小企業庁 | 事業承継 |
| 帝国データバンク | 倒産レポート |
| 日本政策金融公庫 | 事業承継マッチング支援 |
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事業承継に必要な期間は5年~10年が目安
事業承継に必要な期間は、一般的に5年から10年が目安とされています。
その理由は、後継者を経営者として育て上げ、株式や事業用資産を計画的に引き継ぐには、それだけの時間がどうしても必要になるからです。
経営者の平均引退年齢は70歳前後といわれています。育成期間を逆算すると、60歳頃には準備を始めておくのが理想的です。
「まだ早い」と感じるうちに動き出すことが、後継者不在による廃業を防ぐ第一歩になります。
国や自治体も推奨する「事業承継5ヶ年計画」とは?
策定の背景には、経営者の高齢化と後継者不足という深刻な問題があります。
策定当時の試算では「向こう5年間で30万以上の経営者が70歳を迎えるにもかかわらず、その多くで後継者が決まっていない」という現状があり、国は2017年からの5年間を『事業承継支援の集中実施期間』と定めて集中的な支援を行いました。
この計画のもとで、国や自治体は事業承継・引継ぎ支援センターの設置や、経営改善のサポートなどを進めています。
あわせて国や自治体は、各企業が自社の「事業承継計画」を早めに作成することも推奨しています。

事業承継の種類別の必要期間

事業承継は、引き継ぐ相手によって「親族内承継」「従業員承継」「第三者承継(M&A)」の3つに分けられ、必要な期間もそれぞれ異なります。
ここでは、種類ごとの準備期間の目安を整理します。
参考:2023年版「中小企業白書」 第1節 事業承継・M&A | 中小企業庁
親族内承継の準備期間
親族内承継の準備期間は、5年から10年程度を見込むのが一般的です。
期間が長くなる理由は、経営理念や実務を子どもや親族にじっくり引き継ぎ、経営者として育て上げる必要があるためです。
後継者が若いうちから現場を経験させ、必要に応じて他社で修行を積ませたり、経営判断に関わらせたりしながら、時間をかけて育てることができます。
この期間中に、従業員や取引先との信頼関係を築けることも大きなメリットです。
一方で、時間がかかるからこそ、後継者候補の選定はできるだけ早く始めることが求められます。
従業員承継の準備期間
従業員承継の準備期間は、数年から5年程度を目安に考えておくと安心です。
役員や従業員はすでに自社の業務を理解していますが、経営者としての育成や、株式取得などの資金準備には一定の時間が必要になるためです。
たとえば後継者候補には、経理・営業・経営企画など幅広い部署を経験させ、会社全体を俯瞰する力を養ってもらう必要があります。
さらに、株式を後継者が買い取る場合には、その取得資金を準備しなければならず、資金計画の検討にも時間がかかります。
従業員は会社の文化や方針を熟知しているため、承継後も社内から受け入れられやすいという利点があります。
第三者承継の準備期間
第三者承継(M&A)の準備期間は、相手探しから成約まで半年から1年程度が一般的です。
期間が比較的短いのは、後継者を一から育成するのではなく、すでに経営能力のある企業や個人へ引き継ぐためです。
M&Aでは、仲介会社への相談、買い手候補の選定、条件交渉、買収監査(デューデリジェンス)、最終契約という流れで進みます。
ただし、良い相手が見つからなければ交渉が長引くこともあり、逆に条件が合えば数か月で成約する場合もあります。

後継者が承継に向けて準備したこと

後継者が承継に向けて準備すべきことは、経営者として通用する力を計画的に身につけることです。
経営者の資質は一朝一夕で身につくものではなく、実務経験と学びの積み重ねが欠かせません。
とくに親族内承継では、「現場で働き、自社の技術やノウハウを学んだ」が60.9%と最も高く、時間をかけて実務を経験する傾向が見られます。
一方で社外への引き継ぎ(M&A等)では、「従業員と自社の課題を話し合う機会を設けた」が43.8%と高く、社内から信頼を得るための対話が重視されています。
- 自社の経営資源や財務状況を把握し、会社の実力を理解する
- 現場で働き、自社の技術やノウハウ、商習慣を学ぶ
- 経営に携わり、経営判断の哲学や手法を身につける
- 取引先や金融機関へ挨拶し、関係を引き継ぐ
- 中小企業大学校や後継者塾などで経営知識を学ぶ
こうした準備を積み重ねることで、後継者は自信を持って経営のバトンを受け取れるようになります。
参考:2023年版「中小企業白書」 第1節 事業承継・M&A | 中小企業庁
事業承継に適したタイミング

事業承継には、進めるのに適したタイミングがあります。
タイミングを見誤ると、企業価値の低下や後継者の意欲低下を招きかねません。
ここでは、承継を始めるのに適した3つのタイミングを紹介します。
経営状況が安定しているとき
事業承継は、経営状況が安定しているときに進めるのが理想的です。
業績が好調で財務が健全なうちに引き継げば、後継者が余裕を持って経営をスタートできるからです。
反対に、業績が悪化してから慌てて承継しようとすると、後継者に大きな負担がのしかかってしまいます。
金融機関や取引先からの信用が保たれている時期であれば、引き継ぎもスムーズに進むでしょう。
「調子が良いからこそ、まだ手放したくない」と考えがちですが、好調な時期こそ承継の好機だといえます。
後継者が決まったとき
後継者が決まったときは、事業承継を本格的に始める絶好のタイミングです。
後継者が決まってから承継が完了するまでには、育成期間を含めて長い時間がかかるためです。
後継者が決まった後は、まず育成計画を立て、株式や資産の移転方法を検討し、関係者へ順を追って説明していく必要があります。
これらを丁寧に進めるには、決定後すぐに動き出すことが欠かせません。
後継者が決まったことに安心して準備を先送りにすると、貴重な移行期間を失ってしまいます。
経営者が60歳を迎える前
事業承継の準備は、経営者が60歳を迎える前に着手するのが望ましいとされています。
その根拠は、経営者の平均引退年齢が70歳前後であり、5年から10年の準備期間を逆算すると、60歳頃が着手の目安になるためです。
60歳から準備を始めることで、後継者の育成に十分な時間を割きつつ、税負担を抑えた計画的な資産移転にも取り組めます。
すでに60歳を超えている場合でも、遅すぎるということはなく、速やかに支援機関へ相談することが大切です。
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事業承継には長い期間が必要な理由4つ

事業承継に5年から10年もの期間が必要とされるのには、明確な理由があります。
ここでは、代表的な4つの理由を解説します。
後継者を経営者として十分に育成する必要があるため
経営者に求められるのは、現場の知識だけでなく、資金繰りや人材管理、経営判断など幅広い能力であり、これらは短期間では身につきません。
中小企業庁のガイドラインでも、5割以上の経営者が後継者の育成に必要な期間を5年から10年程度と回答しています。
- 幅広い部署を経験させ、会社全体を理解してもらう
- 重要な仕事を任せ、失敗も含めて実践を積ませる
- 他社で修行させ、外部の視点や人脈を得てもらう
どれほど優秀な人材でも、経営者としての知識や経験が不足していれば、承継後に会社が不安定になりかねません。
だからこそ、育成には十分な時間を確保する必要があるのです。
税金や資金負担を抑えながら資産を移転するため
税金や資金の負担を抑えながら資産を引き継ぐためにも、長い準備期間が必要です。
自社株式や事業用資産を後継者へ移す際には、相続税や贈与税が発生し、その額が想定以上に大きくなることがあるためです。
準備を後回しにすると、株価が上昇して評価額が膨らみ、納税資金が足りなくなる事態にもなりかねません。
負担を抑えるためには、次のような対策を数年かけて進めるのが一般的です。
- 贈与を複数年に分けて、計画的に株式を移していく
- 事業承継税制を活用して、納税を猶予する
- 自社株式の評価額を試算し、納税資金を準備する
これらの税務対策は、税理士などの専門家と連携しながら進める必要があります。
従業員や取引先から後継者への信頼を得るため
従業員や取引先から後継者が信頼を得るためにも、時間をかけた準備が必要です。
会社は経営者一人で成り立つものではなく、周囲の関係者の理解と協力があって初めて円滑に運営できるためです。
急に後継者が現れて経営を引き継いでも、従業員は不安を感じ、取引先も取引継続に慎重になってしまう可能性があります。
信頼を育むためには、次のような積み重ねが効果的です。
- 後継者が現場に立ち、実績を少しずつ積み上げる
- 取引先へ挨拶を重ね、顔つなぎをしておく
- 現経営者が在任中に、関係者へ後継者を紹介する
こうした信頼関係は一朝一夕には築けないため、長い期間が求められます。
後継者に経営者としての覚悟を身につけてもらうため
後継者に経営者としての覚悟を持ってもらうためにも、相応の期間が必要です。
会社の歴史や理念、先代の想い、従業員の生活までを背負う責任感は、知識を学ぶだけでは身につかないためです。
とくに親族内承継では、後継者本人が「継ぎたい」と心から思えるかどうかが、承継成功の分かれ道になります。
実際の経営に少しずつ関わり、重要な決断を任され、責任の重さを経験する中で、後継者の意識や行動は徐々に変わっていきます。
この心構えが十分でないまま承継すると、困難に直面したときに経営が揺らいでしまいかねません。
覚悟は、時間をかけた経験の積み重ねの中で育っていくものです。
後継者が自ら腹をくくれるよう、じっくりと向き合う期間を設けましょう。
事業承継に向けた5つの事前準備
事業承継を円滑に進めるには、早い段階からの事前準備が欠かせません。
ここでは、取り組むべき5つの準備を具体的に紹介します。
後継者候補を決めて育成計画を作成する
事業承継の第一歩は、後継者候補を決め、育成計画を作成することです。
誰にいつ引き継ぐかが曖昧なままでは、その後の準備がすべて後手に回ってしまうためです。
まずは親族・従業員・第三者(M&A)のいずれで承継するかを検討し、候補者を選定します。
候補者が決まったら、「いつまでに何を経験させ、どの部署を任せるか」を年単位で落とし込んだ育成計画を立てます。
経営に必要な現場経験や研修参加のスケジュールを明確にしておくことで、育成が計画的に進みます。
後継者候補がいるという理由だけで安心せず、具体的な育成の道筋を描くことが重要です。
株式取得や納税に備えて資金計画を立てる
事業承継では、株式取得や納税に備えた資金計画を早めに立てておくことが大切です。
自社株式の移転には相続税や贈与税がかかり、後継者が株式を買い取る場合には多額の資金が必要になるためです。
これらの資金を無計画に迎えると、納税や買取が滞り、承継そのものが立ち行かなくなる恐れがあります。
事業承継税制を活用すれば、税負担を大きく軽減できる場合もあります。
資金面の不安を解消しておくことで、後継者は安心して経営に集中できます。
経営理念や自社の強み・ノウハウを整理する
事業承継の準備として、経営理念や自社の強み・ノウハウを整理しておくことも欠かせません。
中小企業では、取引関係や技術、ノウハウが経営者個人に集中していることが多く、そのままでは後継者にうまく引き継げないためです。
経営者の頭の中にある暗黙知を可視化しなければ、承継後に事業の強みが失われてしまう恐れがあります。
こうした「知的資産」を整理することで、後継者は会社の本質を理解しやすくなります。
目に見えない財産こそ、意識して引き継ぐ必要があります。
自社株式の評価と移転方法を検討する
事業承継では、自社株式の評価額を把握し、移転方法を検討しておくことが重要です。
自社株式の評価額は税負担に直結し、どの方法で移転するかによって手続きやコストが大きく変わるためです。
評価額を知らないまま進めると、想定外の税金が発生し、後継者を苦しめる結果になりかねません。
- 生前贈与:計画的に少しずつ株式を移す方法
- 相続:経営者の死亡にともなって引き継ぐ方法
- 売買(譲渡):後継者が株式を買い取る方法
早めに評価と方法を検討し、最適な移転プランを準備しておきましょう。
税理士や事業承継の専門家へ早めに相談する
事業承継を成功させるには、税理士や事業承継の専門家へ早めに相談することが何より大切です。
事業承継は税務・法務・財務が複雑に絡み合っており、経営者一人ですべてに対応するのは難しいためです。
判断を誤ると、余計な税金がかかったり、手続きの不備でトラブルに発展したりする恐れがあります。
専門家に相談すれば、自社株式の評価や事業承継税制の活用、後継者育成の進め方まで、幅広く助言を受けられます。
「まだ具体的に決まっていないから」と先延ばしにせず、早い段階で専門家の力を借りることがおすすめです。
事業承継税制(特例措置)の申請期限と対象期間
税負担を実質ゼロにできる可能性がある一方、期限が定められている点に注意が必要です。
特例措置を受けるには、あらかじめ「特例承継計画」を都道府県へ提出しておく必要があります。
| 区分 | 計画の提出期限 | 贈与・相続の実行期限 |
|---|---|---|
| 法人版 | 2027年(令和9年)9月30日 | 2027年(令和9年)12月31日 |
| 個人版 | 2028年(令和10年)9月30日 | 2028年(令和10年)12月31日 |
計画の提出期限は延長されましたが、実際に贈与・相続を行う実行期限は延長されていません。
計画提出から実行までの猶予はわずかしか残らないため、駆け込みではなく早めの準備が求められます。
事業承継なら日本プロ経営者協会にご相談ください
事業承継の期間やタイミングにお悩みなら、日本プロ経営者協会へご相談ください。
日本プロ経営者協会は、国内最大級のプロ経営者ネットワークを活用し、中小企業の事業承継課題の解決に豊富な実績を持つ組織です。
事業承継には5年から10年もの準備期間が必要ですが、何から着手すべきか分からず、時間だけが過ぎてしまうケースは少なくありません。
経験豊富なプロ経営者が、後継者の選定・育成から資金計画、経営統合まで、幅広いソリューションを提供いたします。
親族内承継から第三者承継(M&A)まで、あらゆる承継パターンに対応し、複雑な税務・法務手続きや、承継後の経営方針の策定まで一貫してサポートいたします。
「まだ早い」と感じる今こそ、動き出す絶好のタイミングです。
事業承継や後継者問題でお悩みの方は、ぜひ一度日本プロ経営者協会までご相談ください。

| 日本プロ経営者協会の概要 | |
|---|---|
| 名称 | 一般社団法人日本プロ経営者協会 |
| 設立日 | 2019年7月 |
| 活動内容 | プロ経営者によるセミナーの開催 企業への経営者の紹介 経営者に関する調査・研究 書籍の出版 |
| 代表理事 | 堀江 大介 |
| 所在地 | 東京都千代田区丸の内1-6-2 新丸の内センタービルディング21階 |
| URL | https://www.proceo.jp/ |
事業承継の期間やタイミングに関するよくある質問
最後に、事業承継の期間やタイミングについて、多くの方が抱く疑問にお答えします。
親の会社を継ぐのは何歳くらいが一般的ですか?
親の会社を継ぐ年齢は、40代後半が一つの目安とされています。
中小企業庁のデータでは、親族内承継における後継者の就任年齢は平均で46~47歳前後となっているためです。
一方で、承継のタイミングに満足している後継者の年齢を見ると、40代前半が多いという結果も出ています。
現経営者が60代後半で引退し、40代の子どもが引き継ぐ、というのが典型的なパターンです。
親族や社内に後継者がいない場合は準備期間や手順はどう変わりますか?
親族や社内に後継者がいない場合は、M&Aによる第三者承継が有力な選択肢になります。
社外の企業や個人へ引き継ぐため、後継者を一から育成する必要がなく、準備期間が比較的短くなるのが特徴です。
M&Aでは、相手探しから成約まで半年から1年程度が一般的です。
手順は、次のような流れで進みます。
- 仲介会社や支援機関へ相談し、自社の状況を整理する
- 買い手候補を探し、トップ面談で相性を確認する
- 条件交渉と買収監査を経て、最終契約を結ぶ
国が設置する事業承継・引継ぎ支援センターでは、第三者への引き継ぎも無料で相談できます。
後継者がいなくても廃業を選ぶ前に、まずは専門家へ相談してみることをおすすめします。
事業承継を成立させるための絶対条件は何ですか?
事業承継を成立させるための絶対条件は、経営を引き継ぐ「後継者」が存在することです。
どれほど優れた会社でも、事業を受け継ぐ人がいなければ承継そのものが成り立たないためです。
そして後継者には、単に候補がいるだけでなく、「継ぐ意思」と「経営できる能力」の両方が求められます。
さらに、従業員や取引先など関係者の理解と信頼を得ることも、円滑な承継には欠かせない条件になります。
これらを満たすには時間がかかるからこそ、早めの準備が必要なのです。
まとめ
事業承継を円滑に進めるためには、必要な期間や承継方法ごとの違いを理解し、後継者の育成や資金計画、自社株式の移転などを早い段階から計画的に進めることが大切です。
今回紹介した準備内容や適切なタイミングを参考にしながら、自社の状況を整理し、必要に応じて税理士や事業承継の専門家へ早めに相談しましょう。
事業承継は短期間で完了するものではありませんが、余裕を持って準備を始めることで、後継者や従業員、取引先にも安心して引き継ぐことができます。
将来の会社経営を守るためにも、できることから一つずつ取り組んでみてください。

